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第四十三話 昔話

お久しぶりです!

モリータです!


先日、気分転換執筆として「魔剣士が行く」の連載を始めました!


気が向いたら是非お立ち寄り下さい!


というわけで第四十三話をどうぞ!

夜も深まる中、焚き火を前に座る二つの影。


1つは火の明かりを頼りに自らの愛刀の手入れをする赤い髪をポニーテールで纏めた女性、メリア。もう1つは、これまで手に入れた素材で何やら武器を作っている、全身黒姿の男、ゼオン。


「・・・お、二の刻の方角に何かいるな。これはゴブリンか。メリア、行ってこい」

「ちょっ!アタシ!?」


ゴスッ!


「あう・・・・」

「元々何故お前が俺らと行動してるのか思い出したか?」

「はい」


メリアは渋々接近してきたゴブリンを倒しにいく。


「ゼオンってアタシの扱い雑じゃない?」


ゴブリン20体程を相手にして帰って来たメリアは早々に愚痴る。


「そうか?」

「むしろ嫌われてるんじゃないかってレベルよ」

「そりゃあな、お前のおかげでサラとの二人きりの時間が減ったわけだからな。はやく自立しろと思ってる」


「・・・・」


確かに、ゼオンは元々サラと二人で活動しており、そこに自分が割って入っている。そう考えればそう思われていたって仕方がない。これまでゼオンとサラの関係の深さを見てきてそれを実感している。


もしかしたら鬱陶しく思われているかもしれないと考えていた。そして今、それを正面から言われた。


分かってはいてもショックだ。


「なに真に受けてんだよ」

「へ?」

「単純にお前で遊ぶのが楽しいから扱いが雑なだけだ。嫌いだったら口も聞かないし、どっかのタイミングで魔物の餌にでもしてるだろ」

「・・・そっか」


それから少しの沈黙が流れ、聞こえるのはゼオンが武器を製作しているカチャカチャとした音だけであった。


「・・・あぁ、そういえばメリア」

「な、なに?」


唐突に口を開いたゼオンに驚くメリア、一緒に居て沈黙してなんとなく気まずさを感じていたところだったために尚更だった。


「ルークとは何か進展あったのか?」

「っ!」


メリアは一瞬で顔を真っ赤にし、ひと跳びでゼオンから距離を取った。キュウリを見て飛び上がった猫の如き素早さだった。


「・・・その動き、実戦でもやれたらいいのにな」


結構マジな呟きだった。


「ちょちょちょちょ!!いきなり何言い出すの!?」

「おい、もう少し声抑えろ。サラとルーク(ふたり)を起こすつもりか?」

「え、あ・・・ご、ごめん」


動揺しすぎじゃね?と思ってしまう程に言葉が詰まりまくっているのを内心楽しむゼオンであった。


「んで?どうなんだ?」

「あ・・・えと・・・・お・・・・」

「お?」

「お、おつ・・・おつつつ・・・」

「・・・・・・・」

「おつ、お付き合い!してます!」


めちゃくちゃ詰まった末にやっと絞り出した、付き合っているという言葉。その言葉を聞いたゼオンは。


「そうか」


と呟くだけだった。そこには、なんとなく嬉しいという気持ちがある。ゼオンにとってルークは弟弟子であり、短い期間ではあったが共に修行した仲であり、家族の様な関係となっている。ルークがゼオンの事を兄貴と呼び慕っているように、ゼオンもまた、ルークの事を弟分として信頼していた。


そしてメリアとも、短い期間だがこれまで鍛えて来ており、その実力は着々と伸びてきている。その成長を見ることにある種の楽しみをおぼえていた。ルークが弟分ならメリアに対しては妹のような感情を・・・


「いや、こんなのが妹ってのはやっぱゴメンだな」

「え、なに?」

「なんでもねぇ」


とは言っても、メリアはサラと仲良くしてくれているし、そこは感謝している。それに、見てると姉妹みたいなんだよなと内心呟く。


「ていうか、ゼオンから聞いておいて「そうか」で済ませるのおかしくない!?」

「ん?あぁワルいワルい。ちょっと思うところがあってな」

「思うところ?」


ゼオンの言葉に反対でもされているのかと不安になりつい聞き返してしまう。それを察したゼオンはすぐに言い方を訂正する。


「あ〜、別にそういう意味の思うところじゃない。アイツにもとうとう女ができたのかと思うとな。昔っからの付き合いだから尚更な」

「・・・そういえば、ゼオンとルークの出会いの話とかちゃんと聞いたことなかったな」

「いや聞いてどうすんだよ」

「え〜いいじゃん。その時の英雄ガインの話も聞きたいし!」

「そっちが本命だろ」


あ、バレた?と笑って誤魔化すメリア。だが、メリアはそういう異名持ちの冒険者の話だったり英雄譚だったり冒険譚だったりを聞くのが好きで、そういった人物の事を調べるのが一種の趣味になっている。


「まぁ、いいけど。アイツと会ったのは大都市スリッド近くだったな」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー



「そこのお方!ガイン・マークスとお見受けする!」


大都市スリッドへと入ろうとする人達が防壁門前に列を作っているその近くで、そんな声をあげる者がいた。その人物はまだ子供であり、赤い眼が特徴的だった。背中には自身の身長を超えるサイズの斬馬剣を背負っており、それを見た周りの冒険者や馬車の護衛を行っている者など、戦いに精通している者達は、ガキが見栄を張ってやがると笑う。


「・・・お前は?」


それに答えたのは、白銀の髪を後頭部で一纏めにし、同じ色の髭を生やした、渋くも凛とした印象を受ける顔立ちの男、ガイン・マークス。装備は胸当て、籠手、脛当てという最小限の防具と、両腰には剣の柄のようなもの。その上からローブを羽織って装備を隠している。


「・・・ワシはルーク・バレスという(もん)じゃ」

「その訛り方・・・もしかして、東に方面の人間か?」

「そうじゃ。ケルディード国の者じゃ」


ケルディード国、東にある国の1つである。噂で聞く極東の国とよく勘違いされるが、極東にあるという日の国とは別の国である。


「ケルディードの人間が、俺になんの用だ?」

「銀狼ガインの名はケルディードにも届いとる。ワシと勝負してもらう!!」


ノーとは言わせんとばかりに背中の斬馬剣を抜き、ガインへと斬り掛かった。


「・・・ほう」


ただ一言、そう声を漏らすだけで特に慌てた様子もなく、武器を構えることもなく一歩前へと踏み出す。次の瞬間、ルークの持ち手を右手で抑えて斬馬剣を振り抜く動作を止め、そのまま左の拳を腹へと叩き込む。


「ぐふぅ!!」


この一撃でルークはあっさり沈んでしまった。


「か・・・かはっ!」

「少年、まだやるか?」

「・・・・・」

「俺に挑むのならもっと鍛練を積んでからにするんだな、少年よ。行くぞ、ゼオン」

「え?あ、あぁ」


その場に残されたルークは殴られた腹の痛みとそれに伴う苦しさが治まるのをまって立ち上がる。


「やはり・・・強い。そしてあの早技・・・銀狼ガイン・マークス・・・ワシは決めたぞ。弟子にしてもらう!」


そのままルークは手続きを済ませ、ガインを探しに大都市スリッドへと入っていった。


周りの


「イキッたガキが哀れなもんだな」

「見栄張るのやめろよー」


といった嘲笑う声を無視して。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー





「・・・銀狼?」


ここまでの話を聞いたメリアは話に出てきた中で聞き慣れない単語に疑問を持った。


「銀狼ってのはオヤジが英雄と呼ばれるようになる前に持っていた異名だよ。この頃も既に英雄と呼ばれるようにはなっていたけど、まだ銀狼の名の方が有名だったな」

「な、なるほど」

「で、その後ルークは弟子にしてくれってしつこく追い掛けてくるようになったんだ」




ーーーーーーーーーーーーーーーーー




「頼む!ワシを弟子にしてくれ!!」

「おーう少年、またお前か。いきなり斬りかかってくるような奴を弟子になんてしたら、いつ寝首掻かれるか分かったもんじゃねぇよ。悪いがそんなガキと一緒にはいたくねぇよ」

「あの時は本当に申し訳なかった!!この通りじゃ!!!」


あれから1ヶ月、ルークはガインを追い掛けては弟子にしてくれとしつこく頼み込んでいた。そして現在、ルークは周りの目もはばからず土下座していた。


「おーい、こりゃとんだ公開処刑じゃねぇか。これじゃこっちが悪者みたいになってんぞ、それやめろ」

「それはできぬ!これはワシの国で伝わる最大の謝罪を示すもの!許して頂くまでは!」

「だぁぁぁもうわーったよ!その件は許してやるから!」


周りから注がれる目線の痛さに耐えかねたガインはそんな言葉を絞り出すしかなかった。


「はは、大変だなオヤジ」


それを見て笑うゼオン。


ゴス!


そしてそんなゼオンに無言で肘打ちを食らわせるガイン。


「ごふぅ!」

「・・・・そうだな、よし来い少年!」

「む!?」


ガインはルークとゼオンを連れて冒険者ギルドへと向かい、ギルドの裏にある修練場へとやって来た。


そして


「こいつは俺の息子でゼオンという。ゼオンと戦ってみろ。それ次第で考えてやらんでもない」

「!」

「え、俺!?」


いきなりの展開でゼオンは困惑するが、ルークは違った。


「・・・ゼオンとやら」

「お?」

「尋常に!勝負じゃ!!」

「おおっと!?」


瞬時に背中の斬馬剣を抜き、そのまま大上段からの一撃を振り下ろした。


「マジかよお前」


それを紙一重で避けたゼオンは腰の剣を抜いて構える。


「手加減はせんぞ、ゼオンとやら」

「・・・・あぁ、俺もだ」


刹那、二人の刃はぶつかり合い火花を散らす。ぶつかり合っては離れ、離れてはまたぶつかり合う。そんなやり取りが十数手繰り返されたあと、流れが変わる。


「・・・っ!」


まずゼオンが力負けし、1度吹き飛ばされる。


「なんっつう力だコイツ」

「まだまだじゃああ!!!」


ズガァァァッ!!!


斬馬剣が地面を抉る。


その光景に一瞬ギョッとするが、ゼオンも黙っている訳にはいかない。魔力による肉体強化を施し、さらに戦法を変える。


「もういっちょう!!」


今度は横一文字に振り抜かれる斬馬剣をゼオンは剣の腹で受け流す。それによってルークに一瞬の隙が生じ、好機とみたゼオンは剣を一閃。


ガキィッ!!


それを踏ん張って体勢を無理やり立て直したルークが防御する。


「・・・・ほう」


それを見ていたガインは感心した。


さらに打ち合いは続く。ルークは持ち前の怪力でゼオンを圧倒しようとし、ゼオンは前世の頃から身に付けていた技術と肉体強化でそれに対応力する。


だが、それももう終わりとなる。


ルークの力にまた飛ばされたゼオンに追い討ちを掛けようとさらに踏み込む。これがゼオンの誘いであると知らずに。


体勢を立て直しきれていないゼオンに斬馬剣の大振りの一撃をお見舞いしようとするが、大振り故に完全にがら空きとなってしまったルークの懐へとゼオンは瞬時に蹴りを喰らわせ更に剣を振るい、それに負けじとルークもまた斬馬剣を振るう。



「・・・こやつ」

「・・・・・」


互いの刃が互いの首元を捕らえた状態で静止する。


「そこまでだ」


ここでガインがこの戦いを終わらせる一言を発した。





引き分け



この結果にガインは内心驚いていた。そして、ゼオンを相手に引き分けにまで持っていったルークに興味を持ったガインは弟子入りを許可したのだった。

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