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第三十五話 ゴウゲンの豪拳

更新までにかなりの期間を開けてしまい

本当にすみません!



『リッチにワイト、か。私はそれすらも使役できる存在とさだ!』


ゼオンの呟きが聞こえたのだろう、見た目は完全に魔物となってしまった魔族はそんなことを言ってくる。


「見た目はリッチやワイトとは変わらんぞ?っつうか、その2体を足して2で割ったような中途半端な姿だな」


ハン、と鼻で笑ってみせるゼオン。


『挑発のつもりか?下等な人間よ。だが、その手には乗らん』


魔族の声色が明らかに変わる。サラとルークはその様子を静かに見ているが、ただ一人、メリアだけは。


なに挑発(よけいなこと)してんのぉぉぉぉぉぉ!?


と叫びたい気持ちを抑えていた。


「俺は素直な感想を言ったまでなんだが、そうとしかとれないほどに魔族ってのは馬鹿なのか?」

『我々魔族は魔神様のお力により人間よりも進化した存在だ。下等な貴様らはそれすらも分からんか』

「知ってたか?進化の果ては退化なんだぜ?」

『貴様・・・』

「んー?挑発には乗らないんじゃなかったのか?」


最後の言葉がトリガーとなった。


『・・・よかろう。我が力を見せてやろう』


魔族はおもむろに杖を掲げて召喚魔法を発動する。

しかし、魔法陣は出現しなかった。


だが、ゼオンはその魔法が確かに発動したことを察知する。


「・・・厄介なことをしてくれるな」


何が起こったのか。


それは


「地上に直接アンデッドを召喚しやがったな?」


『ご名答!私はこのまま地上にもどり、都市を壊滅させる。お前達がこの迷宮から出る頃には、アンデッド達により全てが壊されていることだろう』


「そんな!」

「なんの罪もない者達にまで危害を加えるつもりか!そんなことが許されると思うとるのか!!」

『ほざけ!貴様ら人間は存在していることそのものが罪なのだ!』

「それがお前達の考え・・・か。理念は違えど、やはり変わらんな、魔族よ」


ピクリと反応する魔族。


「あの時もそうだったな。魔神以外の神を信仰する者達こそが悪だ。異教徒は全て排除せよ。正義はこちらにある。そういっておまえ達は我々と戦った」


この世界に来る前は現代日本に住んでいたゼオンには分からない考えだった。何故信仰する宗教が違うだけで排除しなければならないのか。誰がどの神を崇めようと、それは個人の自由なのだからそれに口出しする理由も分からないし、その意味も理解できない。



だから



「くだらん」


『なに?』

「神がどうとか、信仰がどうとか、そんなもん知らねぇけどな。誰がどの神を信仰しようと、それは個人の自由じゃぁねぇのか?」

『分からぬようだな!魔神様以外の神など、存在してはならんのだ!魔神様こそがこの世界において唯一無二のお方だ!』

「それが分からねぇんだよな。ルティナもいるしガルディアだっている、ベルキンもラウラドもだ。実際に魔神以外の神が存在してんだからさ?」

『・・・魔神様への冒涜、その罪は大きいぞ。精々急いで地上に戻ることだな!』


「・・・あっ」


魔族は言い終えると同時にその姿を消してしまった。


「ちょっと!どうするの!?」

「まずいことになったな。ここには神々の試練のような地上に直接出る手段はないのか?ゼオン」

「普通は逆走するか転移魔法士に地上まで送ってもらうかなんだよ」


言いながら、先程魔族が消えた位置を見つめる。


「その転移魔法士がくるようなことはないかのう」

「・・・ねぇな」


ゼオンはあっさり答える。


「じゃあ急いで戻らないと!」

「慌てんな!」

「でも!」

「メリアよ、兄貴が慌てるなと言った時は本当に慌てる必要のないときじゃ」

「そういうこった。うまく固定(・・)できた」


メリアにとって、いや、その場にいるルークにとってよく分からない発言がゼオンの口から出た。


「転移の時に出来る空間の穴を、魔法阻害の応用で固定した!はやく飛び込め!」


ゼオンの表情からは、その固定が長くは保たないことがうかがえた。


それでも転移魔法によって開いた穴を瞬時に固定、しかも、本来は魔法の発動を止める為の技術を応用して真逆の使用方法で現状の打開をはかる。


正に逆転の発想だった。






ーーーーーーーーーーーーー





地上



このカーゼル迷宮都市で暮らす住民や、立ち寄った者達が自由に利用できる広場がそこにはあった。広場と言うよりは、遊具等のない大きな公園と言った方が伝わるかもしれない。


この日もまた、多くの人々が憩いの場として利用していた。子供を遊ばせたり、設置されたベンチで休んでいたり、二人で話ながら歩く夫婦やカップル。


そこに漂っている空気は、平穏や平和といった言葉が似合う程に穏やかであり、和やかなものだった。


しかしそれは突如、恐怖の2文字に書き換えられる事となる。


公園一杯に出現した魔方陣。そこからは禍々しい光りや魔力と共に、無数のゾンビやスケルトンといったアンデットと呼ばれる魔物が現れる。


「う、うわぁぁぁぁ!!」

「なんだこれはぁぁぁぁぁ!!!」


逃げろ、助けてくれ、何が起こっている、何故だ。


様々な声が辺りから響いてくる。そして、それが周りの状況を掴めていない者達の恐怖をより煽ることとなり、何も考えられずに座り込む者、逃げようとして転んでしまうもの、連れてきた子供とはぐれてしまう者、撹乱してしまう者。


憩いの場であるはずのこの公園は、そう時間を掛けることもなく、平穏だった面影すら無くすこととなってしまった。






「落ち着かれよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」





混乱する者達の中に響いた、否、轟いた怒声。


「そう騒いでは、混乱するばかり!落ち着いて行動されよ!!」


声の主は


「いったれぇい!ゴウゲン!!避難の為の時間を稼ぐんだよ!」


某錬金術漫画のムッキムキな少佐に似ている漢、ゴウゲンだった。


「お任せを・・・ふんぬぅぅぅあぁぁぁぁぁ!!!」


全身の筋肉に力を入れる。


「どおぉぉぉぉぉぉぉぉぉう!!!」


その力全てを右拳に集中させるようにして、一気に振り抜いた。


豪拳圧風(ごうけんあっぷう)!!!」


ゴウッ!


振り抜かれた拳の射線上にいたアンデット達は何かに激突されたかのように砕け、吹き飛ばされる。


「これぞ我が筋肉の美しさよ!!」


ビシィッ!とサイドチェストポーズを決めながら言い放ったゴウゲンだが、その様子を見ていた人々は。


ポーズ決める必要あんの?


と内心突っ込むのであった。


『フハハハハハ!地上にも面白い人間がいるようだな!』


「む?」


突然響いた声と共に先程とは比べ物にならない程に強大でドス黒いと表現できる魔力が溢れ、それは現れた。


『お初に、人間諸君。私は魔族だ』






ゾクリ





ゴウゲンを含め、その場にいた全ての人の背中を何かがなぞった。


「魔族?神代の戦いにて、魔神の配下となって戦った種族のかね?」

『もっとも、私はこの時代に魔族になったのだがね』

「・・・なるほど、では全力で叩かせて頂こう!」


ゴウゲンは再び全身に力を込めていく。


ゴウゲンが先程放った豪拳圧風(ごうけんあっぷう)は、体を全身に込めた力を体重移動と共に拳へと移動させ、それを放つというもの。

確かに拳を直に当てても強力なのだが、体全身を引き金にして放たれたこの技は拳圧だけでも充分を誇る。そこにゴウゲン自身の風属性魔法を組み合わせることで、アンデット達を吹き飛ばしたようにある種、大砲とほぼ同等の威力を持つことになる。


「いくぞぉぉぉぉ!!」


ゴウゲンがとった構えは、両の拳を腰の位置まで持ってきて、姿勢も低くするという豪拳圧風とは異なる拳の構え方。


豪拳圧風(ごうけんあっぷう) 連式(れんしき)!!」


目で追うのもやっとの速度で繰り出されるラッシュ。その一撃一撃は単発の豪拳圧風ほどではないのだが、連続で放たれている為に、それを体感することはないだろう。


『ふん、どれだけ足掻こうと我は配下をいくらでも召喚できる!』


魔族は杖を掲げて魔力を迸らせる。


続々と姿を現すアンデットの群れ。


「・・・あの魔族を直接叩かねば、話にならぬか」


ゴウゲンが呟き、魔族に向かって走りだそうとしたその時。


「よっしゃあぁぁぁぁ!成功じゃぞ兄貴!!」

「ちょっ!空中じゃん!!」


ルークとメリアが何もない空間から出現し、落ちてくる。


「ふむ、さすがゼオンだな」

「・・・ぎりぎりだったがな」


続いてサラとゼオン。


そして、4人は辺りの状況を確認し、アンデットの群れと、その親玉である魔族をその視界にとらえる。


「おい魔族。急いで出て来てやったぞ?」


『・・・・』


「てめぇの魔物か人か分からん中途半端なそのツラ、ブチ抜いてやるか覚悟しろ」


ゼオンは静かに啖呵をきりながら府リューゲルを抜く。

最強の迷宮攻略者の執筆の気分転換も兼ねて

別作品「異世界と魔剣」の執筆をはじめました。


あくまでも気分転換なので、「最強の迷宮攻略者」よりも更新頻度は低く、文字数もかなり少なくならと思いますが、少しでも興味がひかれた場合は是非一度、足を運んでみてください

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