木片イリュージョニスト
お題 見落としてました
必須要素 叙述トリック
この木片を使ってこれから皆さんにお見せいたしますのは、あるイリュージョンでございます。
というのも。以前は木片ではなくて鉄パイプを使っていたのですけど、それでは死者が出てしまいますゆえに、苦肉の策というやつですよ。
うえっへっへ…気にしない気にしない…え?木にしてるじゃないかって?
じゃあ…パイプにしないパイプにしない…って増々わかんないって?
まあ…なんでもいいじゃないか?
それより…実験台になってくれる人はいませんかねえ?
え?誰もいないとは失敬なやつだね?ここにいるみなさんは全員無料で観覧しているはず…
そっちもただならこっちもただで協力してくんないと…
う~ん…それでもダメとは…じゃあ仕方がない…協力者には謝礼をあげましょう…
途端に手が上がったぞ…我先に我先に…現金な野郎どもだ…なら全員に死んでもらおうか?
おっ冗談冗談…途端に手を引っ込めやがって。
今のは冗談です、1000円あげるから協力してくれ…
おっ…世の中まだまだ捨てたもんじゃないねえ…たった千円で死んでくれるとは…
途端に手を引っ込めやがって…キリがねえ。
じゃあ仕方ない、助手を呼ぼう、お~い、助手~助手の井川ク~ン…
来た来た…このイガワくん、何を隠そうゾンビです…殺しても殺しても生き返る…
おい!何を慌てて逃げてんだ…今のは比喩だよ比喩…文学てもんがわからんのかね君たちは?
それじゃあやってみようか?
まずね、この木片で…
バシイ!!!!!!!
血流!!!
いやいや…ちょっと力を込めすぎましたかな…
次はもう少し控えめに…
バシシシシシシシシ!!!
腸が出ました…
いやあ…これじゃあいけないねえ…イガワくん、いくらなんでも命が足りません…
そういって彼は木片を鋭い包丁に持ち変える…
観客は驚いた顔でそれを眺める…
シュバッシュバッ…
見事な包丁さばきでイガワくんは切られていった…
さあさ皆さんいかがです、この切れ味?
この包丁を使えばまるでプロの板前だ…
穴があいたタイプがたったの3000円、もれなく砥石もついてくるよ!
イガワくん、新鮮だから切り身は食べ放題…
マグロのイガワくんは苦しそうな顔で死んだ。