五章-2
「さあ、 そろそろ時間だ生徒諸君。 チームに分かれ、 私の号令のもと一斉に任務スタートだ」
アンヌの言葉に生徒がそれぞれの持ち場へと着く。
「ケンジさん、 あのナイフ……龍星刀は、 何時作られたんですか? 」
「寮出る前に俺トイレって言って三階行ったろ? 」
「ええ、 ……え、 その時に? 」
「三十分程しか、 時間はなかったような気が致しますが? 」
「うん。 だから、 到底魔導書とは言えないような出来になったんだよ。 魔法式も刻めない」
「そう、 ですか」
アカネの質問が終わり、 アカネとカスミの肩に手を置く。
「アカネ、 カスミ。 お前らのことはちゃんと見てる。 だから、 死なない程度に本気でやれ。 本当に危なくなったらすぐに駆けつけてやる。 な? 」
アカネとカスミが同時に頷く。
「OK、 頑張って来い」
「ケンジさん、 さっき皆に囲まれていた時、 デレデレしてませんでした? 」
カッコよく送り出した筈が、 行ったのはカスミだけでアカネは残ってケンジに文句を言っていた。
「いやアカネ、 デレデレしてないし、 早く持ち場に着かないと」
「本当にデレデレしてないんですか? 」
アカネからの追撃が止まりそうにないのですぐに答える。
「本当の本当だ」
「……なら、 良いですけど」
アカネはそう言って、 持ち場へと走って行く。 ちなみに、 カスミがA・B組チーム。 アカネがC・D組チームとなる。
「本来は無駄口を叩かないで、 すぐに持ち場へと行くタイプなんだけどね」
後ろからハノネが声を掛けてくる。
「アカネからしたら、 無駄口では無いってとこかね」
ケンジはその言葉の真意を測りながらもアンヌの号令を待つ。
辺りは一斉に静寂に包まれる。 かすかに、 風の音がするのと遠くから魔物のおぞましい声が聞こえてくる。 魔導長とそれぞれのクラスの担任が、 チームの先頭に立つ。
「任務開始!!」
アンヌのその言葉で、 生徒たちはチームごとに進んで行った。
「さて、 俺はどうするかな……」
ケンジは一応端末の電源を入れ、 マナーモードを解除する。 すぐに通知に反応して動く為だ。
「魔物って、 どんぐらいの大きさなんです? 」
「基本は四メートル〜五メートル程度、 今回はそれよりか小さい三メートル辺りだと見ている」
ケンジの質問にハノネがよどみなく答える。 生徒たちの態度と教師たちの態度に温度差を感じたのはここが理由か。
「なら、なんで緊急任務なんです? 小さいのであれば通常任務でいいのでは? 」
「緊急任務になるのは数が多い場合だね。 今回はおよそ、 七百体。 去年よりも若干数が多い。 しかし、 生徒も今回は多いからね。 恐らく、大丈夫だろう」
ハノネの言葉に若干の不安を感じる。 理由は分からないが、 なんとなく、 この油断が命取りになるような……
「少し、 本気になるか」
ぼそっとそう呟くと、 ケンジは身体の中に住む龍の一体、 六雷火に声を掛ける。
(六雷火、 また頼むよ)
(……あまりにも私を使うと、 君の身体もいずれ)
(今は、 そんなこと言っても意味は無いし、 俺の身体はもう終わってるよ)
(……ふん、 自分の身体はもっと大切にして欲しいものだけどね)
(俺の人生はそんなことを望んでないってところかね)
(……)
ケンジが六雷火の力を解き放つ。 近くにいたハノネから離れた所に教師陣、 そしてアンヌもケンジから発せられる規格外の魔力に眼をむく。
「雷鎧だ、 テシオン体、 俺に力を寄越せええええ! 」
ケンジの言葉により、 制服がメイザーイヴルティーに変わる。
魔力が落ち着いた時、 そこに居たのはしかし、 その姿はアカネに見せ、 実戦テストで皆に見せたものとはまるで違う。
服の色は黒が、 基準からサブの色へと移り、 代わりに黄色が基準になる。 俗に絶対領域と呼ばれる太もも部分が露出し、 へその部分も布が少なくなる。 軽装と言っても差し支えない状態だ。
そして、 普段のケンジの一番の特徴と言える髪の色と眼の色も黄色に変わる。 鬼銃剣龍とは別に小型の銃が二つ、 腰に下げられていた。
「ケンジくん……? 」
ハノネが恐る恐る声を掛ける。
「どうしました? ハノネさん」
だが、 いつもと変わらないケンジの声に安心する。 しかし、 それと同時に自分たちは、 とんでもない化け物を入学させたものだと今更ながら気付かされる。
「ケンジ、 やはりお前はここに入学して正解だったよ」
そこへ、 アンヌが来てケンジに声を掛ける。




