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兄様は平和に夢を見る。  作者: T138
南部混迷篇
270/373

未来図は腹の内

通常より短めですが、区切りの都合でUPさせて頂きました。

明日には続きが上がる筈ですのでまた確認お願いします。

未来図は腹の内



 アデル邸での持ち寄り小宴から2日後、予定通りに実戦を想定した“合同演習”が行われた。

 “合同”という言葉が付いたのは、表向きはコローナのイスタ防衛部隊 対 アデル達を含むイスタ駐留のドルン翼竜騎士団という形をとったためである。

 これは“敵”・味方共に主催側が計画・想定している本来の作戦の内容を絞り込ませないようにするためだ。

 場所はイスタ東の平原。山での再現は無理だったが事前にネージュやオルタが偵察した敵陣地の防柵や部隊が配置された。

 参加したイスタ軍はウィリデ旧来のヴェイナンツ領兵を中心に300。イスタ兵は実質的な領主であるウィリデから『王太子殿下肝いりの演習だ。強襲からフラム及び特定の箇所を守れ』という通達がされる同時に、相手がイスタ駐留の翼竜騎士団であると伝えられた。

 実際に参加したのはアデル・ブリュンヴィンド、オルタ・レイラ、ネージュ、アンナ、そしてユナ・一角天馬の文字通り強襲に参加するチームと、スヴェンを指揮官とする翼竜騎士団、それにモニカが紛れ込んでいる。突然の王族であり、ドルケントップクラスの翼竜騎士であるモニカの登場にイスタ駐留の翼竜騎士達はテンションが上がりまくったが、本来の目的を知るモニカは苦笑した。それでも故郷や家族と離れ、遠い地で長期間任務に当たっている騎士たちを労い鼓舞することは忘れない。

 一時は航路の一部を竜人に制圧され、いつ戻れるかわからないという不安な時期もあったが、それがモニカがアデルらの協力を得て取り戻したと言う事は彼らも伝え聞いているところだ。

 それもあり、“先陣”としてアデル達が今回の作戦の先頭に立つことを彼らも違和も不和もなく受け入れている。本命はその“先陣”のための演習であるのだが、表向きにはアデルらが任務を消化し撤収した後の制圧を行う事となっている。


 ウィリデが指定した“防衛対象”は、フラム及び大岩の貯蔵場所、敵陣の指揮所と思われる天幕の3つだ。防衛対象3つの内1つでも撃破されたら防衛失敗と言う条件での演習となった。

 勿論アデル達が狙うのはフロレンティナを想定したフラム一点である。しかし、狙いを絞らせない駆け引きが出来れば戦局を有利に進められるであろうことも間違いなく、恐らくそれは実際の戦闘に於いても言えることだろう。このあたりはウィリデの提案だった。実戦と異なるのは竜人のブレス、アンナの攻性魔法の使用が禁じられていること、双方、武器は訓練用の武器を使用することだ。武器に関しては対空を想定して用意される矢も鏃が外され、錘が取り付けられた演習用の矢で行われた。



 さて、そんな状況で行われた演習だが結果としてはドルン軍の完勝という形で終わった。

 グリフォンや竜人という規格外が紛れ込んでいたため純粋な比較はできないがそれでも、300対50+αでドルンが勝ったことにコローナ軍はショックを受けた様だ。

 内容もフラムは拉致され、それ以外も大きな戦果なく陣地を制圧されるというコローナ側から見れば見事な完敗だ。

 勿論、対空戦闘の経験がほとんど……いや、全くないため致し方ないというのは誰もが理解しているがそれでも心は穏やかなものではなかっただろう。エストリアに於いてもネヴァンにほぼ好き放題やられ、ハルピュイアにすらほぼ無力であったことを考えれば今後、ある程度の対空訓練は必須になるだろう。

 反省するのはイスタ軍だけではない。アデル達も概ね100点満点中70点代前半という評価が揃った。評価したのはアデル本人、レイラ、オブザーバーとして状況を見ていたディアス・ソフィー、それにシルヴィアだ。

 作戦自体は結果として“成功”と言えた。しかし想定される実戦に於いて同様の成功を収められるかと言うと難しいだろうと言う評価だ。主に指摘された反省点はフラムの無力化と“袋詰め”に時間が掛かったことだろう。勿論、《魔術師》であるフロレンティナと《騎士》であるフラムでは危険感知や護身能力は違うだろう。しかし技能レベルを考えれば間違いなくあちらが上であり、またその直掩の質も将軍付き、元女王付きの護衛ともなれば、エリート領兵とは実力が大きく違っている筈だ。

 特に厳しいダメ出しをされたのがネージュだ。ネージュが不意打ちを仕掛けて失敗し、その後アデルが支援に入ったものの、フラムの無力化までに数分かかったと言うのだ。数分もあればフロレンティナなら数発は呪いを込めた範囲魔法を放てるであろう。仮に護衛を巻き込んだ乱戦になったとしても、フロレンティナを守る為なら護衛達は喜んでその魔法に巻き込まれるだろう。向こうはフロレンティナさえ無事なら多少身体が負傷しようと死ななければ安いと考えている筈だ。そんな中でこちらは極力フロレンティナな生け捕らなければならない。また無力化(今回は気絶)させたとしてそれを乱戦の中袋に詰めて回収しなければならないと言うとさらに難度が上がる。更に今回は袋に詰めてしまえば問題ないのだが、本番では一度気絶させた程度では安全と言えず、袋から出すときの危険を考えれば十分な拘束が必要で、オーダーの中にもそれが含まれていた筈だ。

 その辺りの効率化を更に上げねば、“大成功”は難しいだろう。

 しかし、全体的な作戦としては概ね間違ってはいなさそうでもある。しかし確実に大成功を収めたいと考えるなら部分部分、各シチュエーションで詰めるべき箇所はまだいくつもありそうだ。


 その夜、アデルとオルタは更に状況整理と作戦の見直しに取り組み、その様子をレイラが少し離れた位置から観察していた。その様子を見ていたティアをユナが監視する。

 ネージュはひたすらシルヴィアの特訓に扱かれ、時折ディアスやモニカが協力(面白がって紛れ込んだり)する。アンナとルーナも入念に立ち回りと魔法の確認を検討し、それをソフィーとリシアが複雑な表情で見届けていた。


 彼らの命運が決まるまで残り1週間となっていた。


39度のとろけそうな日が連日襲い来る時代とは当時思いもしなかった……

酷暑の折皆さまご自愛を。

塩タブレット有能。

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