09話ーおっちゃんと交渉
まずは、消耗品を作るべく道具屋に情報収集しに来た。
【調合】のスキルを使おうと<調合・初級>と言ってもうんともすんとも言わねぇ・・・。
おぉ道具屋さん中は結構広いな。
外は商店街によくあるサイズなのに、中はレストランぐらいのサイズがある。
入口側の壁にはベンチみたいな長細い椅子が取り付けられていて、この部屋の半分ぐらいの位置でぶった切るようにカウンターが設置されていた。
カウンターの向こうにいるNPCに話しかけ・・・ようとして気がついた。
おれ、AMOでNPCと話すの初めてじゃね?
やべっ、初対面でいきなり商品の作り方教えてくれっていいのか?
・・・うーん、NPCだしいっか。ダメならダメでも。
どうせならフレンドリーに行くか。
「おっちゃーん、回復薬の作り方教えて欲しいんだけどー」
思いっきし失礼な言い方になった気もするが・・・どうとでもなれ。
「街の道具屋さんにようこそ。何をお求めだ?」
なん・・・・だと・・・。
予想以上に普通のゲームっぽい返しが来た。
なんだ、高性能なAIとか使ってるって聞いてたけどこれならよゆう・・・
「なんてな、冗談だ。わはは。異世界人にこれをやるとチッポがファイヤーボール食らったような顔するのが面白くてな!」
ちっ・・・これは、運営が仕込んだ仕様なのか、このおっちゃんのAIが考えたのかわかんねぇが、たちわりぃな。
ちなみに異世界人とはプレイヤたちのことを指す。
ついでに運営は神の使いだったかな?
「で、回復薬の作り方だっけか?おめぇ調合のスキルは持ってるか?」
「スキルは持ってるけど、作った経験がなくてどうしていいのかわからないから教えて欲しいんだ」
「教えてやってもいいが、条件がある。回復薬の売れ行きが良くて在庫が足りなくなるのが予想されててな、ちょっと回復薬作るバイトしていけ」
<「クエスト:道具屋でバイト」を開始しますか?>
アナウンスが聞こえると同時にオレの前に、クエスト内容が書かれたウィンドウが表示された。
【クエスト】道具屋でバイト
クエスト報酬:薬研・調理鍋
クリア条件:Lv5以上の回復薬を5個納品
失敗条件:店の材料を使い切る
やらない理由も無いのでクエストを開始したいが、開始ボタンがない。
ウィンドウ出すならボタンも付けてほしい。
「ぜひやらせてもらうます」
あぁ最初から素直に敬語使っときゃよかった。
見るからに年上相手にタメ口で話そうとすると敬語交じるんだよなぁ。
NPC相手だしばれねぇよな・・・。
「なんだ、緊張してんのか?そんなんじゃ調合なんてできねぇぞ!リラックスしろって!」
うわぁ、バレてる!てか、なに気を利かしたぜ!見たいなこと言ってんだよ。
くそっ、わかった。
NPCをNPCだと思わねぇ・・・中身はきっと運営なんだ・・・。
AIじゃない。運営が操作してるんだ。そう思えば大丈夫だ・・・それって大丈夫なのか?
中の人は居る。中の人がいないなんて夢も希望もどっかの遊園地の中にしかない!よし。行こう。
箱「ゲイルまさかのコミュ症疑惑」
猫「文字チャットなら(`・ω・´)任せとけってやつだな」