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街から街
空っぽの酒瓶に、くすんだ街を映しだすためには、
にわか雨が必要だったりする。
曇り空の昼下がり、使い古したシーツを思わせる光に包まれた、
通りのガラス張りの、白亜の洞窟を思わせる空きテナント。
ビルの裏側の、空調の換気扇。
ボロボロの文庫本を軒先で廉売する古本屋。
追憶を並べたって、一度通りすぎた街。
風がアーケードを這う。ベンチに腰掛けて、
思い出は散り散りにめくられていくまま時間は途切れる。
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