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兄様は平和に夢を見る。  作者: T138
四天動乱編
153/373

打合わせ side C

 会談前日朝、馴染みとなりつつあるいつもの使者の来訪を受け、イスタの行政庁舎へと呼び出されたアデルはそこで、先日は姿を見せなかった王太子レオナールに会う。部屋にはレオナールとエルランジェ、そして使者とアデルの4名だけとなった。


 レオナールは時間がないので……と、挨拶その他を纏めて端折ると、先ずは明日の予定を述べ始めた。

 午前中にはドルケン王一行がコローナに到着し、その後最初にささやかな歓迎式、その後昼食会を挟み、昼下がり頃から実務的な協議に入るというが、先だって国王同士の会談が行われ、軍事協力についての交渉は夕方過ぎになるだろうとの事だ。また、ワイバーンの着陸地として、騎手ギルドの土地の一部を丸2日間借り切る事とし、そこまでの案内と誘導をアデルに頼みたいという。

「お話は承りました。騎手ギルドの土地と言うと……王都南東のあそこですか?」

 アデルの問いにレオナールは頷く。

「そうだ。あの場所に着陸してもらい、そこに待機させる馬車に乗って王城まで案内する。王城の庭で歓迎式だ。そこまでの案内と警護を君にお願いしたい。依頼料に関しては後でエルランジェ伯やギルドの方で調整し、十分な物を約束する。」

「分かりました。庭まで警護ですか。俺のワイバーンも騎手ギルドで?」

「うむ。一緒に預ければよいだろう。グリフォンに関しては……君に任せる。ただ、城の中には入れられないと考えておいてくれ。」

「……そりゃそうか……と、なると……会談への立ち合いは俺だけでってことですか?」

「その辺りは任せよう。必要と思うなら必要な者を連れればよい。但しその場合、その者も君と同じく会談終了まで城で待機してもらうことになるぞ。昼食はこちらで用意するが。」

「わかりました。立ち会うと言っても何をすれば良いのでしょう?」

「今回は対話の入り口だ。当初は双方の現状をある程度知る者がいてくれれば良いと思っていたのだが……いきなりあちらの国王が来ることになってな。その意図がこちらでは量りかねる。できれば何となく程度でいいから探りを入れてみてもらいたい。あとは双方に必要と思われる条件や状況を意見してもらえれば有難い。必ずしもコローナにとって有利な話に限らなくてよい。双方の立場ですり合わせた方が良さそうなことなど気付いたことを述べてくれればいい。」

「……わかりました。」

 必ずしもコローナ有利の話にしなくても良いとのことだ。思ったものを上げてみれば良いのだろうとアデルは考える。


「ええと……ではまず案内の方から。着陸の手順等はあちらにすべて任せてしまって良いのですか?」

「そうしてくれ。こちらには手順も作法も判らないからな。到着は昼前にと聞いているが、逆算するとドルケンの出発はいつになると思う?」

「早朝でしょうね。天候次第ですが、6~7時くらいかと。万一雨になると到着も遅れるでしょうし、到着後も着替えや何やらで時間を取られるかも知れません。雨が降りそうなら少し配慮すると良いかも知れません。」

「雨か……どのくらい影響が出る?」

「視界が悪く、また太陽の位置や地上の様子など方角や位置の確認がしにくくなるので相当遅くなるかと。」

「そんなにか……雨の影響は陸よりも大きいな。」

 レオナールが顎に手を当てて考える。これは翼竜騎士にとっての大きな弱点となる情報であるが、この辺りはまだアデルは理解できていない。尤もこれは考えればすぐにわかる話であるし、敵に回すつもりでもないので些事ではあるが。


「それでも身軽な状態なら、陸路は徒歩で1週間を早馬でも丸3日はかかる所を半日強ですから。雨だと早馬の場合だとさらに差が開きそうな気はしますが。」

「……ふむ。なんとかもっと能率の良い連絡手段はないかと考えているのだが……」

「現状はどんな感じなんですか?」

「こちらからの連絡に3日、向こうからの連絡が1日必要と言ったところだ。」

「なるほど。……でしたら、一番手っ取り早いのが“風の精霊”でしょうかね。向こうはグリフォンとのやり取りの為か、国王を始めそれ以外にも結構な数の精霊の言葉が分かる人がいるようです。ただ、精霊が気まぐれだったり、時間と言う物に疎いので信用度に少し欠けますが。あとは、いっそ資金や資材を渡す代わりに、ワイバーン数騎と教育係数名を派遣してもらうと言うのはどうですか?飛行だけなら俺やネージュで丸2日、流石に騎乗戦闘は数か月たってもまだまだですが……連絡だけであるのなら。ただ、今の情勢から経路に竜人やらキマイラなど速度や体力のある脅威を想定するとまた話は変わるでしょうけど。」

「なるほどな。その意見は参考にさせてもらおう。ああ、そうだった。もしドルケンの一行がその時間に出て、天候に問題がないなら、出迎えは何時くらいに向った方が良いだろうか?」

「国王自ら来るというなら……それほどの荷物や役人は必要ないでしょうけど……それでも、10時は確実に過ぎるかと。急かせばもう少し早くは出来るでしょうけど、それもどうかと思います。歓迎式典とやらがどれくらいの時間が要るのかわかりませんが……10時~11時を目標として案内すれば良いかと。」

「そうだな。ではこちらは10時頃には歓迎準備を整えていよう。そのように調整してくれ。」

「わかりました。では今日の午後にはドルンへと向かいます。明日王都の騎手ギルドに到着したら、その後は夕方の会合まで俺らは王都で待機ですか?」

「いや、アルシェに指示し城で待機出来る様に整えておく。会談に参加させるものは君に任せるが、王都には君たち全員で来てほしい。」

「……全員ですか?イスタ防衛の時よりも2人と1頭メンツが増えましたけど……」

「2人?1人はロゼールから聞いているが……まあ良い。折角だし全員で来てくれ。」

「……わかりました。」

(ロゼはカミラの話を王太子に上げているのか……)

 アデルはそこに少々の疑問を持ったが、それほど深くは考えなかった。全員で――というところを見ると、もしかしたら会談出席以外の依頼があるのかもしれない。

「最後に……個人的な贈り物をしつつ、コローナの力を見せつけるには何が一番良いと思う?」

 レオナールの言葉に少し考えてアデルはこう返す。

「魔具でしょうね。特に収納の魔具はワイバーン乗りに取って画期的であると同時に、徐々に普及するなら今後ライダーにとってステータスの一つにもなるでしょう。」

 アデルがヴェンから譲られた小型の容量のものでも、ワイバーンで長時間移動する際には大きな助けになっている。

「なるほど。それはいいな。参考にしよう。では案内の方、宜しく頼む。準備に掛かってくれ。私はすぐに王都へ戻る。明日また会おうぞ。」

 そう言うとレオナールは立ち上がる。

「わかりました。それでは。」

 アデルもそれに倣い立ち上がると、一礼しアデルから先に部屋を出た。


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