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一章-6

 「あれ? 上の方に何かある」


 とつぜん観客席から一人の生徒がそんな声を上げた。 周りの生徒は一斉に天井を見上げる。


 「あ、 本当だ」


 「戦い始める前にあんなのあったっけ? 」


 「無かったはずだけど……」


  カスミも何気なく上を見る。


 確かに何かの影がある。 だが、 あれは戦いの最中に天井の一部が壊れて剥がれたのだろう。


 自分の魔法は広範囲に及ぶのだから。


 そう思いそのまま帰ろうとしたが、



  「おい、 待てよ。 まだ終わってねぇぞ」



  「! 」


 カスミは辺りを見回す。 アカネたちも観客席も声の主を探す。


 そして、 見つけた。


 天井から。


  「まだ試合は終わって無いぜ? 」


 そこに居たのは……



  背中から青い翼を生やした、 ケンジの姿だった。



  「なっ……!? 」


 周りの生徒も全員自分の目に写ったものを信じられないかのように凝視する。


 ケンジは青い鱗を持つ翼を生やし、 天井に逆さまに立っていたのだから。


 しかし、 果たしてケンジに傷一つ付いていないことに気が付いた生徒は何人いただろうか。 少なくとも、 カスミは気が付かなった。


  アンヌたちも驚いていたが、 あれは報告にあったケンジの身体の中に居る龍なのだろう。


 ケンジの身体の中から徐々に姿を表したと聞く。


 そう確認しようとアンヌはアカネの方に目を向けた。


 「アカネ、 あれがケンジの使い魔か? ……どうした? 」


 アカネが呆然としていた。 ここに居る誰よりも先にケンジについて知っているはずの彼女が。


  「……アカネ? 」


 「え、 あっ、 す、 すいません」


 「どうしたんだい? アカネ、 君らしくないが」


 「いえ、 その」


 「? まあ、 いいや。 あれがケンジの使い魔だろ? 確か、 六雷火だったか? 」


 アンヌのその問にアカネは首を、 横に振る。


  「へ? 」


 「私が見た、 六雷火は、 黄色の鱗でした。 青ではありません」


 「は? 」


 「それは……つまり、 もう一体の龍だと? あれは」


 「そう……なるかと」


 「ちょ、 ちょっと待ってください!? 」


 カスミが声を張り上げる。 他の生徒たちにも自分たちの会話は知られていたらしい。


  「つまり、 あの人は二体の龍を使い魔として身体に宿していると言うんですの!? 」


 改めて纏められたその言葉の意味を理解し、 生徒たちは呆然とする。


 龍とは最強の生物。 力とプライドの固まりであり、 他の生物と共に行動すること自体が稀である。


 それを使い魔としており、 更に二体となると……。


 「水を差すようで悪いが、 俺の身体に居る龍は二体じゃないぜ? 」


 「え? 」


 「これ以上は入学手続きとかが終わってからな? 」


 ケンジはそう言って笑顔になるとカスミの方に雷弾を放つ。


  「くっ! 」


 カスミは間一髪でそれを避けるとまた隕石を作り出し、 ケンジに放つ!


 「スプラッシュ・リネガー! 」


  ケンジが隕石に弾丸を放つとどれもが脆くも崩れさる。


  「まさか、 水の属性!? 」


 「正解だ。 おっと、 火を纏わせたとしても水には効かないし、 そもそもその技に対抗できる属性は他にも持ってるぜ」


 ケンジの言葉に誰もが言葉を失う。


 二つの属性を持っている時点で相当の強者なのだ。 一つの属性を極める為に魔法使いは自分を磨く。 カスミの様に先天的に二つの属性を持つ者もいるが、 それは相当稀である。


 アンヌの様な魔導王(ウルード)は最低五属性持ちだがケンジは既に、 雷・金・水の三属性を使っており、 更にまだ隠し持っていると話す。


 この時点で、 勝敗は決していた。


 (しかし、 まさか二二木を使うことになるとはな……)


 ケンジは無意識に脳内でそう考えていた。 まさかここまで追い詰められるとは。


 あまり舐めてかかっているつもりは無かったが、 相手が強かった。 それだけのことだろう。


 「さてと、 まだやる? 」


 ケンジの当然とも言える問に、 カスミは何故かムキになった。


 「い、 いえ。 まだですわ! 」


 カスミはロックプラヒートを撃ちまくるがケンジはその全てを撃ち落としていく。


  「もう、 ダメなのは分かってるだろ? 俺にお前の、 カスミの技は、 魔法は、 何も効かない」


 ケンジのその言葉にカスミは遂に自分の負けを認め、 膝から崩れ落ちていった。


 倒れる前にケンジが急いで身体を抱え、 そこで試合は終了となった。


  その時、 周りのギャラリーからはケンジの、 戦いが終わったあとの清々しい表情が見えた。


 それがカスミの目にどのように写ったのかは、 また余談である。

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