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八章-3

 「……ここは?」


 ケンジが目を覚ますと、そこはジムの天井では無かった。


 「保健室だよ」


 声のした方に首を傾けると、そこに居たのはリンスだった。


 結んでいた髪を下ろしているので、パッと見の印象はだいぶ違って見える。


 「気失ってたんすね俺」


 「それとひどい大怪我ね。腕の感覚ないでしょ?」


 確かに腕には包帯が巻かれていて、自分の意思で動かすことは出来ない。


 「神経でも剥がれてました?」


 「正解。負けた私よりも重症だって、先生方焦ってたよ」


 「はは……、でしょうね。さすがにここまでひどい怪我とは」


 ふと、ケンジはあることに気が付く。


 「リンス会長、そういえば話し方が……」


 「あ、気付いた?本当は私の話し方ってこっちなのよ。普段は生徒会長だからね」


 「なるほど」


 「それと私もあなたたちの寮に引っ越すからね」


 「ああ、まあ予想はしてましたよ」


 こうしてリンスのMEMORIA寮入寮をケンジは知ることとなる。



 保健室を出て時計を見ると、4時を回っていた。


 ケンジはティアリーとの約束を思い出し、待ち合わせ場所に急ぐ。


 「ティア!」


 「……!ケンジ、さん」


 ティアリーが律儀にその場所で待っていたのを見て、胸を撫で下ろす。


 「いやあ、ごめんな。保健室に行っててさ」


 「あ、いえ……大丈夫です。待ってる間に勉強の、復習もできたので」


 よく見るとティアリーがノートを広げていたり、シャーペンを近くに置いていたりで、その様子は何となく見える。


 「そかそか、ありがとな」


 ケンジはティアリーに礼を言うと、早速練習のために場所を移動する。


 ケンジの考えていた場所は、特訓所。


 アンヌに魔法の練習に一番適した場所を聞くと、地下にある特訓所のことを教えられた。


 既に許可は出してあるため、まっすぐ向かう。


  ─特訓所─


 「ティアは魔法の属性は何を使うの?」


 ケンジはまずそこから確認する。


 それによって練習が変わるからだ。


 「や、闇と、火です……」


 「闇と火か。面白い組み合わせだな」


 なんとなくハロウィンが思い浮かんだ。ティアリーの服装もまるでロリータだからだろうか。


 「わ、私は戦い方としては……人形を作って、操って、人形に魔法を出させるというような感じです」


 「なるほど、面白いな。じゃあ魔導書は何になるんだ?」


 「こ、この編み棒です」


 「うんうん、似合うね」


 これ以上ない組み合わせに思える。


 ケンジはティアリーの正面に立つと、自分の魔法を上に吐き出す。


 「!こ、これって……!」


 「さあ、練習、特訓始めるぞ!」


 ケンジの指導はこれから一週間続くことになる。



 「ん、体育祭?」


 ある日、土曜日。学園は休みであるが、寮に住んでいるメンバーがメンバーなため、普段と変わらない朝。


 アンヌから唐突にそのような言葉が投げられる。


 「おう、この時期は体育祭をやっているんだ」


 「へぇ、一応そう言う行事もあるんだな」


 「体育祭は盛り上がりますからねえ」


 「あ、ケンジさん、この時間だと放送局がなにか流すかもしれません」


 そう言ってカスミがテレビをつける。


 〜♪


 「んだこの音楽。学生向けじゃなくね」


 明らかに昭和の歌謡曲メロディ。


 『どうもこんにちは!』


 『こんにち!放送局でっす!』


 「……放送局がなんでテレビ?」


 「うちの学園はひとつの局を持ってるからな!」


 「ええ……」


 どんだけこの学園力持ってるんだ……。


 流石にケンジもドン引きを覚えてくるこの頃だ。


 「あはは、私はこの子たち好きだよ。いつもぶっ飛んだことしてくれるし」


 「イツキ姉ちゃんの言う、ぶっ飛んだことってなんなんだ……」


 そう行ってる間にも放送局がしゃべり続ける。


 『はい!ってことでそろそろ体育祭です!』


 『うちの伝統として、体育祭は毎年バージョンアップしないといけないというルールがございます!』


 『去年は競技の種類を普段の五倍にしておりました!』


 「去年はキツかったですね……」


 「あそこの放送局ははっちゃけますからねえ」


 アカネとルイビがため息をつく。


 五倍は確かにやばい。というかどうやってそんな数の競技を捻り出したんだ……。


 『今回はなんと!なんと!な、な、な、なんと!』


 「はよ喋れ」


 『二週間ぶっ通し!競技はなんと十倍!チームは、幼稚舎から大学までクラスを縦に分けます!』


 『つまり、幼稚舎のA組と大学小学校、中学高校大学のA組は、同じ組になります』


 『わかりやすい説明ありがとね!』


 『いえいえ』


 『ってことで!今年はありえない規模の体育祭になります!』


 『学園街もフル活用です』


 『しばし、続報を待て!』


 『以上で〜す』


 これで放送が終わった。


 「ば、馬鹿かなのか……?」


 ケンジの思わず漏らした呟きに


 「流石にここまでとは思わんかったなあ」


 アンヌも汗を手で拭う。


 これにより体育祭は過去最高の規模で盛大に行われることになった。


 「競技考えるのきつくないのか?」


 「去年はなんか、パン食い競走が何回あったりとか、してましたね」


 「徒競走もトーナメントするから、すごい長いしね……」


 「確か、今回は二十回目という節目なので、格闘トーナメントもやるとか」


 「……なんかMMSの練習みたいだな」


 「それを狙ってるのかもね」

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