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序章-2

  「……ケ、 ケンジさん? 」


 アカネは死んだと思ったのだろう。 座り込んだまま、自分の手で顔を叩いて確認している。 ケンジはその様子を見て思わず笑ってしまった。


 「な、 なんで笑ってるんですか! 」


 「いや、 お前も普通にしてれば可愛いのになと思ってさ」


 「なっ……! /// 」


 もしかして褒められ慣れてないのだろうか。 顔が真っ赤になってしまっている。


 意外だな、 こんな美少女なら俺だったら毎日見る度に褒めるぞ?


  しかし、 アカネはすぐに異変に気が付く。


 「……そうだ! ルーシアは!? 」


 「あそこに居るよ」


 ケンジが指差した方向には腹を押さえてかがみ込むルーシアの姿があった。


 「な……、 なんで? 」


 「ぐっ……! 私のスピードに着いて来るだと!? 」


 二人は突然のことに驚き、 そしてケンジの方を向いてくる。


 「あのスピードは確かに速いが、 お前はこちらに肉薄する際、 目を瞑っている。 お前自身自分の身体のスピードについて行けて無いんだろ。 それならばこちらがどんな動きをしていても見えないからな。 アカネも光と音で見えてなかったし」


 そう言うとケンジは懐から銃を取り出した。 先端が刀になっている少し長めの銃剣だ。


 「それは…… 」


 アカネはケンジが名前で呼んだことにも気付かずにケンジの事を呆然と見上げてくるが、 ケンジはアカネの頭に手を置いた。


 「アカネ、 少し休んでろ。 後は俺がやるから」


 「え? 」


 魔法使いは異世界の人間ではない。それはそうだ。


 ケンジは二、 三歩前に進むと高らかに叫ぶ!


 「我が体内に流れるテシオンよ! 俺に力を寄越せえええええ!!! 」


 ケンジの身体が光に包まれる。 学校の制服から違う制服に。 それはある種軍隊に似ているものだ。


 違うとすれば色は緑系の物ではなく、 黒と銀を基調としておりファッション性の高いものだという所か。 上半身もローブの様に裾が長い。 その軍服に包まれたケンジの姿がその光を収める。 ケンジの姿を見て二人は驚愕に目を見張る。


 「なっ! メイザーイヴルティー!? 魔法使いにしか召喚できない服をなんで男性が!? 」


 「当たり前だろ、 俺は魔法使いだ」


 「なっ……! 」


 アカネは驚愕のあまり目を見開いている。


 そこまで驚くのか……、 『家』が俺を隠す訳だな。


 「なんで、 男性なのに魔法使いなんですか!? 」


 「その話はまた後でな。 今はアイツだろ? 」


 ルーシアはこちらを警戒して身構えていたがふと、 警戒を緩めると


 「男の魔法使いが居たというのは恐るべき事実だが……、 そうか、 だから私にあの命令が……。 だがしかし、 私のスピードに着いて来れる者は居ない。 そこのアカネとか言う女でさえも私には着いて来れなかった。 ならば、 確かにイレギュラーな存在の男の魔法使いかも知れんが、 本来の魔法使いである女よりも強いということは無いだろう? 」


 命令……? 果たして何処からの命令なのか。 ケンジの頭に浮かんだその疑問をアカネが横から遮る。


 「し、 しかしケンジさんの攻撃は貴女に当たりましたよ!? 」


 「普通にマグレだろ。 私のスピードには絶対に着いて来れない。 これはこのスピードの特性上覆せないものなのだから」


 そう言うとルーシアは今までよりもスピードを上げてこちらに迫る!


 ケンジはそれを紙一重で躱すが、 近くにあったコンビニが崩れた。 そもそもここにコンビニなんかあったのかと今更ながらに気付く。 良く見るといつ生えたのかルーシアの両手には巨大な鉤爪が装備してあった。 あのスピードに巨大な鉤爪か……、 確かに脅威だな。


 「スゲースピードだな。 でも、 対処法が無い訳じゃない」


 「え……? 」


 「ならば! 私のスピードに着いて来い! 」


 アカネは口を開けたまま、 ルーシアは尚もこちらに迫って来る。 ケンジは引き金を引いた。


 「ライトニング・クローガー! 」


 ケンジの放った弾丸は雷が龍の形を象りながらルーシアに肉薄する! そして、 その腹を貫いた。


 「ぐあっ!? 」


 ルーシアは口からも大量に吐血する。 異常な量だ。 ここらの地面一帯を血に染めるほどの……。 恐らく、 死は免れないだろう。


 「なんで……、 今のは? どうしてあのスピードで動く相手に正確に攻撃を与えられるんですか……? 」


 呆然としながらも的確に質問をしてくる辺り、 頭の出来がわかる。


 「攻撃を当てられるのは普通に見えてるからだよ。 今の攻撃は雷の属性。 アカネと同じだ。 雷属性と銃は相性が良いんだよ」


 ルーシアはこちらへの戦意を損なわないままこちらを睨みつけてくる。


 「だと、 しても……! 何故私の姿を捉えられるんだ! 正確に座標がわかっていなければ攻撃なんか当てられない筈だ! 」


 ……もしかして、 気付いてないのだろうか。


 「俺言わなかったか? 」



 『お前はこちらに肉薄する際、 目を瞑っている』と。



 「お前のスピードが本当に捉えられないものなら、 俺にはお前のそんな顔を見る術なんか無い筈だぜ? 」


 「……!」


 どうやら本当に気付いていなかったらしい。 まあ、 確かにこのスピードの特性上そうは思えないだろう。


 「このスピードの特性は、 多分神速と言われるものだろ? 動きを速くするのではなく、 目標の所まで行く時間を短縮する技。 まあ簡単に言うと高速ワープみたいなもんだろ」


 「え? ……それなら、 なんで捉えられるのか更に疑問になりません? 」


 「言葉で説明すると超簡単だよ」


 ケンジはそう言いながら、座り込んだままだったアカネの腰を抱えて立たせる。 少し顔が赤いか? 別に怪我してる訳でも無いだろうに……。 とりあえずケンジは説明を続けることにした。


 「俺にはアイツのスピードを見切る力がある。 だから、 アイツがワープする瞬間と俺に対して攻撃する際の動きのタメの瞬間。 この二つは一瞬だけど完璧に動きが止まるんだよ。 そこを見極めればもう後は雷属性で攻撃するだけ」


 「だから、 何故見切れるんだ! お前はどんな目を持っているんだ!? 」


 あ、 そこが重要なポイントなのか。 見ればさっきからアカネも熱心にケンジの方を見てきている。 ここまでの美少女に注目されれば答えない訳にはいかないだろう。


 「いや、 普通に雷属性の魔法を目に移してるだけだよ。 雷の特性はその速さ。 速さを操るんだか見極められない訳が無い。 速さを見切れる魔法も、 探せばあるもんだよ」


 「目に魔法を……? そんな魔法があるんですか……。 魔法というのはテシオンを身体から排出して相手にダメージを与えたりの効果を発揮する物だと思ってましたが……」


 「テシオンテシオンって言い辛いな。 魔力で良くね? 」


 「え、 だ、 大丈夫ですけど」


 「悪いな。 それと魔力は身体から排出した後に身体の外側に纏わせればいいんだよ。 っと、 大詰めだな」


 ルーシアは身体から流れる血を止めた。 恐らく、 回復系の魔法だろう。 でも失った血は元には戻らない。 次がルーシアの出す最後の技。


 「私はもう死ぬだろうな。 しかし、 お主らは道連れにさせてもらうぞ! 」


 「リンカを何処にやったんだ? 」


 ケンジの問いにルーシアは浅く笑みを浮かべる。


 「あの少女は我々の保護下にある。 助けたければ私を倒した後、 私の仲間を追えばいい」


 「なるほどな」


 とりあえず、 リンカは生きてる。 それは元々わかってた事だ。


 俺らは心が繋がっている。 でも流石に場所はわからなかったな。


 「なら、次で決めてやる」


 「ケンジさん! 」


 アカネが大きな声でケンジを呼ぶ。 そして、 自分の本に対し魔法を行使した。


 「さあ、出て来なさい私の使い魔よ! そして、 私の為にその命を使いなさい! 」


 出てきたのは犬だ。 とは言え、 別にチワワとかそう言うのではなく、とにかくデカかった。 ケンジが乗って走れるぐらいには体格もあった。


 「なんだ? この犬」


 「名前はリニシア。 リニシアを使ってください。 同じ雷の属性なら相乗効果で魔法の効果が上がります」


 「なるほどな、 でも大丈夫」


 ケンジがそう言うとアカネは少し目を伏せたがすぐに


 「っ、 ……いえ! 貴方が大丈夫だろうとリニシアを使ってください! 」


 「そう言われてもな……。 俺にも使い魔みたいなのが居るしな……」


 「え?! 居るんですか!? でも、 魔導書は見つかりませんが……」


 「俺の場合はこの銃剣に魔法を刻みつけてるからな。 もちろん、 その本のタイプの魔導書も持ってるけど。 それに、 俺の使い魔はこの銃剣には居ない」


 「え? 」


 ケンジらが話していると、ルーシアがまたその手の形を変えて、 こちらに手を伸ばして来た。 腕があのスピードでこちらに迫って来る。 アカネは目を瞑り、 ケンジは身体の中に話しかけた。


 (六雷火……、 出番だよ)


 ルーシアの腕をケンジが掴む。 いや、 正確にはケンジの腹から出た物がルーシアの腕を掴んだ。


 「「!? 」」


 二人は絶句する。 それはそうだろう、 ケンジの腹から何か得体の知れない物が飛び出しているのだから。

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