第七話 聖神石
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それでは第七話です
「・・・うぅ・・・ん」
「ん?」
隣でサラが身動いだ感覚で目が覚めたゼオン。あお向けでサラに腕枕をしていている。
「サラ」
ゼオンはサラの頭を撫で、頬をつつく。
その可愛い寝顔についイタズラをしたくなってしまう。
「ん・・・うぅん」
起きるかと思ったが起きなかった。
「爆睡か。まぁ、確かにあれだけやればこうなるわな」
ゼオンは昨日のベッドに移動してからの事を思い出す。
サラは初めてだったにも関わらず、何度も何度もゼオンはいじめてしまった。その疲れからくる爆睡だろう。もう一度頭を撫でて額にキスをしてベッドから出た。
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「・・・ゼオン?」
サラが腰に痛みを感じながら目を覚ますと、隣に居るはずのゼオンの姿がなかった。
「どこに行ったのだ?」
サラは毛布を羽織りゼオンを探しにベッドから降りる。探しながら先に進むとちょっとした広場のような所に出て、そこで上半身裸のゼオンの姿を見つけた。サラは声をかけようとしたが躊躇う。
理由は、ゼオンが何かに集中していて昨日までとは違う雰囲気をまとっていたからだった。
サラは何も言わず、その様子を見守る。
「ふっ!」
突然ゼオンの体がブレ、先程まで立っていた所から離れた場所に高速移動し、蹴りと拳を繰り出して宙返り。更に連続でバック転して跳躍し、空中で数回蹴り技を決めて着地。その後もアクロバティックな動きを繰り返しながら拳や蹴りを繰り出していた。
その華麗な身のこなしにサラは思わず見いってしまっていた。
「・・・三日かけてやっと治るのか。やはり切り札としてしか使えないな」
ゼオンがそう呟きながらサラの居る方へと向かう。
「あれ?起きてたのか」
「起きたら隣に居なくてびっくりしたぞ?」
「ハハハ、すまんな」
サラの頭を撫でる。
「そういえばペナルティーとやらはもう大丈夫なのか?」
「体は軽いし、多分終わったかな?」
「良かった・・・」
サラは安堵の表情をゼオンに見せた。そこでゼオンはサラに心配をかけてしまっていたんだと、改めて理解すると同時に、会って間もない奴をそこまで心配するんだなと心の中で苦笑する。
尤も、自身もその会って間もない者を抱いているので人の事は言えない。
「体も動くし、そろそろここを出るか?」
「後一日くらい休んでいかないか?治っていきなりは流石にまだ心配だ」
「大丈夫だ。それに迷宮をでてすぐに何かと戦わないといけないってわけでもないし、心配ない」
「だが」
「・・・わかったよ。あと一日ここにいよう。サラの力も見たいしな」
「私の力?」
「そう。サラのスキルとか魔法とか、得意な戦い方とかな」
サラは神獣であり、かなり強い存在であることは分かっている。しかしどれほど強いのか、得意分野は何なのか、苦手分野は何なのか。パートナーとして、共に過ごす者として、連携をとる者としてある程度は把握しておきたいのだ。
「じゃあ、まずは魔法からやっていこうか?」
「いや、実演する必要はないよ。スキルで見れる」
「?そうか」
ゼオンはスキル「鑑定」を発動し、サラのステータスを確認する。
名前:サラ
性別:女
種族:神獣「白天狼」
主:ゼオン・マークス
神力:「天空の神力」「光の神力」「闇の神力」「炎の神力」「氷の神力」「雷の神力」「地の神力」「風の神力」
スキル:「人化」「獣化」「獣人化」「威圧」「家事」「料理」「自己再生」「自己蘇生」「神力高速回復」「神力変換」「魔力供給」「神足」「空走」
神技:「神獣の鉄槌」「神獣の怒号」「神力混合」
称号:「神に使命を与えられし者」「相思相愛」
中々に凄かった。
「え?神力?神技?」
「どうしたのだ?」
ゼオンの驚きにサラは首を傾げる。
「だから、神力と神技って見たことないんだけど?」
「あぁ、それか。我々神獣や神なら皆持っている力だ」
神力とは人間たちで言う魔力なのだが、魔力よりも遥かに強大で、人知を越える力だという。魔力と神力にはどれ程の差があるのか、簡単に説明すると。魔力の消費が凄まじく、人によっては一発放つだけで魔力切れを起こす最上級魔法を、初級魔法放つかの如く、手軽に何発も放てる程だ。
神技に至ってはスキルが神の技になったようなものだ。
「その神力を見せてもらうことって出来るか?」
「別に構わんが、威力さえ抑えれば普通の魔法と見た目は変わらんぞ?」
「1度どんなものが確認しておきたいんだ」
「そうか、ならいくぞ?」
サラは手を前にかざしてそれぞれの属性の神力を放ち始めた。
確かに見た目は普通の魔法と何ら変わりはなかった。しかし、威力が段違いだ。
「格闘は?」
「近接はまぁ、出来なくはないがあまりやらんな」
「なんでまた?」
「すまん、人の姿ではって意味だ」
「?」
「人の姿は神力を扱いやすくてな。逆に獣の姿は人の姿よりも安定した素早い動きが出来るから、それを活かした戦いをやっていたな」
成る程なとゼオンは納得する。
それから少し考えて、連携の為に何か特別なことをする必要は無しと結論付けた。
「ゼオンはどんな戦い方をするんだ?」
「俺?」
唐突な質問だったが、さっきので特にすることも無くなったので「ガン=カタ」を少し実演しながら説明し、相手によってはフリューゲルではなくターバンを使っての近接戦闘を行うことも説明した。
その間サラは目をキラキラと輝かせながら話を聞き、最後には自分にも出来るかと問いかけてきた。
やりたいのかと聞くと。
「ゼオンはそれで近接攻撃がメインで時々中遠距離だから、私はそれを自分用に特化させてみたいと思ってな?」
とのこと。
俺がアレンジしたものを更にアレンジするのかと内申ツッコミを入れたが、戦法の幅は広げておくべきだと思い、軽いレクチャーを施した。
しかし、サラは神獣だからなのか、センスがいいのか、勘が鋭いからなのか、はたまた全部なのか。レクチャーしたことをその場である程度飲み込んでしまった。
それがあまりにも楽しくて、ゼオン自身も前世の知識を元にあらゆるアドバイスをしていき、迷宮の滞在日程を延ばしてやり込んだ結果、「ガン=カタ」とは全く異なるサラ(人間体)専用の格闘術が編み出された。
それは、敢えて攻撃の透きを与えて攻撃させ、それを流す、或いは攻撃の瞬間の隙をついて一撃を与える。所謂、カウンター攻撃と、神力をメインにした戦いをしたと思えば次の瞬間には格闘がメインの白兵戦が展開されるという変幻自在の変則格闘術だ。
「はぁっ!!」
「っとぉ。せいっ!」
大広間でサラの新しい戦法の調整と確認を兼ねての組み手を行っていた。
ゼオンの回し蹴りを後方宙返りで距離をとりつつ回避し、着地と同時に炎と雷が混ざった神力が地面を走るように放たれた。
「そんなやり方まであんの・・・な!」
跳躍してそれを回避し、サラに肉薄しようとしたが地面を走る神力が立ち上がり、ゼオンを背後から襲った。しかし、そうなることを予期していたかのようにフリューゲルを抜き、それを撃ち抜き相殺した。サラは神力に気を取られている隙をつくように、光の神力を右手に纏い、爪のように変化させてゼオンに斬りかかる。
「ま、そう来るわな」
ゼオンは空跳で回避した。
「空跳は空中を跳ぶが、私の空走は空中を走る!」
直後サラは空中に足場があるかのように走り、ゼオンに迫る。
「確かに空走は空跳より自在に動けるかも知れないが」
ゼオンは空中を何度も蹴り、ジグザグに近い気道を描きながら、サラを翻弄した。
「空跳は速い」
ゼオンは拳をサラの背中に寸止めで構える。
「もう少し技を磨いたが良いのかな?」
「いや、充分だよ。俺も少し本気を出してしまったし」
「そうか」
組み手が終った体勢のまま話をする二人。ゼオンの言葉に少し嬉しそうに笑う。
「よし、迷宮を出よう」
「そうだな。私の為にありがとう」
「気にすることは無いさ。俺も楽しかったよ」
二人は転移魔法陣が設置されている部屋、「神の間」へと向かった。
しかし
「ん?おかしいな」
「ゼオン?どうした?」
神の間に入るや否や、足を止めて顔をしかめ、何やら呟くゼオンに疑問を問いかける。
「転移魔法陣が無い」
「なに?」
正確には消されている。
「じゃあ、出られないのか?」
「出られないことも無いが、大変だし誰もやった事はないし、可能かも分からんな」
「それって迷宮を壊して脱出するって言うんじゃないだろうな?」
「まさか。それは流石に難しい」
出来ないことではないんだな・・・
サラはそう思わずにはいられなかった。
「じゃあどうするんだ?」
「迷宮を逆走するってところか」
「ぎゃ・・・可能なのか?」
顔をひきつらせるサラ。
「誰もやった事がないから、可能か分からん」
「ていうか、そんな発想持ったのゼオンくらいではないか?」
「そうか?」
サラはまさか自分の主がこんなぶっ飛んだ発想を持つ男だとは思わなかったとため息をついた。
しかしその様子はどこか楽しそうだ。
そうしてま周りを見渡してみるとある物がサラの視界に入った。
「あれは・・・」
サラは見つけたそれが何なのかすぐに思い出した。
「聖神石だ、ゼオン!聖神石があったぞ!」
「その聖神石ってのは?」
「知らないのか?聖神石は魔力を込めることで神と対話ができるんだ。石に触れて魔力を込めてみろ」
ゼオンは聖神石と呼ばれた石に手を触れた。
石の大きさはゼオンの腰程まであり、何か紋様が刻まれている。
そんな石に魔力を込めると、触れている所からオレンジ色の炎にも似た光が広がっていき、神聖石全体に行き渡る。
そして
バウッ!
蒼白い一直線の光が放たれ、ゼオンとサラの背後に伸びていく。そのひ光は徐々に人の形を作っていった。
「我の試練を乗り越えし者は汝か?」
低く渋い声が響き、それと同時にその姿が鮮明になった。
髭をはやした渋い、オジサマとか言われそうな男がそこに存在した。