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四章-3

 「なんかニュースでもやってんのかな」


 ケンジが適当にチャンネルを合わせると、 ゴールドクルーズ近辺の森に魔物の反応があったというニュースが流れた。 街の人たちは充分にご注意ください。 といった内容だった。


 (つーことは、 案外明日にはこれが初任務だったりしてな)


 ケンジはそんなことを考えながら、 風呂場にタオル等が無かったことを思い出し洗面所にタオルを置きに行く。


 「まだ入ってないよな? 」


 ケンジは取り敢えずノックして誰も反応しないのを確認してからドアを開けた。 が、


 「……」


 「……え? 」



  アカネが丁度下着を外しているところだった。



  ブラからは豊満な乳房がこぼれ、 綺麗な形と桃色をした乳輪がこれでもかと存在感を放っており、 目を離すことを逆に叱咤するかのようなオーラを感じた。


 (何で反応しなかった!? )


 ケンジは瞬間的にドアの方を向く。 すると昨日は気付かなかったが、 かなりの厚みを持っていることが分かった。 恐らくそのせいで音に気づかなかったのだろう。


 だが、 こんな言い訳は相手からすれば何も意味は無い。 あるのは、 見られた、 そういう事実だけだ。


 「ケ、 ケンジさん〜! 」


 「ちょ、 待っ」


 ケンジは最後の言葉すら言えずそのまま顎へ拳を喰らい吹っ飛ぶ。 丁度そこにカスミもきていたが、 カスミは颯爽と躱し状況を確認。 そしてケンジへと軽蔑の視線を向ける。


 「ケンジさん? 」


 「い、 いやカスミ。 これは故意じゃなくて単なる事故……」


 「私たちに先に風呂に入れと言っておきながら、 お風呂のドアを開けていらっしゃる。 これの何処が事故だと? 」


 何も言えなかった。 と、


 「思ったよりも、 このハプニング早かったな? 」


 その言葉を発したのはここに居ないはずの人で、 しかし居てもおかしくはない人物だった。


 「何でアンヌがここに居る!? 」


 そこに居たのは学園長であり、 本来まだ仕事中のアンヌだった。


 「やあな、 お前らが同棲し始めたって聞いて、 居ても立ってもいられなくなってな」


 「同棲じゃありません! 」


 アカネが抗議の声を上げるもアンヌ、 それをスルーし、


 「んじゃ、 オレはもう寝るわ」


 「あ、 ちょアンヌ待て! 」


 ケンジの制止の声も虚しくアンヌはそのまま二階へ行ってしまった。


 「……」


 「……」


 「……」


 その場に残された三人は少しの間呆然としていたが、 やがて誰ともなく溜息をつき


 「もうお風呂入ってすぐ寝ます……」


 「そうですわね……」


 「あ、 ああ。 それじゃあ」


 ケンジは急いでその場から離れようとして、 そもそもの要件を思い出し、 二人にそれぞれ手ぬぐいとバスタオルを渡した。


 シャンプー等は中にあるし、 二人ともそれぞれのシャンプー等を持ってきていると言っていたので、 すぐにその場から離れる。 その後、 二人が上がってくるとそのまま「おやすみなさい」と一言言って、 二階へと上がっていく。


 「はあ……」


 ケンジは溜息をつくと、 シャワーを浴びに行く。 今日はかなり疲れたというのと、 少し考える・落ち着くという作業が欲しかったため、 湯につかることにした。



 ケンジが寝巻きに着替え、 ベッドで考え事の続きをしている時、 こんこんと部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。 誰だろうか、 アンヌ……ならばノックはしないだろう。


 「すいません……」


 ドアを開け、 部屋に入って来たのはアカネだった。 何故か枕を持っている。


 「アカネ? どうした? もう寝たと思ってたけど」


 「え、 えと、 その」


 顔が赤い、 なにか恥ずかしいことなのだろうか。


 「アカネ? 」


 ケンジがもう一度聞くと


 「い、 一緒に寝ても……良いですか? /// 」


 一瞬固まる。 そういうことに関してすぐに怒っていたアカネから、 そんな言葉が飛び出すとは……。


 「あ、 ああ。 いいよ」


 「し、 失礼します……」


 ベッドのサイズはキングサイズ以上なので充分余裕がある。


 「えと、 なんかあったのか? 」


 「え? 」


 アカネが顔を赤らめながらケンジの方を向く。


 「いや、 アカネがなんの理由もなく、 俺の部屋。 ましてや、 一緒に寝るなんて、 言わないんじゃないかと思って」


 「……何か理由が無いと、 来ちゃダメですか? 」


 アカネがケンジに問う。 その瞳には少しだが、 不安が混じっていた。


 「いや、 全然そんなことは無いよ」


 「……良かった」


 アカネの安心した顔を見て、 ケンジも微笑ましくなる。


 「と言っても、 今回はちゃんと理由があります」


 しかし、 アカネの顔にはまた不安の要素が混じり始める。


 「なに? 」


 「実戦のことです」


 ケンジは意外そうな顔をするが、 初めて会った時に確か、 そんなことを言った気がする。


 「ケンジさんは、 私の魔法の発動スピードが遅いと、 言いました」


 「ああ、 雷にしては遅い。 ってな」


 「私は、 セレスト……魔導長として学校の、 学生の代表として。 そういった弱点があるというのは、 その、 好ましくないというか」


 「魔導長(セレスト)には向いてないって? 」


 ケンジがズバリ問うと、 少し間を置いて小さく頷く。


 「なるほどなあ。 そこまで、 アカネが気にしていたとは思わなかった」


 ケンジが腕組みをして考える。 アカネは、 かなり責任感の強い性格だ。


 しかし、 それは同時に


 「でもな、 そこまで考えすぎてしまう、 自分に責任感を持ち過ぎると、 いつかケガをしてしまうと思う。 それも飛びっきりの」


 ケンジがこれまで生きて、 見てきた人物たちを思い浮かべる。 責任感の強い者たちは全員


 「そんな奴らはみんな身を滅ぼしてる。 それがなんでだか分かるか? 」


 「いえ……」


 「人に頼ろうとしないからさ。 全部一人で背負い込んでしまう。 でも、 その点、 アカネは俺に聞いてきた。 聞いてきてくれた。 その時点で、 俺がこれまで会ってきたそういうような連中とは、 全然違うってのが分かる」


 アカネはケンジをまっすぐ見つめながら話を聞いていた。


 「アカネは、 柔軟に生きることも出来ると思うよ」


 ケンジは腕を組んで考えながら


 「そうだなあ、 雷か。 アカネは無属性魔法を扱う時も、 発動スピードが遅いのか? 」


 「い、 いえ。 雷だけです」


 「そっか。 そういえば、 アカネの魔法は全部、 工夫がしてあったな」


 「は、 はい。 授業で相手に気付かれないように、 自分の魔法を強化して放つのが良いって……」


 なるほど、 確かに。 それは戦闘時では有効的な戦い方だ。 しかし、


 「それって、 相手が魔法使いだった時の戦い方だろ? 」


 「はい、 それが? 」


 「俺らって基本実戦で戦う相手って、 魔物じゃね? 魔物ってそんな知能あるの? 」


 「っ! い、 いいえ無いです。 知能は殆どないと思います。 そ、 そっか。 でも、 学校での試験とか、 そういうところでは? 悪の魔法使い、 フレグランスとか」


 「別に、 強化したことが相手にバレても良いだろ」


 「え? 」


 「自分がどれだけ強いのか相手に見せつけれるし、 威嚇ってのは昔から戦闘では有効な手段だよ」


 ケンジの言葉にアカネは黙って頷く。


 「それに、 悪の魔法使い。 ってのは沢山いるんだろ? だったら、 同じやつに二回当たる可能性もほぼ無いわけだ。 つまり、 強化したことを、 別に無理に隠す必要は無いってことだな」


 アカネは、 目を丸くしながらも安心した顔つきになっていた。 そこには不安の一切の入り道が無くなっていた。


 「なんだか、 安心しました。 そっか、 私そこまで考えられて無かったんだ」


 「だから、 アカネは責任感が強過ぎるんだよ」


 ケンジはアカネの頭を撫でる。 アカネは顔を真っ赤にしながらも


 「ケ、 ケンジさん」


 「ん? なに? 」


 その頬は赤く染まっている。


 「わ、 私が寝るまで頭を撫でて貰ってて良いですか? /// 」


 「お安い御用だ」


 アカネがケンジの胸に頭を預け、 目を瞑った。 ケンジはその頭を撫でながら


 (深夜の運動は今回はいいや)


 と、 久しぶりに熟睡しようと、 ケンジが目を瞑ると、 一気に睡魔に襲われて行った。



 「んっ……」


 ケンジが目を覚ますと、 隣にはアカネが居る。 上半身を起こし、 アカネの寝顔を見るのはそういえば初めてだったな、 と今更ながら気付く。 そのままアカネの寝顔を見ていると目をゆっくりと開く。


 「うんっ……」


 「おはよ、 アカネ」


 「あ、 ケンジさん、 おはようございます」


 学生である二人が朝同じベッドで起きるという状況は、 客観的に見れば宜しくないものなのだが、 二人はそんなの知るか、 と言わんばかりの違和感の無さを醸し出していた。


 二人の安心した表情がそう感じさせるのか、 それとも美男美女だから一つの絵画のように見えるからかは、 定かではない。 ケンジとアカネが暫し見つめ合っていると、


 「ん〜……」


 ケンジの腰辺りの掛け布団がもぞもぞと動く。


 「……まさかな」


 ケンジが掛け布団を勢い良くめくると


 「眩しい……」


 アンヌが居た。 今回はしっかりと寝間着を着ているようだが、 またいつの間に忍び込んだのか……。


 ケンジとアカネはもう一回顔を見合わせ、 お互いに溜め息をついた。



 「そういや、 黄金の航海者(ゴールドクルーズ)って、 夏休みとかって無いのか? 一般的には今の時期って夏休みだと思うけど」


 朝食時、 ケンジ、 アカネ、 カスミにアンヌを加えた四人でテーブルを囲み、 アカネの作った卵焼きを食べながらケンジが質問する。


 「まあ、 無いっちゃ無いな。 どうせみんな寮生活だし、 この黄金の航海者(ゴールドクルーズ)からは出られないしな」


 「? 出られないのか? 」


 ケンジが更に質問する。


 「任務以外では出れないな。 魔法使いはレアだ、 無闇に目のつけない所には出せない。 それに男性に慣れてない生徒も多いからな」


 「過保護な気もするけど、 そういやアカネもそうだったな」


 「ケンジさんは気にしてましたけど、 ここにはそういう生徒も多いんですよ」


 アカネが補足説明をしてくれる。


 「それに、 長期休暇が無い代わりに午後の授業は有りませんの」


 「え、 無いの? 」


 「全部、 部活とかそういった課外活動に当てる時間になりますね」


 「……結構自由なんだな」


 ケンジは黄金の航海者(ゴールドクルーズ)独特のルールに戸惑いながらも、 箸を進めていた。 と、


 「あ、 そういや」


 ふとアンヌが懐から金色の派手派手しい端末を取り出した。 それをケンジに寄越してくる。


 「これは? 」


 「黄金の航海者(ゴールドクルーズ)の生徒に渡している任務とかの時に使う公式端末だな。 それに色々と学園の重要な情報とかを流すし、 任務の際にも連絡とかで使ってもらってるやつだ」


 「私が学園長にケンジさんのことを連絡するのに、 使ったのもこれですよ」


 「あ、 これなのか」


 「あ、 今丁度全校生徒に対する通知が来ましたよ」


 ケンジも渡された端末画面を確認する。 そこにはこう書かれていた。



  【緊急任務 ノースステージ付近の森に魔物が出現 高等部以上の生徒は校舎に入らずグラウンドに至急集合せよ】

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