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第三十七話 決着

また3ヶ月近く間を空けることなく更新できてよかったです。


頑張ります!


それでは第三十七話をどうぞ!

「たぎるこの感覚など実に久々!我も元傭兵の端くれ!一肌脱がせていただこう!!!」


ボディビルポーズの3連コンボを決めながらそう叫ぶゴウゲンは、上半身裸だ。

その肉体からは魔力が溢れだし、湯気のように揺らめく。


熱気さえ感じそうな程だ。


「行くぞ!我が友よ!!」

「応!!!」


二人は走り出す。


ルークの斬馬剣は、その重量とそれを片手でも扱って見せる程の腕力でもって、アンデット達が壁となってそこに居ることを無視して振り抜かれる。結果、ルークの攻撃餌食となったものは叩き切られ、叩き潰され、押し込まれる。

ゴウゲンの拳は相対するアンデットを次々と沈めていく。ゾンビは文字通り粉砕し、首なしの鎧デュラハンはその鎧にベッコリと陥没させられるか、大きくヒビが入る。いずれも拳で成せるものとは思えない程だ。


「これぞ我が肉体の素晴らしさ!!!」


鍛え上げられた身体を惜しみ無く披露するように戦うゴウゲンの姿は、輝いてさえ見えた。


魔力の弾丸を撒き散らしながらゼオンはゴウゲンとルークに一瞬だけ目を向ける。


ルークは斬馬剣の大きさを利用して、時には盾としても扱っているのに対し、ゴウゲンは盾となるようなものは何も持っていないにも関わらず無傷である。デュラハンやゾンビ、ラージスケルトンの持つ剣による一撃を受けているのにだ。


「体だけでなく、精神を共に鍛えることで真に強き肉体を得ることができる!!今は亡き【鷹の爪】不屈の魂は!未だ健在なりぃ!!!!」


「鷹の爪」


かつてゴウゲンが所属していた傭兵団であり、とある貴族の策略によって大半の団員が処刑され、解散するまでの数十年の間に不敗伝説を築き。最強の傭兵団、戦場の死神、常勝不敗の英傑などの呼び名で恐れられ、どんなに不利な戦局でも「鷹の爪」が参加すれば必ず勝利をおさめることが出来るとまで言われる程だった。


背後から迫ったゾンビの頭部を撃ち抜きながら


鷹の爪・・・か。


ゼオンは内心で呟いた。


随分と懐かしい名前だな、と。


しかし、これは決してゼオン、もしくはガインが元々【鷹の爪】のメンバーだったとか、そういうわけではない。


【鷹の爪】はガインからよく聞いていた名であり、その団長とガインは友人関係にあったのだ。

それ故にガインは時折ゼオンを連れて【鷹の爪】の拠点に赴いては団長と談笑し、酒を酌み交わしていた。

(その間、ゼオンはメンバーから色々な武勇伝を聞かされていた)



そして、とある貴族が【鷹の爪】を潰しにかかり追い詰めた後、その団長と親しい友人であり、同時に英雄として名が広まりつつあったガインにまでその魔の手を伸ばそうとした。


だが、ガインは逆に【鷹の爪】メンバーの逮捕と処刑が完全に不当なものであることを証拠と共に国王へと伝え、更には敵対国と密かに繋がっていたことが浮き彫りになり、国王はこの貴族を国家反逆の逆賊としてガインに討伐命令を下し、ガインはそれを見事に完遂したのだ。


そんな出来事を思い出して理解した。何故ゴウゲンが見覚えあるのか。


某錬金術漫画の剛腕な錬金術師に似ていただけではなかったからだと。勿論それもあるが、ガインと一緒に【鷹の爪】の拠点行った際にいつも筋トレをするかポーズを決めているかのどちらかを常にやっている変人がいたとゼオンは記憶していた。


その変人だと思っていた相手がこのゴウゲンということだ。

















「・・・・・どんな展開だよ」






突っ込まずには居られなかったらしい。


「っと。集中しねぇとな!」


爪先から仕込みナイフを飛ばしてデュラハンの動きを阻害しつつ、スケルトンアーチャーが放った矢を指貫グローブで展開したシールドで防ぐ。


「兄貴ぃ!!」


ゼオンは突然のルークの呼び掛けに、視線だけを送って応える。

ルークはラージスケルトンの大盾を斬馬剣の一撃で砕きながら、一言。





「援軍じゃ!!」





この言葉でゼオンはアンデット以外の気配が交ざり始めていることに気が付いた。


「ここは俺達の住む都市だ!アンデットなんかの好きにはさせねぇ!」

「お三方!到着が遅れて申し訳ない!」

「アンタらにばかりいい格好はさせらんねえ!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


ゼオンたち3人に礼を言う者、遅れたことを謝罪するもの、自分を奮い立たせるために叫ぶ者、対抗心むき出しの者、様々な声が辺りから聞こえてくる。この魔族の襲撃という事態に急遽駆け付けてきたカーゼル迷宮都市内にいた冒険者達だ。


それだけではない。


「ゼオン殿!遅くなり申し訳ありません!!」


マウンティス伯爵の護衛兼執事のセバスが騎士団を引き連れて向かってくる。


「私はゼオン殿の援護に向かいます。騎士の皆さんは市民の安全を最優先に!あそこで頑張っているお嬢さん方を手伝うのです」


「「「「はっ!!!」」」」


え?まって?セバス(あんた)は執事だよね?


なんてことを考えてしまうゼオンは悪くないだろう。

まさか執事が騎士団に指示を出すなんて思いもよらないことなのだから。


閑話休題。


セバスがゼオンの元まで駆け付け、背中合わせになる。


「あなたの権限はどうなってんですか」

「ふふ、今は非常事態ですので」


そんなもんか?と思ったゼオンはすぐに思考を切り替える。


「あの魔族は俺がやる。セバスさんにはその為の道を開けて貰うと助かる」

「承知致しました。私も久々に全力を出させていただきましょう」


そう言ってセバスが取り出したのは、なんと3つの棍棒を鎖でつないだような武器、三節棍だった。

それを見たゼオンは少し驚いた表情をする。


「・・・意外ですかな?」


その様子に気が付いたセバスは微笑みながら問う。


「かなりな」

「これは中々に優秀な武器です故」

「最強の武器に部類するからな三節棍(それ)

「おや、ご存知で?」


今度はセバスが驚いた表情をした。


「まぁな。その辺りに関してはこれが終わってからにしような」

「そうでございますね!」


言い終わった刹那、セバスは見た目の年齢には相応しくない瞬発力でアンデットの群れに突っ込んでいった。


「・・・マジかあの執事」


三節棍を巧みに操り、次々とアンデットを葬り去るその姿と、先程の瞬発に思わずそんな言葉を漏らしてしまう。


「ま、頼もしいっちゃ頼もしいからいいんだけど・・・な!」


背後から迫るスケルトンを回し蹴りで砕く。


「アンデットの意識も、援軍のお陰でだいぶ他に向き出したし。動きやすくなってきたな」


襲い来るゾンビやスケルトンを撃ち抜きながら辺りを見回し、動き回れる隙間が増えたことを確認する。その瞬間からゼオンの動きはより素早く、より大きく、よりアクロバティックなものへと変化する。


そして、着実に魔族の方へと向かっていく。


『ぐっ!おのれぇい!』


それに焦りを感じたのか、再びアンデットを召喚しようと魔族は杖を構える。


しかし


バシッ!バシィッ!!!


『っ!?』


両隣に控える2体の上位種アンデット、ワイトが展開する魔障壁が激しい音を立てながら何かを弾く。

それに驚いた魔族は、つい召喚魔法を中断してしまう。


「こんな状況で、俺がそれ(・・)をさせると思うか?魔族!!」

『チッ!小癪なぁ・・・行け!!ワイトよ、あの生意気な人間を葬り去るのだ!!』


2体のワイトにゼオンへの攻撃を命じる。それに応えた2体のワイトは魔族の元を離れてゼオンへと向かっていく。


「失礼ながら、この瞬間をお待ちしておりました」

「これで障害が無くなりましたな!」


そんなことを言いながらワイトのすぐ側に現れたのは、スーパー執事のセバスと、スーパー筋肉漢のゴウゲンだった。


セバスは三節棍による大振りの一撃を、ゴウゲンは自慢の拳による一撃をそれぞれ1体ずつに叩き込んだ。これによってワイトは2体とも同じ方向に吹き飛ばされ、その先にまた一つの人影が。


「散々、兄貴の邪魔をしてかれたのう。この礼はしっかりとさせてもらうぞぉぉぉぉぉ!!!」


赤眼の異名を持つルークだ。


纏風(てんぷう)風龍暴風斬(ふうりゅうぼうふうざん)!」


斬馬剣がルークの風魔法を纏いながら振り抜かれ、風と魔力の塊が東洋龍のような姿を形成し、飛んで来るワイト2体を飲み込んだ。龍の体内では激しく魔力を纏った風が鎌鼬(かまいたち)となって吹き荒れており、飲み込まれたものは為す術無く粉微塵にされる末路を辿る。


2体のワイトが消えたことによって、魔族を直接守る存在は居なくなった。


「さぁ!いくのです!ゼオン殿!!」

「みんな!助かった!!」


セバスの言葉に礼を言いながら魔族に向かって跳躍する。


『うぉぉぉぉぉ!!来るな!下等な人間が!!』

「お前、さっきから下等な下等なうっせぇんだよ!!」


ドンッ!!


杖を持つ魔族の右手を撃ち抜く。更に空跳を発動して肉薄し、蹴り技の延髄切りを叩き込み、地面へと落とす。


『ぐっふぅ!!このワタシが!地に伏すなど・・・ぐあっ!!』


魔族は立ち上がろうとするも、見えない何か上から押さえつけられているかのよう。


上から押さえつけている何か、それは勿論。


「勝負あったな、魔族」


静かに着地しながら決着がついたことを宣言するゼオンの、魔力念動力によるものだ。


「お前には色々吐いてもらうからな?」

『ぐっ!まだ終わっては!』


念動力で押さえ付けられながらも、偶然近くに落ちていた杖に手を伸ばす。しかし、杖は魔族の手に収まることはなく、ゼオンに吸い込まれるように彼の手元へと飛んでいく。


『下等な人間がその杖に触れるな!!』

「ふむ・・・」


それを聞いたゼオンは一瞬思案するような仕草をしたあと。


『なっ!!きさま!!』


ゼオンの手に収まっていた杖は次の瞬間には消えてしまう。


『貴様!!ワタシの杖をどこへやった!!!!』

「ハッ、今の見てなかったのか?消したんだよ、文字通りな」


なんてこと言ってはいるものの、実際には異空間倉庫(アイテムボックス)に収納しただけのこと。


『ぐぉぉぉぉぉぉぉ!!!おのれ!おのれ!!おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれ!!!絶対に許さんぞ!!!人間風情がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

「おいおい、杖一本でそんなにわめくのか?魔族ってやつは」

『うるさい!あの杖は魔王様から(たまわ)った大切なもの!それを貴様は!!』

「魔王・・・ねぇ」


ゼオンは一歩魔族のほうへ歩み寄りフリューゲルを構え。


「その魔王に関することの詳細と今回の襲撃の理由に、お前ら魔族の戦力規模。洗いざらい吐いてもらう」

『誰が貴様らなんぞに!』


絶対に吐かんぞ!


そんな堅い意志のこもった視線をゼオンにぶつけるが。


「あ~そういうのはいいから」


ドンッドンッドンッ!!


フリューゲルに実体弾を装填して左肩と両足を撃ち抜く。


「ぐがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


魔族の痛みに悶える叫びが響き渡るのであった。

展開が急になってないかな?

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