深海魚をめぐる戦い
1回目、15分。
ワード『気高い経験』
え?この細い綱を渡って歩けと?
そんな無茶をよく押し付けてくれるものだ。
そう言いながらも彼はその一歩を踏み出している。
彼はイエスマン、押されてしまえば押しに弱かったのだ。
今日は強風日。
実は異例の竜巻が発生するらしい、しかもこの崖で。
地上七億mのこの崖で…
え?
地球の身長越えてるだろうって?
物理の壁をそう安安と超えられて敵うものか…
そう言いながらも彼はすでに受け入れ態勢を整えようとしていた。
彼はイエスマン、ノーマンとの直接対決は今日だった。
「うわっははっは」
ノーマンの下品な笑い声が海峡に轟いている…
相変わらずだな。イエスマンは呆れ顔でそう思った。
ノーマンの体長は700メートル、大陸のようである。
ザザザザー!!
海を割って現れている、まるでモーゼのように。
海底にいた深海魚はもうすでに干からびてしまった。
「やめろ!海の幸がかわいそうじゃないか!」
イエスマンはノーマンにだけは手厳しい。
それは、内弁慶の息子が、母ちゃんにだけは荒々しいのと同じこと。
「やかましいわ!海の幸と言ってる時点でお前の負けだぞ!」
「どういう意味だ?」
「白々しいな…俺は確かにこの深海魚どもを蹴散らし皆殺しにはしている、でもな、それをお前らみたいにうまそうな顔をして食い散らかすことなんてないぞ」
「なんだ!意味がわからんぞ」
「ほうほう、そいつは気高いやっちゃ、しかしなあ、お前らはその深海魚をうまいうまいというて食い散らかしているではないか?その時点でおまえの負けだ」
「重複だ!」
「お前。デジャブって知ってるか?」
「はっ…」
イエスマンは転落した…
そして自分がわからなくなる…
イエスマンは本当に負けたのだ。
そして勝者ノーマンは深海魚をうまいうまいといって咀嚼してこういった。
「へへへへ、騙されおって!」