表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兄様は平和に夢を見る。  作者: T138
南部興亡篇
313/373

見立てる。

 エドガーを直接ポルト市庁舎の庭へと送り届け、明日の朝8時に合流してグランディアへと向かう約束を交わすと、アデル達は店へと帰った。

 時間は既に日付が変わって1時付近であったが、オルタの他、年長(上)組であるマリアとティナ、そしてティアとエミリーがまだ起きて彼らの帰りを待っていた。

 アデルはまず、『明日も強行軍になるだろう』とネージュとアンナを先に休ませると、起きて待っていた者達にブラーバ亭からの用命と、エドガーから聞いたことを話す。すると聞いた全員が揃って険しい顔をした。

「国境を封鎖しろか。流石は“冷血殿下”だな。イフナスはともかく、タルキーニはそれほど悪い状況でも無かった筈だが……多くの者がさらに無駄に命を落とすことになるだろう。」

 半ば嘲るように言うのはティナだった。恐らくロゼールからある程度の“南岸攻略”の話を聞いていたうえで、レオナールの意図をすぐに察したのだろう。その言葉にマリアが少し悲しそうな顔をする。

「フィンがこのまま黙ってると思うか?」

 アデルの問いにティナとエミリーが首を横に振る。

「あの王が反乱を黙って見逃すとは思えん。そもそも反乱など許そうものなら、あの国では自分が排除されかねんからな。恐らくは――第3王子ローレンスの予定を繰り上げて兵を与えカールフェルトに入れるだろう。ただ少ない人員で2国を相手にするのは難しい筈だ。」

「……ローレンスだけに任せられるとは思えん。ローレンスにカールフェルトを固めさせて、イフナスには誰か別の者を送り込むだろう。私としては第2王子ベルナルドが向かってくれると嬉しいのだがな。」

 ティナの予想をエミリーが否定した。エミリーにしてみれば多少の願望も入っているのかもしれないが、どちらにしろ平和に近づくという事はなさそうだ。

「タルキーニも結構逼迫してるって聞いたけどな。それより冷血ってどういう意味?――ああ、今回の対応的な意味で。」

 アデルは視線をチラリとティアとマリアに向けた後、ティナに尋ねる。

「黒姫の話では、ここの港が出来た後に保護している旧タルキーニの公爵家の生き残りを支援して足場を固めていくという作戦だったらしいが……国境を封鎖するというなら、物資も難民も遮断し、全て見捨てるというつもりだろう。反乱軍が港を制圧しない限り……制圧したとしてもそう簡単に物資の調達は難しいだろう。」

「保護している人に兵を貸すってことは?」

「すぐにはないだろう。地元――おそらくイフナスが裏で手を引いているのだろうが――で立ち上がった者と、他国に逃げた後、他国の兵を頼りに来る者と“解放軍”としてどちらを選ぶかと言われれば大抵は前者だ。冷血殿下としてはそちらの反乱が失敗し、コローナとその亡命者が最後の希望となって受け入れられる状況になるまで静観する気だろう。」

 言われてみれば確かにその通りだ。嗾けられた可能性はあるのかもしれないが、タルキーニ内で苦しい中でも立ち上がった者と、一時退避とは言え他国に逃れ、他国の兵を引きいれようとする者なら“中にいた者”から見れば前者の方が信頼できるだろう。現実的かどうかは別として。

 実際、ポルトの港が稼働し、見合う船が出来るまで待つとなると、こちらからの作戦は早くて半年、実際の解放までは数年先になる可能性もある。


 いろんな予測が成り立つようだが現時点でアデル達に出来ることはごく限られている。まずは明日の予定だ。

「明日は……エドガーの空輸、グランディア往復はネージュとアンナに任せるつもりだ。で、俺がドルケンかな。ブラーバ亭に卸せる物を始めとして商談に行く。オルタは同様にレインフォールを頼む。」

「了解。」

 オルタが即答する。本業をネージュ達に任せた上で、アデルがドルケンに、オルタがレインフォールに行くということは、“商談”だけのつもりではないだろうとオルタは察する。

「明日の店の営業はルーナに任せようかと思う。マリアとユナでサポートしてあげてほしい。」

「……わかりました。」

 この班割でこの場にいるのはマリアだけだ。マリアは少し間を置いて了解の意を示す。

「袋なしで可能な分の配達はエミリーとハンナに頼む。やっぱりもう1つか2つ、この半分程度の容量でいいから魔法袋が欲しいな。」

「そんな魔法袋がほいほいあってたまるか。……それに“うち”的には容量よりも口の広さの改良のほうが有難いだろうけどな。とりあえず承知した。」

 エミリーもアデルの指示を了解する。

「ティアとティナはいつも通りで。ブラーバ亭には出来るだけ安く卸してやりたいが……流石に赤字って訳にはなぁ。」

 いつも通りということは店の中での計算や記録だ。こちらもティナが『承知した。』とだけ答える。

 その晩の話し合いはそれでお開きとなり、翌日は朝からその予定通りに動くことになったのだが……


 アデルが1つ――いや、2つか。重要なことを忘れていたことに気付くのは明日の夜になってからとなる。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ