「初めまして」な再会
100!
そして奇しくも(7割方偶然)1周年!
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この話はもうしばらく続く予定ですYO!
早朝に届いた連絡にアデル達は飛び起された。
その連絡はまずアリオンに所に届けられ、そしてそのアリオンに直接叩き起こされたのだ。
連絡は手紙だ。しかし、到着したタイミングを考えれば、専用の者を夜通し走らせての速達であったことは想像に難くない。
手紙には、『アデル達は大至急王都に戻れ。』と短い文とブラバドのサインがあるだけだった。
アリオンに聞いてみると、「この手の連絡を国軍以外が手配しようとするなら、1通だけでも300ゴルトは掛かるだろう」と言うことだ。300ゴルト――アンナのレザースーツ1着分=アデル1人なら1ヶ月、保存食以外で食える程度の金額である。
そこまでのものを送りつけてくるとなると相当の急用の様だ。と、同時にネージュがまだ戻ってきていないであろうことも察しが付く。ネージュが戻ってきていれば、それこそネージュに頼めば、夜間なら無料且つほんの数時間も掛けずに届けられる程度の物なのだから。
あれ?これで1ヶ月食えるなら、ネージュに連絡屋やらせた方が早くないか?と思ったが、その費用を考えれば国軍以外でそれくらいの連絡を必要とする者がどれだけいるのかという話になる。
アデルの思考が若干横道に逸れたがすぐに軌道修正し、改めてその連絡がただ事ではないと即座に出立の準備を整える。アリオンとしても、ブラバドからこのような連絡が来ることはほとんどないらしく、事態の重要性を訴えている。
「レナルドには俺から伝えておく。とりあえず、朝飯代わりのサンドイッチくらいは用意しておくから、すぐに仕度してくれ。」
と、出立に必要なこと以外はするなと言わんばかりの口調でそう言うと、アデル達も10分もしない内に準備を終えた。
アリオンから人数分と頭数分の朝・昼食を受け取ると、アデル達はすぐさま王都へと馬を走らせた。
通常なら馬で丸二日は掛かる距離だったが、アンナのサポートと、アデル達騎手の逼迫さを感じ取ってかプルルら2頭の馬が奮起したおかげで、連絡の入った日の夕過ぎには到着した。鬼子兄妹が跨った馬は、もしかしたら山賊の相棒をさせられていた頃よりもハードな働きをさせられているかもしれない。
急ぎブラーバ亭へ戻ると流石にブラバドも少し驚く。
「おいおい。早いな?馬を潰さないようにしろよ?」
ブラバドとしては明日の到着を想定していたらしい。
「アンナが丁度いいサポートの魔法を使えまして……その様子なら用事は明日で良かった感じですかね?」
「……いや。一刻でも早くと言ってきている。すぐにでも遣いを出そう。」
「遣い?」
「お前たちに指名依頼だ。依頼主は国王。」
「……は?」
ブラバドが告げた言葉に、アデルは一瞬間の抜けた返事をする。そしてその言葉を改めて理解し、少々不穏なものを感じた。
「まさか、いきなり強制依頼ってやつですか?それを懸念してのランクアップ見送りだったのに。」
「まあ、強制とは一言も言われていないが……まあ、な?ただ、不思議なのは、依頼の名義が国や国軍でなく、国王陛下の名前であった事だ。署名の部分も、国印や玉璽はなく、陛下のサインのみだった。」
言外に半ば強制であるような雰囲気でそう言われる。
「とりあえずは一旦休め。会談の予定は今出てったやつが戻ってからだ。」
ブラバドに席を促され、軽めの夕食を頼む。アデルは不安の、一方ニルスとミルテは国王直々の依頼とのことで、期待の表情で続報を待った。
そして約30分後、ブラバドが少し困惑の表情を浮かべてアデル達に告げる。
「今から会われるそうだ。謁見ではないので、そのままの格好で構わないからすぐに城に向う様にとのことだ。俺も付き添うことになったらしい。」
「本気の急用なんですね……」
ブラバドの言葉にアデルは困惑を通り越してやや呆れ気味だった。
ブラバドに付き添われ、アデル、アンナ、ニルス、ミルテの4人は王城2回の指定された部屋へと入っていった。王城は1階から4階で構成されており、階を一つ上がるごとに立ち入りを許される人の数が一気に少なくなる。2階は貴族の他はそれなりに重要な案件に関わる役人くらいしか立ち入りが許されない。ちなみに4階は王族と近衛騎士のトップ層、そして選抜に選抜を重ねた侍従、侍女のみしか立ち入ることが出来ない。
通された部屋には先に一人の騎士がアデル達を待っていた様だ。アデルには見覚えがある人物だった。
昨年の北部遠征の折り、後方陣地、兵站の防衛隊長を務めていた騎士だ。ブラバドの言が確かなら、司祭と共にアデルに《指揮》技能を推薦してくれたということだが。
「明日になると聞いていたが……早い対応に感謝する。
まずは改めて挨拶をしようか。私はコローナ王軍第1騎士団、第3中隊長、ポール・アルシェだ。改めて宜しく頼む。」
ポールから手を差し出されると、アデルからも順に自己紹介を返しながらポールのてを握り返した。
「コローナ王軍?国軍でなくて?」
王軍という聞きなれない言葉にアデルが質問をする。
「国軍とはまた違う、コローナ国王個人に属する直轄の部隊だ。近衛騎士の下請けと思ってくれればいいかな?近衛騎士は王族の警護を行う部隊だが、我々は王の命令で国軍とは別系統の部隊として、国内外に展開する。まあ、そうだな。直接的な指示を出す人間が違うと思ってくれればいいだろう。国軍への命令は、突き詰めればやはり国王と言うことにはなるが、実際は、軍事に関して貴族たちの代表である軍務大臣だ。王軍は直接国王から命を受ける。国王個人の私軍と思ってもらえればいいか。勿論予算は国から出ているのだけれどね。」
「なるほど。」
その辺りでアデルは理解できたようだ。
「では、その王軍が兵站を守っていたと?それとも査察的な?」
アデルの言葉にポールは少しだけ驚いた表情を浮かべる。
「司祭にでも聞いたか?まあ、査察と言うよりは監査を兼ねて、と言ったところか。ただあの時は“国軍”として補給部隊の長に付く様にという“命令”を陛下から受けていた状態だがね。」
「なるほど。“王軍”の依頼だから、依頼主が国や軍でなく、国王個人の名前だったと言う訳か。」
ポールの説明にそう納得したのはブラバドだ。しかし、
「それは半分正解だが半分は不正解だ。依頼の内容はその通り、“王軍”としての依頼だ。ただ、彼らを指名したのは陛下御本人だ。」
「陛下?お会いするどころかお目に止まった事すら記憶にありませんが……」
アデルの言葉に、ポールは軽く笑って片手を上げる。
すると、部屋の端に控えていた騎士がアデル達が入ってきた扉とは別の扉を開く。
「……初めまして。私は ロゼール・クロエ・エメ・コローナ。コローナ国王、アラン・エメ・テレーズ・コローナと、側妃、ブリジット・アン・コローナの娘です。
「「…………」」
アデルとアンナがたっぷり10秒ほど固まった後、顔を見合わせた。見覚えのある様な無い様な顔だ。見覚えはあるにはある。だが、派手ではないものの高級そうなドレスを身にまとったそれは彼らが知っている顔とは全く別の顔であるのも事実だった。
完全に固まっていたアデル達にロゼールは微かに笑みを浮かべて声を掛けてくる。
「今日はネージュ……さんはいらっしゃらないのですか?」
アデルが何とかチラリとブラバドと視線を合わせるとブラバドは小さく頷いた。ブラバドは承知していたらしい。
「ネージュは別件……いえ、私用で知人のところへメッセンジャーとして遣いに出しています。そろそろ戻ってくる頃だとは思うのですが。」
「……そうですか。そこは予定外でしたが……」
ロゼールはポールの隣に座ると、チラリと視線を送る。
「まずはこれをご覧いただきたい。」
ポールががそう言いながら広げたのは――
ネージュ謹製の地図だった。しかも3枚。
「ちょっ……」
どちらもアデルには見覚えがあった。1つはノール城奪還前にラウルに渡した物、2つ目は昨年末、魔の森掃討戦の時にレナルドに渡し、冒険者ギルドに渡ったもの。そしてもう1つは昨日までレナルドがもっていたエストリアの被害状況図だ。
「先に伝えておくが、これはノール城奪還の前に、とある冒険者から供出された物だ。出所は明らかにされなかったが、これによって我が軍の――これはコローナ軍全体と言う意味でだな。の被害の軽減に大きく貢献した。こちらは昨年末、エストリア辺境伯の命によってなされた魔の森の掃討戦の折、隊長が持っていたという図面。そしてこちらは一昨日、やはりエストリア辺境伯より供出された物だ。こちらも出所ははっきりとしていないが、当時のエストリア領の状況としてかなり正確であるとのお墨付きもある。」
ポールの言葉にアデルは軽い眩暈を覚えながらも確認した。
「一昨日?」
この図は昨日レナルドが現地視察に行く際に持っていた筈だ。
「うむ。間違いはない筈だ。一昨日、エストリア辺境伯の遣いの者によって届けられたと聞いている。」
「見せてもらってもよろしいですか?」
「無論だ。」
ポールの許可を得てアデルはエストリア概況図を手に取ってみる。間違いなくネージュ作、自分の手でレナルドに渡したものだ。それがなぜ今ここに?どうやら、昨日レナルドが持っていたものがこれの写しだった様だ。
「ふむ。なるほど。で、これが……俺達に何か関係すると?」
「この地図に書き込まれている“字”に見覚えがありまして。昨年の夏頃、テラリアから渡って来たという女の子に文字や言葉を教えた事があったんですよ。」
「ソウデスカ。」
数字はともかくとして、ネージュが何故人族の、コローナの文字を知っているのかと気にはなっていたがまさかロゼに習っていたとは……
「で、呼ばれた理由をお聞きしても?」
一つ大きな呼吸をしてアデルの方も改めて仕切り直す。
「こちらをご覧ください。」
ロゼールが懐から大事に封筒を取り出す。やはり見覚えがある物だ。
「ぇぇぇぇ……」
アデルの反応に、ついにロゼールが吹き出してしまった。
「まさか、こちらの字にも見覚えが?」
「ええ。何度か。コホン」
半目でぼそりとアデルが呟くと、ロゼールはそう答え咳ばらいをした。
「重要な事が書いてあります。御覧になりますか?」
「あ、いいえ。大丈夫です。」
ロゼールが取り出したのは、やはりレナルドに渡したはずの、アデルが書いた“意見書”である。
「これはいつ入手されたのですか?」
「昨日の……お昼過ぎでしたか?」
アデルの問いに、ロゼールはポールに確認を取る。
「はい。届いたのは昼前のようですが、議題になったのは昼過ぎだった筈です。」
「とのことですよ。」
「こちらもエストリア辺境伯様から?」
「いいえ。こちらはエストリア防衛隊長の……レナルド様?」
ロゼールはそれを広げて見せ、文末にある取ってつけた様なサインを指差す。どうやらアデルの意見書にエストリア防衛隊長である自分のサインをつけて王宮に送りつけた様だ。エストリア辺境伯には見せられないとは言っていたが……善処の結果がこれか。確かに一介の冒険者の意見だとしたら取り合うどころか、王宮中央に届く事すら難しかっただろうからそこは確かに“善処”と言えるのかもしれない。些か腑にはおちないが。
「年末でしたか?テラリアの皇女が我々に共同戦線の提案を持ち掛けてきたのは事実です。ですが、私たちは『コローナには今現在、東部領に於いてそのような事案や被害の報告はなく、東部領に確認させる。』と、拒否ではなく保留の意思を伝えました。しかし、彼女らは数日内に姿を消して……あとはこの手紙の内容の通りなのでしょう。」
「皇女?クーンの侯爵の娘でなくて?」
ロゼールの言葉にさりげなく衝撃的な事実が含まれていて、アデルは思わずかぶっていた猫を脱ぎ捨てて聞き返してしまった。
「テラリアの第1皇女で間違い無かった筈です。身分証も、テラリアに詳しい方への確認も行いました。確かにクーン領、ヘンドリクス伯爵のご息女もいらしたようですね。」
「まじか……あの中に皇女まで紛れ込んでやがったのか。」
「……いくつか確認したいことがあります。」
ロゼールが表情を王女のものに戻しアデルに尋てくる。
「まずは、何故アデルさんが聖騎士達の話を知っていたのですか?」
「依頼でグランからコローナへ商人の護衛を請け負っていたのですが、途中賊に絡まれている彼女らに遭遇しまして……助勢したのです。勿論、皇国の本物の聖騎士とグラン辺境の賊とじゃ数の差があっても問題なさそうでしたが、こちらも急いでコローナに戻りたくて、共に道を塞ぐ賊を蹴散らしました。その折、隊長なのか、隊長を装っていたのかはわかりませんが、クーン領ヘンドリクス伯爵の娘のルイーセ様から、テラリア西部の状況が想像以上に悪い事と、コローナ王家に用事があるという事は聞いていました。王都に到着すると同時にすぐ別れましたがね。」
「そのような話をなぜアデルさんに?」
「なぜと言われても……まあ、ルイーセ様とは面識と言うほどではありませんが、昔少しだけご縁がありまして。聖騎士になったとは意外だな。なんていう話からそんな話につながった様な覚えがあります。」
「なるほど……」
アデルの説明に、ロゼールは怪訝な表情で頷き、ポールは目を閉じて静かに聞いていた。
「此度のエストリアの件が陰謀ではないかと言うのは?」
「そのままです。奴らはグランからコローナに入ったものの、王都に着いた頃にはグランでは既に戦争が始まり、グランから戻るのは困難、魔の森を抜けるとしても道にいくつかの防衛拠点があった様でそれをうまく抜けつつ、蛮族の目を東へ向けさせようと画策したのではないかと。決定的な証拠はないので、当面外では口にしない様にしようとレナルドさんとは話をしたのですがね。年末の討伐と、奴らがどうやって東へ抜けたかは聞いていますか?」
「聞いている。随分とえげつない真似をしてくれたようだな。お陰で軍と冒険者ギルドの間に要らぬ不信感が起きているそうじゃないか。」
ロゼールに代わってポールが答えた。
「俺としては今知りましたが、あの6人の中に本当に皇女が紛れ込んでいたと言うのであれば納得――というと、語弊がありますね。なんというか……さもありなんって感じですかね。何故皇女が僅かばかりの聖騎士だけを連れて遠路はるばるコローナまで出向いてきたかまではわかりませんが……その辺の事情はあなた方がお詳しいと存じますが。」
「まあ……な。」
アデルの言葉にポール苦々しく呟く。
「どちらにしろ、東部領がこのまま蛮族にやられ放題と云う訳にはいかないでしょう。」
「その通りだ。そしてここからが本題になる。」
アデルの言葉をポールが肯定する。
「本題?」
「この手紙の通り、蛮族軍を森へと追い返すために、更には西の魔物に対してもコローナ王家は本格的に対処に乗り出す事を決めた。君達には東か西、出来れば東と期待しているが、その作戦に参加してもらいたい。」
「……無謀な作戦でないなら前向きに検討させてもらいます。」
「勿論そのような真似はしない。そして君達には特別待遇を用意した。と、いうよりも特別な依頼を受けてもらいたい。」
「特別?」
「殿下の直掩についてもらいたい。」
「殿下……?」
アデルは視線でロゼールの事かと確認したが、そうではなかった。
「今回の件、コローナ王家から、西方面の制圧部隊として王太子レオナール殿下、そして東方面制圧部隊として第2王子ブリュノ殿下と第3王子クロード殿下が揃って出陣する。君達にはブリュノ殿下とクロード殿下の直掩として、随行してもらいたい。そちらにはロゼール殿下と私も同行する。もし、西を希望するなら、王太子殿下と第2王女マリアンヌ殿下に付いてもらうことになるが……」
その言葉にアデルは過去最大級に驚いた。
この状況にコローナ王家は成人済の王子、王女総出で協力して事に当たると言うのだ。アデルの中の常識ではありえないことだったが、逆にいつになく興奮している自分に気づく。横を見れば、ニルス、ミルテも同様、ブラバドですら目を見開き話を聞いていた。確かに四面楚歌で不安が一気に膨れ上がっている国内において国民に対しこれほど強力なメッセージはそうそうないだろう。東方面に関しては、形と名前は変えられているが、アデルの意見が防衛隊長を通り越して王宮まで動かすきっかけになったのだ。震えないわけがない。
「本気で聞いてもらえるのですね。ならば、全力でお手伝い致します。」
ポールの言葉にアデルは報酬内容も聞かずに頭を下げていた。
「こちらこそ、よろしく頼む。詳細は明日遣いを出そう。」
ポールとロゼールもまた立ち上がり頭を下げた。しかしそこで
「いえ……ですが、いや、でしたらその前に……」
とアデルが切り出す。
「どうした?」
「もしかしたら、すでに聞いているかもしれませんが……東の状況は一昨日の時点よりさらに悪くなっています。」
アデルの言葉に、一度立上ったポールが少々ひきつった表情で再度腰を下ろした。
「どういうことだ?」
「昨日の現地調査の結果判明しました。もしまだ届いていない様でしたら、明日には届く話でしょう。」
アデルはネージュが作ったエストリア領東部の地図の北東部分を指で示し、
「この村の跡地に敵軍陣地が、この辺りに敵の増援がこちらに向かっているのが確認されました。数はおよそ合わせて300弱。」
「疑う気はないが……いや、その様子なら確かなのだろうな。すぐに報告する。もしかしたら、先ほどの説明と布陣は変わるかもしれないが……少なくとも私とロゼール様は東を受け持つだろう。決まり次第連絡する。君たちもそのつもりでいてくれ。御免。」
「わかりました。」
ポールは険しい表情でそう言うとロゼールを置いて足早にどこかへと去っていった。
「あら……?」
予定と異なり、1人取り残されてしまったロゼールが困った表情を浮かべる。
「別働部隊300となると、無視や行き当たりで対処という訳には行かないでしょう。布陣の変更の相談があるものと。我々もすぐに準備に取り掛かります。姫様も一度戻られて待機されていた方がよろしいでしょう。」
ブラバドの言葉に、ロゼールは頷く。
「言う前に行っちゃいましたが……移動中の敵増援はあちらの基本構成、オーガを小隊長とする、オークとゴブリンの小隊が5~6程です。竜人の姿は確認できなかったと。」
「竜人ですか……交戦したそうですね?かなりの兵が亡くなったと聞いています。」
「はい。アンナがいなかったら手も足も出せていなかったでしょう。ネージュでも1人では対処できなかったかと。“東の勇者”の話は聞いていますか?」
「東の勇者?聞いていませんが……」
「あら。そうなのか。その辺の報告はどうなってるんだろう……エストリア領東部の村のエリートを集めた、独自のパーティです。彼らのリーダーがいなかったら撃退も難しかったと思います。ただ、村が勝手に編成して、ギルドに所属していないので冒険者ギルドとは微妙な関係のようですが。」
「そうですか。協力してもらえれば有難いのですが……」
「状況からしてどちらかに参加してくるとは思いますが……その様子だと、辺境伯が勇者と繋ぎを取っているのかな?どちらにしろ、今、俺の装備がないので一旦これで失礼します。出発前に完成とはいかずとも、使える程度には何とかしてもらわないと……」
「アモール様でしたか?可能でしたら少し声を掛けてみましょう。そうですね。では私も準備に入ります。そう遠くないうちに出陣となるでしょう。またよろしくお願いします。」
「こちらこそ……全力でサポートします。」
アデルは恭しく頭を下げると、周りを促し面会の部屋を後にした。




