第三話 デッドリーコング
お待たせしました!
第三話です!
それではどうぞ!
「うそん・・・」
カイザーコングがゼオンの目の前で握り潰され、その後地面に叩きつけられた。
現在地は先程までいた85層とは違う地点の可能性が高い。
何故こんな言い回しかと言うと、数分前に遡る。
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カイザーコングが襲い掛かってきた。
右ストレートが迫ってきたのをターバンを外しながら避ける。二撃目の拳を硬化させたターバンで防ぐが、勢いが強すぎて吹き飛ばされた。
「こんの!」
距離を強制的に離されたことにより、カイザーコングに余裕ができてしまう。体勢を立て直した直後、4つの腕を活かしたラッシュが繰り出された。
一撃一撃がとても強烈で地面に凹凸が出来ていく。
こんな威力を待った一撃を喰らってよくあそこまで戦えたものだ。
ゼオンはどうしてもそう思わずにはいられなかった。
バシィッ!
隙をみてカイザーコングの頬に棍による渾身の一撃を叩き込む。
「タフなのな・・・」
この一撃はカイザーコングの闘争本能をより駆り立てるものにしかならなかった。
「ゴアァァァァァァァァァァァァァ!!」
「っ!」
ズドンッ!!!
離脱が遅れたのがまずかった。至近距離から拳をまともに喰らい、地面に叩きつけられた。
「危ねぇなぁおい!」
が、無事だった。
拳をく喰らう直前、マントに魔力を通して防御したのだ。
一息つく暇もなく、再びカイザーコングが拳を降り下ろしてくる。それを飛び退いてやり過ごす。
しかし
「トラップか?」
着地するであろう地点に、ゼオンの魔力探知が反応した。トラップと予想し空跳で空中を蹴り、魔力が確認された場所からすこし離れた所へ着地する。
「転移魔法陣か」
やはり、トラップだった。しかも転移のトラップはかなり厄介なトラップだ。基本的にボス級の魔物がいる部屋に飛ばされるのだから。
そこまで思考した所で。
「あ・・・」
カイザーコングが突進してきた。嫌な予感が脳裏に走る。そして、行動を起こす前にカイザーコングが転移魔法陣のトラップを踏み抜いてしまう。
ゼオンが急いで跳躍しようとするが。カイザーコングに足を掴まれた。
「クソゴリラァァァァァァァァ!!!」
ゼオンの悲痛な叫びが響き渡り、光と共にその姿は消えていった。
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転移が終わった瞬間に右フリューゲルを抜き、雷属性の弾丸を足を掴んでいる手に撃ち込む。
バシュウッ!
「グアッ!?」
突然の電撃に驚き、手を離すカイザーコング。
「くっそぉ・・・俺まで道ずれにしやがって」
左のフリューゲルも抜き、構えながら文句を垂れる。
ズズン・・・
「マジかよ・・・」
ズズン・・・ズズン・・・
地響く足音。カイザーコングすらも驚きの表情をしている。
現れたのはデッドリーコング。カイザーコング等のゴリラ系魔物の上位の存在だ。
体長はカイザーコングを軽々越える、5メートル。
腕は2本だがカイザーコングよりも危険な魔物なのは確かだ。
この2体を相手にしないといけないのかと覚悟を決めたその時。
「グルアァァァァァァァァァ!!!」
「グガァッ!?」
デッドリーコングがカイザーコングを掴み、持上げたのだ。
バキキ・・・ベキャベキャ!!
「ガァッ!グガァッ!!・・・ア"!!」
「うそん・・・」
カイザーコングがゼオンの目の前で握り潰され、その後地面に叩きつけられた。
「ァァ・・・ア"ッ!!」
グシャァッ!
かろうじて息があったが、容赦の無い大きな拳によって、殴り潰された。
「グルルルル・・・」
そして、ゆっくりとゼオンの方を向く。
「・・・ですよねー」
その目は完全に次の獲物を見つけたように、次はお前を殺すと言わんばかりに光っている。
デッドリーコングを相手に近接戦闘は避けるべきだ。
ベルキンの大迷宮で99層のボスだった。
その時の経験からの判断だ。
そして当時はフリューゲルを手にする前だったのでものすごい苦戦した記憶がある。
棍による打撃に耐える程のタフさをもったカイザーコングの顔面を一撃で粉砕するほどのパワーを持っている。魔力を通したマントを使えば防げるが、防戦一方になり、勝機はつかめないだろう。
だから
「フリューゲルで行かせてもらおう」
火属性のシリンダーに切り替えて射撃。
ボスッ!
「おっと?」
普通だったら肉がエグれるか、破裂するかの威力の弾丸だが、今回はそうならなかった。
どういうことかとスキルの「鑑定」でデッドリーコングをみる。
そこには固有スキルの欄があった。
固有スキル「筋肉鎧」
「筋肉鎧て・・・お前脳筋かよ!」
スキル効果:筋肉を鎧のように強靭なものにし、防御力を大幅にアップさせる。
近接攻撃力を大幅にアップさせる。
「さて、どうするか・・・」
鱗のように体の表面を覆っているだけならば打撃でダメージを内部に通すことができる。しかし、筋肉で内部から守られていると、打撃でもダメージは通りにくい。
「地道にやるか」
フリューゲルを構え直し、狙撃を開始する。
だが、筋肉鎧で鎧のように強靭な肉体にはあまり効果がない。
ゼオンが込める魔力の量を増やして攻撃力を上げないのは、今の連謝速度で撃てるギリギリの魔力量だからだ。魔力を込めれば込めれる程威力は上がる。一方で連謝速度が下がるのだ。
ゼオンは威力ではなく、手数を重視した戦法をとっている。
攻撃は最大の防御。それを実践している故のこと。
それでも、小型の魔物を一撃で粉砕する威力を誇るのは流石といえる。
ゼオンはガン=カタを独自に編み出しているが、それは対集団戦の為だきではない。対人用ガン=カタ、対魔物用ガン=カタの二種類を考案し、対魔物に関しては、集団戦と単体戦の二つを編み出している。
集団に対しては前回説明した通り常に動きを止めることなく、迅速、且つ確実に仕留めていくもの。
単体戦では基本は同じだが、異なる点が一つ。
それは
手数にものをいわせ、相手に攻撃の隙を極力与えず、隙をみて一撃を叩き込む。
これもゼオンのハイスペックを誇る身体能力あってこその戦法の取り方であり、一般の者がやろうとすれば、上級魔法を連発しまくらなければならなくなる。もちろん、そんなことはできないし、やろうとしても精々4~5発撃って魔力切れになり終わりだ。
ゼオンは縦横無尽に動き回り、銃弾が絶え間なくデッドリーコングに襲い掛かる。
ズドン!ボボスッ!ドッ!
その間、ゼオンは気をそらすために適当な部位に撃つのと、ある部位をピンポイントで撃つ二つのことを同時に行っていた。
アクロバティックにデッドリーコングを飛び越えながら両手のフリューゲルで連謝し、着地と同時に立ち位置をかえる。こちらを向いたときに滑り込みで股下を抜けながら心臓部を狙い撃つ。
そして、徐々に壁際へと追い詰めていく。
銃撃を止め、氷属性のシリンダーを装填する。その隙に、防御の為に組んでいた腕を大きく広げ怒りの形相で咆哮を上げる。
「グガァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
その瞬間。
パキィィン・・・
おお大きく広げた腕が分厚い氷によって貼り付けられた。
「お前に反撃の余地は与えんよ」
左手のフリューゲルをホルスターにしまい、ターバンを外し、棍状にして更に二つ折りにして短くする。
「その筋肉の鎧を一点を狙い続ければ脆くなるみたいだな?」
ニードル状のなったターバンを魔力による念動力で浮かせて、右手のフリューゲルを両手持ちで構える。
シリンダーは風属性。
り両手から魔力が込められる為、通常より速く魔力が収束されていく。
そして。
ガオォォンッ!!!
とても銃とは思えない大音量の炸裂音と共に、ニードル状のターバンが大質量の風属性の弾丸によって押し出される。
その反動でゼオン自身も1メートル程後退。
ニードル状のターバンは加速していき、ゼオンが集中的に狙い撃ち続け、脆くなってしまった部位、心臓を貫いた。その衝撃がその周りの肉を抉り、風穴が大きく開く。更に大質量の風属性の弾丸による追い討ちで風穴が蹂躙されデッドリーコングの胸部から分断された。
胸部から下はズズン・・・と音を立てて倒れ、胸部から上は腕を壁に貼り付けられたまま、ダラリとぶら下がる。そこからはボトボトと鮮血や内臓、破壊された肉が重力に従い落ちていく。
「エグいな」
自分でやっておきながらなのだが仕方がない。
ゼオンは火属性のシリンダーを装填し、貼り付けている氷を撃ち砕く。ドスンと音を立てて落ちるデッドリーコングの遺骸。腰から短刀をぬき、売れそうな部位を剥ぎ始める。
今まで倒した魔物の部位を剥がなかったのは、単に死骸の臭いに別の魔物が誘われてやってくるからだ。
しかし、ここはトラップ部屋。違う魔物が来ることはない。
素材を剥ぎ取った後、周りを見渡す。
すると
ガチャン・・・ ギィィィィ
扉が開く。
「出口か。これで第1層だったら全部フリューゲルの最大出力で破壊し尽くしてやる。特にあのゴリラ!微塵にしてやる」
ゼオンは以前攻略した迷宮にあった、ラウラドの大迷宮でのことを思い出して物騒なことを呟いた。
出口の扉は転移魔法が付加されたゲートとなっていた。
できれば元の場所がいいと願いつつゲートを潜った。
視界が真っ白になり、直後にはそれもおさまる。
そして、ゼオンは目の前に写った光景に思わず、冒頭と同じセリフを吐いてしまう。
「うそん・・・」