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兄様は平和に夢を見る。  作者: T138
南部混迷篇
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時価のツケ

ナニソレコワイ。

「お前ら。フィンに興味はないか?稼がせてやるぞ?」

 レイラが言い放った言葉にアデル達は面食らったが、すぐにオルタが答えを返す。

「レイラが誰かに肩入れするってなら一応俺は考えるけど……出来ればアイツらに関わりたくはないかなぁ?」

「ほー。お前は?」

 レイラはオルタの返事を流すとアデルに向く。

「今の所これ以上荒事に首を突っ込む気はないですかね。こっちはこっちで面白くなってきましたし。」

「ほー?」

 今度は興味ありげにアデルの目を見てくる。

「……まあ、当然詳細は明かせませんが、『ギルドを通さない、大きな依頼』を受けまして……」

 アデルの言葉にレイラは少し目を見開く。

「確かにそれは面白そうだな。“干される覚悟”で受けたってことだろ?」

 レイラもの冒険者ギルドがどういうものかはある程度知っている。フィンのそれとはやや毛色が違うが基本的な部分は同じであるからだ。アデルの言葉の意味するところをほぼ正確に捉え、その上でオルタをチラ見する。

「まあ、それに関してちっと相談があったんだ。手紙はむしろそのついでだ。」

 今度はオルタがバツの悪そうな顔で言う。

「こんなご時世ですし、フィンへの買い物に来るのも念の為許可を取っておこうと尋ねたついでに渡されたんですよ。その手紙。」

「なんか、俺がここに出入りしてるって話が王太子にも伝わってるらしいんだ。」

 アデルが説明をするとオルタはすこし眉を寄せてレイラに言う。

「そりゃグリフォンを扱う冒険者なんてお前らくらいだ。“そっちの手の者”ならすぐに察知するだろうよ。」

「……」

 レイラの言葉にオルタは沈黙する。少なくともレイラはこの旗艦や護衛艦内にスパイはいないと考えている様だ。

「で?」

 先を促す様にレイラはアデルに言う。

「魔力の扱いに長けた相手を強襲する事になりまして……魔力探知を誤魔化せるような魔具はないものかと。あとは騎獣――今のブリュンヴィンドの体躯にあった防具ですね。鎖帷子……可能であれば炎熱耐性があると尚有り難いのですが。」

「ふむ。探せば見つかるかもしれんが……」

 アデルの言葉にレイラが少し思案を始めたところでオルタが口を挟んだ。

「あー、それな。実はそれはこっちへ来る“口実”で、実は兄ちゃんにも内緒で話があったんだ。」

「え?」

「ん?」

 オルタの言葉にアデルとレイラが短く声を漏らす。アデルとしてもそんな話は聞いていない。それらが必要になるだろうからレイラの所に行きたいとオルタに言われたためここに来たのだが……

「前にベルンの船襲うのにつき合わされた時あっただろ?アレの代わりにこの作戦につき合ってもらえないかな?と。」

「は?」

「「ほう?」」

 オルタの言葉を聞き直したのはアデル。逆に興味を持ったのが竜人2人だ。

「いや、借り物ワイバーンだと乗り降りの連携が難しくてな。しかも借り物だし。そもそも――モニカさんはどういうつもりなのか知らないけど、俺らが借りれる騎竜はドルケン軍の物だし、秘密裏に動くとしても、下手したら後から怒られるんじゃないか?」

「む……」

 オルタの言葉にアデルが押し黙る。確かにそうだ。モニカの協力で勘違いしていたが、モニカは飽くまで個人での協力、それに強襲チームではない。今のところコローナが譲り受けたワイバーンは伝令でこそ使われているが、実際に前線で戦闘をした事はない筈だ。その辺りモニカやスヴェン、場合によってはベックマンかグスタフ王への伺いが必要になるかもしれない。

「なるほどな。」

 レイラはオルタの言葉ににやりとした。

「この時期に魔力の扱いに長けたヤツの強襲かぁ……。ふーん?」

 獲物を見つけた猛獣――実際に猛獣の表情など判別しかねるところだが――の様な視線がアデルを見つめた。

「えええ……」

 隠す気ゼロのオルタの話にアデルは閉口する。しかしオルタからしてみれば誰よりも信頼している相手だ。極秘作戦の障害になるとは露ほども思っていないのだろう。実際オルタにしてみれば、アデルがモニカに対する信頼よりも何十倍も強い筈だ。

「俺の武器って騎乗戦闘向きじゃないじゃん?一点突破はネージュに任せるとして、兄ちゃんは作戦管理と現地指揮があるだろうし、それなら面制圧はこっちで請け負う方がいいだろ?実際今までにもレイラと組んで何度も船を“制圧”してるしな。」

 オルタとアデルが同時にレイラを見る。レイラは真顔で頷きながらもオルタの発言を肯定した。

「確かにな。沈めると制圧するでは意味がだいぶ違う。実際何度かそう言う場面はあった。」

「あの時だって“沈めて”たら今頃ユナとかも一緒に死んでたんだぜ?」

 なるほど。確かに敵の船だからと言って沈めればいいという単純なものではないのだろう。しかしそれは今必要な情報ではない。

「魔力の扱いに長けたヤツの強襲……ね。ふむ。それはいつの話だ?」

「準備期間があと1週間、その後はなるべく早いタイミングで話が動き出すんじゃないか?」

 レイラとオルタが話を進める。

「1週間ちょっとか……多少の準備をすれば不可能ではないな。しかしオルタ、同じ奇襲と言えど、停泊中の輸送艦2隻と魔女では少々価値が違うと思うが……?」

 レイラがにやりと笑う。

「そうだな。付属の要塞一つと戦利品とかな……」

 オルタの方も負けてはいない。しかし。

「お裾分けとして仕えそうな人間を一人回してやっただろう?」

「……お裾分け?お前が面倒みてやれって押し付けられた気がするんだけど?」

「そうした方がお前たちへのヘイトが下がるだろう?救出したけど解放したわけではないからな。」

「……ナルホド。」

 オルタが(言い)負けた。恐らくはユナの事を言っているのだろう。当初オルタはユナはレイラに『押し付けられた』と言い、アデル達も『お持ち帰り』だなんだと冷やかしたのだが、実際の所はレイラの“親心”であった様だ。確かにユナは救出され、奴隷として売り出されることだけは避けられたが実際に解放されたわけではない。結果として本人が『戻れない』として残った形となったが、もし仮にユナの出自を知る者に会ったとしてもこういう形にしておけばオルタやアデルが槍玉に上げられる可能性が大いに減る。その辺りの配慮まであったのだろう。実際に武門の名家出身、そして翼人であるユナは伝令役としての能力は勿論、斥候や剣の腕もぐんぐんと上達し、大いにアデル達の力になってくれている。ユナの方も同じような境遇であり、同じく翼人であるアンナの存在に大きく助けられている部分もあるだろう。

「……で、追加料金は?」

 これ以上ユナを出しにするのもされるのも嫌がったオルタがそう切り出すと、レイラは改めてにやりと笑い一言。

「ツケでいいぞ。時価でな。」

「……時価のツケとか一番ダメな奴じゃねーか。」

 オルタが閉口しぼやく。

「それがさっき言ってた『フィンに関わる稼ぎ話』ってやつですね?」

 自分の与り知らぬところで色々話が進んだが、流れを見ていたアデルがそう声を掛ける。

「まあな。なぁに、魔女を襲うよりは楽な仕事だ。とある人間の救出・保護だ。救出といっても今すぐ危機であるわけではない。救出よりは脱出の手伝いといったところかね。機を見て連れ出すだけだから、特別急いでいるわけでもない。」

 レイラの方も正直に言ってくる。

「フィン王宮に絡む案件じゃないだろうな?」

 最初のやり取りから不穏な空気を感じたかオルタがそう言う。

「まあ、私のそちらへの協力分を差し引いてもそっちに利が出る様にしてやるよ。フィン王宮とは――直接関係はないが……そうか、あまりゆっくりもしていられなくなるか。」

「具体的にどんなだよ?」

「なんと言うかなぁ……“切り札トランプ”いや、“保険インシュアランス”だな。将来的に必要になりそうな人間の確保だよ。準備は着々と進んでいるから、お前たちはうまく忍び込んで持ち帰ってくれるだけでいい。そちらの翼人が“不可視”の魔法を使えただろう?アレがあればほぼ失敗はしない。」

「アンナか……じゃあ、アンナを確実に生還させないとなぁ?」

 オルタがレイラにそう呟くとレイラは静かに頷いた。なるほど、儲け話はどうやらアンナの能力を織り込んでのことだったらしい。しかし、それでレイラの協力を得られるなら大いにありな選択だ。しかし、アデルが同意の返事をしようとしたところでネージュが口を挟む。

「あー……」

 3人がネージュを見ると今度はネージュが少々バツの悪そうな表情を浮かべる。

「今回、私と別にめんどくさそうな竜人が一人いるんだけど大丈夫?」

「めんどくさそうな竜人?」

 ネージュの言葉にレイラが眉を寄せる。

「あー……今回、竜化は封じられていますけど、ネージュの母親が協力者の協力者として参加してくれる予定でして……」

「……浮気の腹いせに氷竜を押し倒す変わり者か。」

「今度は雷竜を押し倒して見れば?って言ったんだけど、嫌がられた。」

 ネージュの言葉にレイラは苦笑を浮かべる。

「……まあ大丈夫だろう。よし、決まりだな。採寸もあるだろうし、お前らはグリフォン連れて一度店に行って買い物を済ませ、その後オルタはこっちに戻れ。お前らとグリフォンはそのままイスタに戻ってくれていいぞ。オルタは私が直接送っていく。」

 こうして超強力な助っ人の参加が決まった。


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