第四十四話 兄貴
お久しぶりです
またかなり感覚を空けてしまいました
すみません
最強の迷宮攻略者
第四十四話をどうぞ!
「ルークって弟子入り前から強かったんだ・・・」
ゼオンを相手に引き分けにまで持っていったルークの当時からの強さを知ったメリアは呟く。
「ルークはあの頃から、力だけは強かったからな」
今はその怪力に更に磨きが掛かっていると続ける。
「あんな大きくて重い剣を振り回してたらね・・・」
微妙に遠い目をするメリアの頭に浮かぶのは、今まで見てきたルークの戦う姿であった。
戦場で馬を斬ることを目的に作られた斬馬剣という重厚な大剣を易々と振り回して敵をぶった斬り、それだけでなく片手で扱ってみせることもあったのだ。前に1度、どれくらい重いのか気になったメリアは持たせてもらったことがあったのだが、その重量は両手でも持ち上げるのは困難だったのを覚えている。
その様子を見て笑いながら片手でひょいっと持ち上げて背中に納めるルークを見てちょっとムカついたのは内緒。
「何を話しとるのかと思ったら、ワシの話か?」
いつの間にか交代の時間になっていたのか、ルークとサラが起きて来ていた。
「まぁ、そんなところだな。お前がオヤジに弟子入りした時の話をしていた」
「なっ!何故そんな話を!・・・ん?前にもせんかったか?」
ルークは、はて?と顎に手を置き首を傾げる。
「うん、はじめてルークに会った時にも聞いたけど。あの時はゼオンと一緒に修行してた時期があったって聞いたよ?」
それを聞いたルークは、だったら今さら話すこともなかろう!?
と、少々たじろぎ気味である。
「なんでそんなに動揺してるの?」
「弟子入り当初の自分の行動が恥ずかしいから、事細かに聞かれたくないだけだろ?」
「おっ!」
「え?」
弟子入りした当初、ゼオンに対しては突っ掛かってばかりだったルークにとって、その時の行動は軽く黒歴史になっている。
「も、もうええじゃろ!?兄貴もメリアもはよ寝んか!」
早く話を切り上げたいルークは思わず叫び、サラから伯爵とセバスが起きるぞ?とイタズラっぽく突っ込みを入れられる。
「んじゃ、後はよろしくな」
最後にちょっと楽しめた、とテントに入っていくゼオン。
そして、メリアもあくびをしながらテントの中へと姿を消し、サラと二人きりになったルークは。
「むぅ・・・・」
と、なんとも言えない声を漏らす。
「フフッ、ゼオンとメリアはお前の昔話を楽しんでいたようだから、私もゼオンの昔話を聞きたいところだ」
「やはりそういう流れになるんじゃな」
「ゼオンに突っ掛かっていたという話を聞かせて貰おうか」
「姐御・・・それは勘弁して頂きたいんじゃが・・・」
「なんだ?そんなに話したくないことなのか?」
「い、いや・・・・」
風になびいく、肩程で切り揃えられた白く美しい髪を押さえながら問いかけるサラに、ルークは何処と無く神々しさを感じて言葉を詰まらせる。
ルークはたまに思う。時折見せるサラの神々しい雰囲気はなんなのかと。魔法の技術に長けているだけでなく、魔法使いとは思えない身体能力の高さと格闘能力を持っている女性だ。それだけでなく、自らの兄貴分であるゼオンと恋仲の関係にあるため、ただの女ではないことは確信している。
普通の女がゼオンに着いていけると思えないからだ。
だからこそ、サラのそういった部分に尊敬と敬意を持って「姐御」と呼んでいるのである。
ルークは軽く咳払いをして、言葉を詰まらせた事を誤魔化し。
「話したくないというより、あの時の自分の行いが恥ずかしいんじゃ」
そう言って、ルークは話を始める。
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ルークがガインの弟子となって1週間が経った。
この1週間、ガインの息子と聞いているゼオンを見ていたルークは、彼のことが気に入らなかった。
その理由は、自分は約1ヶ月、ひたすらガインに弟子にしてくれと頼み込み続け、やっと弟子になれた。もちろん、出会って直ぐにガインに斬り掛かったことが弟子入りを困難にさせたことは理解している。
それに対しゼオンはガインの息子というだけでその教えを受け、これまで自力で己を鍛えて来たルークと引き分けたのだ。しかも、偶然拾われた拾い子というのだから余計に気に食わない。
だから
「ゼオン、ルーク、どっちでもいい。今晩の食糧の調達に行ってこい」
「んじゃ、俺が・・・」
「ワシが行く。お前はその辺で枯れ木でも拾っておれ」
ゼオンには突っ掛かってばかりだった。
さっさと獲物を探しに行ったルークを見送ったガインは言う。
「お前ら、喧嘩でもしてんの?」
「なわけねぇだろ。あいつがオヤジの弟子になってからずっとだ」
「ふーむ・・・まぁいい。それじゃ、お前はルークの言った通り枯れ木を集めてきてくれ」
「へいへい」
それからというもの、ルークは何かとゼオンには突っ掛かっかるという日々が続く。
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「兄貴は特に仕返しのような事もしてこなかったからのう。それが余計に腹立たしかったんじゃ」
「精神的には既にゼオンが大人ということか」
当時の事を恥ずかしく思うルークの心を抉るツッコミがサラから放たれる。
「ぬぅ・・・あの時のワシはかなり未熟だったと反省しとる・・・」
「フフッ、私も未熟だった頃があるのだ。そう恥じることはないさ」
「姐御・・・」
「それで?どんな切っ掛けがあって、お前はゼオンを兄と呼ぶようになったんだ?」
「それはじゃな」
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「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
見晴らしの良い草原。
怒号と共に身の丈を越える斬馬剣を大上段から振り下ろすルーク。
「ふむ」
「ぬお!?」
それを素手で受け流して見せたのは、白銀の髪を一纏めにし、髪と同じ色の髭を生やした男、ガインである。
「くっ!・・・・もういっちょぉぉぉぉぉ!!!」
受け流され、地面に食い込んだ斬馬剣を引き戻し、横凪ぎの一撃を加えようとするが。
ガキィィィィィィィン!!!!
いつの間にか手にしていた剣で、それは受け止められる。
「っ!」
ガインの持つ剣は特殊な剣で、普段は柄だけの状態だが、その柄に魔力を込めると、込められた魔力を凝固させて刃を形成するアーティファクト。
所謂、魔剣である。
「段々と良くはなってきているんだがな。まだまだ力任せにしか剣を振れていない。そんなんじゃ疲れるだけだぞ」
「ぬお!?」
言いながら受け止めた斬馬剣を弾き返えされ、バランスを崩すルーク。
「・・・・もう少し、下半身も鍛えたが良いな」
「はぁ、はぁ・ ・・・はい」
肩で息をしながら答えるルーク。先程の指摘の通り、腕力に任せて剣を振っているために、力の効率が悪くなり疲労しやすいのが今のルークの課題であった。
「腕だけを使っているから余計な力も入るし、力任せに振らないといけなくなるんだと思うんだが」
一旦休憩となった所に、ガインとルークの組み手の様子を見ていたゼオンが助言する。
「・・・・フン、どうも」
ルークが弟子入りしてから半年が経った今もルークはゼオンの事が気に食わず、こうして助言されても素直の受け入れることはできずにいた。
「それと、構え方も肩に担ぐようにするだけでも余計な力を使わずにすむ」
「そんくらい言われなくとも分かっとる。黙っておれ」
突っ掛かってこられても、ゼオンの方が前世の記憶がある分、精神年齢は大人であるため我慢はできる。
しかし、今回は流石に顔をしかめる。
「分かってるんなら、実践してるはずだよな。ホントに分かってんのか?」
「・・・・なんじゃと?」
ルークはゼオンの胸ぐらを掴んで睨み、ゼオンもそれに対抗して睨み返す。
「俺に言われなくても分かってるんだよな?だったら言われる前からやっとけよ」
「こんの!」
バキッ!!
ルークの怒りに任せた拳がゼオンの頬を捉えた。
「ぐっ・・・・てめぇ!」
殴り飛ばされたゼオンは血の混じった唾を吐き、ルークへと肉薄し。
バキィッ!!
お返しと言わんばかりに殴り返す。
「んぐぅっ!・・・・貴様ぁ!!!」
ドゴッ!
ガッ!!
バキッ!!
ゴッ!
お互いに譲らない殴り合いが続く。
「ワシはぁ!」
ガッ!!
「貴様がぁ!!」
ゴッ!!
「気に食わんのじゃぁ!!!」
バキィッ!!
「ぐっ!・・・・お前に!」
ドゴォッ!
「そこまで嫌われる!!」
ガッ!ゴッ!!
「覚えはねぇ!!!」
ボゴォッ!!
「・・・・かはっ!!」
本気の殴り合いが続き、次第に取っ組み合いへと発展していく。
そしてとうとう、ルークが背中に納めていた斬馬剣を抜き、ゼオンへと向ける。
「どういうつもりだ」
「ふぅ、ふぅ・・・・なんじゃ?怖じ気づいたんか?」
「お前ら・・・・」
暫くその様子を眺めていたガインは、ゼオンとルークの頭を掴んで。
「いい加減にしろ!!!」
ズドォォォォッ!!!!!
「ンブッ!!」
「バッ!!!」
地面へと叩き付けて無理矢理仲裁する。
「罰として、今夜は二人とも一晩中起きて見張りだ!!」
「うげっ!」
「ぬ!?」
この罰を受けたのもお前のせいだと互いに睨み合い。
ゴチッ!!
ガインの拳骨が2人の脳天に炸裂した
◇◇◇
その晩、ゼオンとルークは言われた通り二人で見張り番をしていた。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
互いに無言のまま時間だけが過ぎていき、パチパチと暖と灯り確保の為の焚き火の音だけが鳴り続けるのみであった。そこ気まずさというものはなく、ただただ互いに壁を作り、必要以上には関わらないという空気だけが感じられた。
しかし、それもずっとは続かず。
「何か来てんな、盗賊か?」
気配察知のスキルで何者かの接近に気づいたゼオンが呟く。
「どっちじゃ」
「あっち」
ルークの問いかけに顎でしゃくって簡潔に答え、それを受け取ったルークは斬馬剣を担いで立ち上がる。
「1人で行く気か?」
「ワシだけで充分じゃ」
お前は付いて来るなという威圧を込めての発言。
「おい待て、1人では危け・・・・」
ゼオンの言葉が途中で止まる、否、止められる。
喉元に突き付けられた斬馬剣によって。
「ワシはお前が嫌いと言うたはずじゃ。師匠の子だからと、無条件で師匠の教えを受けられるお前がのう」
「なるほどな」
ここで初めて、ルークの口から自分を嫌ったいる理由が語られ、ゼオンは納得した。そんなことでかよ・・・と。
しかし、それは口にはしない。彼にとってもっと重要な事があったから。
それは。
「で、これはどういうつもりだ?」
自らの喉元に突き付けられた斬馬剣を指差す。
「ハッ!なんじゃ、ビビったのか?」
ルークはゼオンの喉元へと突き付けていた斬馬剣を引き戻して、笑うように言う。
「お前はそこでじっとしておれ。近付いて来よる奴らはワシが片付ける」
斬馬剣を担いで茂みの中へと入っていくルークを、ゼオンは何も言わずに見送るだけだった。
◇◇◇
茂みの中を暫く歩き、ルークは何者かの気配を感じ取り、それと同時に囲まれてしまう。
その数は30を越える
「お前らじゃな?ワシらのキャンプに近付いとったんは」
ルークの問いに盗賊達は小さく笑う。
「なんだよ、どんな奴らが居るのかと思ったらガキか。こりゃ期待出来ねぇな」
「だが、ガキでも奴隷として売れば金にはなるぜ」
「おいガキ、お前の他にはどんなのがい・・・・」
ゲスな笑みを浮かべた盗賊が言い終わる前に、ルークは盗賊へと肉薄し、その頭を斬り飛ばした。
「このガキ!!やりやがった!!」
「ちぃ!てめぇらやってしまえ!」
盗賊達はルークへと一斉に襲い掛かる
「掛かって来いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ルークは叫びながら、その怪力にものを言わせて横凪ぎに一閃。3人の盗賊を腕力と斬馬剣の重さで吹き飛ばし、直後に構え直して上段からの振り下ろしで1人を叩き斬る。
「こ!このガキ!強えぞ!!」
「怯むんじゃねぇ!強えのはあの武器だ!こっちは人数もいる。長期戦に持ち込みゃあオレたちの勝ちだ!」
盗賊の頭とおぼしき男が瞬時に指示を出し、盗賊達は無闇には突っ込まず、ルークに剣を振らせては距離を取るという戦法へと切り替える。
「・・・くそっ!こやつら!」
ここでルークの無駄な力を入れて剣を振る癖と、それによって疲労しやすいという課題が、ルークの足を引っ張り始める。
「今だ!」
疲労によって、剣の振りが遅くなり、フラついてしまった一瞬の隙を逃さず、盗賊達の手によって取り押さえられてしまう。
「くっそ!」
拘束を解こうとするも、力が入らず振りほどけないルークはその悔しさに奥歯を噛み締める。
「その腕力は中々のもんだからなぁ!それでいてまだガキだ。労働奴隷か戦闘奴隷として高く売れるぜぇ」
「他のやつらもとっとと捕まえようぜ!」
ルークを押さえたことで勝ちを確信した盗賊達は、儲けた金を何に使うかという話までし始める。
「あー・・・喜んでるとこわるいんだけど、勝ちを確信するにゃあ、まだ早いと思うぜ?」
「「「「!!!」」」」
自分達のすぐ近くでした声に、一同は驚きに染まる。
その声の正体は。
「ゼ・・・ゼオン・・・・何しに来た!」
「何しにって、お前もオヤジの弟子なんだ。見捨てる訳にもいかんだろ。お前を助けるついでにコイツらを片付ける」
「あぁ?誰を片付けるって?」
ゼオンの言葉に反応したのは盗賊だった。彼らからすればあまりにも舐めた発言なのだから当たり前だろう。
「お前らを片付けるつってんだよ」
「おぉっと待ちなぁ。一歩でも動いたら首が体とお別れすることになんぞ?」
ヒヒヒッと笑いながらゼオンの首に剣を突き付ける盗賊に、ゼオンは。
「これはただの脅しじゃねぇよな?」
「・・・あ?」
「こうして刃向けてんだ、覚悟は出来てるんだよな?」
「何を言って・・・」
刹那、ゼオンの首に剣を突き付けていた盗賊が崩れ落ちる。
「人に刃を向けて良いのは、刃を向けられる覚悟がある者だけだ」
その言葉と共に発せられた気迫は、ルークでさえも息を飲んでしまう。
盗賊達はそれを払うようにゼオンへと襲い掛かる。
が、その尽くをいつの間にか抜いていた剣によって斬り伏せられてしまう。
数で押さえ込もうと、次々に襲い掛かるが、ゼオンはその全てを最小限の動きでかわし、斬り付けていき、瞬く間に盗賊達の数は半数以下となってしまう。
『人に刃を向けて良いのは、刃を向けられる覚悟がある者だけだ』
この言葉がルークの中で反響し続ける。
『これはどういうつもりだ?』
昼間の喧嘩の時と盗賊迎撃前の2回、ルークはゼオンに斬馬剣を向け、その度に言われた台詞である。
自分が刃を向けた時、ゼオンは決して自らの剣を抜く素振りすらも見せなかった。
刃は決して己の力の誇示や脅しの道具ではなく、相手の命を奪う為のもの。
ルークは先程の台詞を噛み締める。
そして、反省する。
自分はゼオンという男をちゃんと見てはいなかったんだと。
そして、惚れる。
嫉妬で突っ掛かってばかりだった自分に、それでも助言を与え、今こうして助けてくれているゼオンという男の度量の広さに。
ふと見れば、ゼオンの背後に迫る1つの影。
「うおおおおおおおお!!!」
ルークは飛び出し、斬馬剣の一振りでゼオンを背後から襲わんとしていた盗賊を斬り飛ばし、ゼオンと背中合わせになる。
「・・・・ゼオン、今まですまんかった」
「ハッ、そういうのはこれを片付けてからだ」
二人は同時にに踏み込み、盗賊へと斬り掛かる。
それから、盗賊が逃げるの余地もなく全滅するまで、そう時間はかからなかった。
◇◇◇
ゼオンとルークの眼前に広がる、盗賊達だった死体。
「さーて、コイツら1ヶ所に纏めて燃やすぞ。手伝え」
「お、おう・・・」
二人は黙々と盗賊達の死体を1ヶ所に集める作業を始めるが、無言で作業は続き、時間だけがまた過ぎていく。今度は壁ではなく、気まずさという空気が流れていた。
とは言っても、ルークが一方的に気まずさを感じているだけなのだが、それをなんとなく察したゼオンは口を開く。
「・・・で?」
「ぬ?」
「さっき何か言ってたろ」
「あ、あぁ・・・その・・・・今まですまんかった・・・・」
さっきは戦いの中だった為に、勢いのまま言えた謝罪の言葉だったが、今はその勢いも無く、口ごもった末にその言葉を絞り出す。
「ワシはあれだけ頼み込んで、やっと弟子にしてもらえたのに、ゼオンは師匠の子供というだけでその教えを受けている。それが気に食わんくて、いや・・・・羨ましかったんじゃ」
「それであんだけ突っ掛かって来てたんだな」
「う・・・うむ・・・・それにお前に剣を突き付けたこともじゃ。すまん」
「まぁ、いいじゃねぇか。終わったことだ」
「・・・・は?」
あっさりと許された事に間の抜けた声を出してしまうルークは、またもゼオンの懐の深を目の当たりにすることとなり、完全に惚れ込んでしまう。
「ゼオン!」
「うお!?」
急に大声で呼ばれたことで、今度はゼオンが間の抜けた声を発してしまう番となった。
「あんたのこと!兄貴と呼ばせてくれ!!」
「・・・・はぁ・・・・好きにしろ」
ゼオンとルークの兄貴分、弟分の関係が成立した瞬間であった。
そしてその様子を木の影から密かに伺っていた人物は、フッと短く笑い、月明かりに照らされて輝く銀の髪をなびかせながら、テントへと戻るのであった。
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「これが、ワシが兄貴を兄貴と呼ぶ理由じゃ」
話を終え、水を口に含んで乾いた喉を潤すルークは染々と言った。
「兄貴は本当に懐が広いんじゃ」
「フフッ、優しい男なのは昔からということか」
「敵に対しては全く容赦がないがのう!」
ガハハと笑うルークの目に、一筋の日差しが入る。
「お二人とも、おはようございます」
「セバスか、おはよう」
「よく寝れたかのう?」
「お陰様で。朝食の準備の前に紅茶をお入れいたしましょう」
ゼオンが起き、メリアが起きて、セバスがマウンティス伯爵を起こして朝食を取り、王都へ向けて再び出発するのであった