第二十九話 思わぬ出来事
更新遅くて本当にすみません・・・
なるべく更新頻度を上げるので
よろしくお願いします。
それでは
第二十九話をもうぞ!
腕相撲終了後、飛び起きたルークの
「ええ筋肉じゃ!」
の一言で何か友情でも芽生えたのか、ガッチリと堅い握手を交わしていた。
後のルークとゴウゲンによる説明を要約して話す。どうやら開始直後、抵抗するため踏ん張りはしたが、その瞬間に肘関節がはずれてしまうだろうことを悟り、あっさりと負けを選んだようだ。
ゴウゲンはその潔さと垣間見た力に、ルークは本能的に感じ取った効率的な力の使い方に、何か通じるものを感じたようだ。
アツ苦しい漢の友情が生まれた瞬間である。
「・・・勘弁してくれ」
ゼオンの正直な感想だった。
「っと、忘れるとこじゃったわ。兄貴!紹介頼む!」
堅い握手を終えて、ゼオンに向き直るルーク。
「・・・・あぁ、メリアのことか」
「忘れておったのか?」
「あの後、色々あったうえにコレだからな」
色々とは、テューバー子爵の逮捕とその後の報酬のことだった。
「まぁいいや」
ついてこい、と顎でしゃくって歩き出す。
「けど、怪力自慢のお前があぁもあっさりと負けるなんてな」
「わしも驚いたわ。あのゴウゲンという男、最小の力で最大の結果を発揮できる体の、いや、筋肉の使い方を知っているんじゃろうな」
なるほどと頷くゼオン。最小の力で最大の結果を得る使い方を、あの筋肉量でやられたら半端ない怪力を生み出すことになる。だから一瞬で勝負がついたのだろう。
こんな事を考えている内にメリアの部屋に着いた。
「・・・ん?」
そこで首を傾げるゼオン。
その理由は部屋の中に気配がなかったからだ。もしかしてと思い、自分とサラの部屋に意識を向けると予想通り、そこに2つの気配があった。
「こっちにいるみたいだ」
気を取り直して、部屋のドアを開ける。
「・・・・ゼオン!無事だったのか!」
「この通りだ」
真っ先に声をかけて来たのは勿論サラだ。
それに続いてメリアも出てくる。
「あれ?その人は?」
「こいつは昔からの知り合いだ」
「ルークという者じゃ、よろしくのう!」
「お前に会いたいっていうから連れてきた」
「え?私?」
キョトンとした顔を画しているので見せるメリア。完全に予想外だったからだろう。
「そうじゃ!兄貴の話を聞く限りじゃと、面白い女子のようじゃったからの!気になったんじゃ」
「・・・というわけだ」
「どんな話したのよ・・・」
「俺が鍛えてるって言っただけだ」
本当にそれだけのことだ。しかし、ルークはゼオンに計り知れない実力があることを知っている。だからこそ、そのゼオンが鍛えていると言う冒険者、メリアに興味をもったのだ。
「名はなんという?」
「え?あ、メリア」
「メリアか、ええ名じゃ。さっきも言ったが、ワシはルークという。よろしくのう!」
なんか、メリアが着いて行けていない。ゼオンにどういうこと?と視線をチラチラ向けている。
それに気付いたゼオンは溜め息を吐くしかない。
サラも苦笑いだ。
「兄貴、ちょっとええか?」
「今度はなんだよ・・・」
ルークは完全に自分のペースだ。そのペースのまま、ゼオンと再び廊下に出る。
「なんっじゃあの女子!!」
「は?」
いきなり肩をガッ!と掴まれて言われた言葉に、そんな間抜けな声しか出せなかったゼオン。
「一目惚れしてしもうた!」
「・・・は!?」
更なる追い討ちに、より間抜けな声が出てしまう。
「いや、まぁ・・・うん、なんつうか。がんばれ!」
「ちょっと待ってくれんか?がんばれだけか?もっとこう・・・なんかないもんかのう?」
「メリアと親しくなりたいから、手伝ってくれってか?」
「さすが兄貴じゃ!」
話がわかるのう!と嬉しそうにするルークだが。
「断る」
あっさりと断られた。
「なんでじゃ!?」
「それくらいは自分でなんとかしろよ。お前、赤眼と恐れられる男だろ?」
「うぅむ・・・」
ルークは唸る。
確かに自分は赤眼という異名を付けられている。
その赤い眼と視線を合わせた敵対者は必ず葬られる。
その眼に睨まれて生きて帰った者は居ない
など、この他にも色々な噂が流れて、いつしか赤い眼のルークは赤眼と恐れられるようになったのだ。
「何を自分で何とかしないといけないんだ?」
「ぬおぅ!?」
突然のサラの乱入により、心臓がバクンッ!と跳ね上がりそうになったルークは、驚きで早くなった鼓動をなんとか抑えようと深呼吸を繰り返している。
「どんだけビビってんだよ」
「ビビってはおらん!ビックリしたんじゃ!」
「ゼオン、少し話が・・・というより、相談したいことがあるんだがいいか?」
「どうした?」
サラがゼオンの耳に顔を近づけてささやく。なんだか物凄い色っぽいと思ったのはゼオンだけの秘密だ。
「実は、メリアがあの男、ルークだったか?の事が気になるらしい」
・・・メリア、お前もか
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メリアはメリアでルークに引き込まれる何かを感じたので気になるらしい。
「意味はないと思けど、一言でいいから言わせてくれ」
「「「??」」」
ゼオンはフゥ~と息を吐いて一度落ち着き、何だ?と疑問符を浮かべる一同を気にせず大きく息を吸って言い放った。
「どんな展開だよこれ!!」
もうマジで意味が分からん!と続ける。
ついさっきまでは、メリアが興味津々に色々と聞いていたのだが、ルークは少しガチガチになっていて、言葉も微妙に片言だった。
今は慣れたのか元に戻っているが・・・
「え!じゃあガインとも関わりが!?」
「あるのう」
「す、すごい・・・」
ゼオンとルークが出会った時の話をしているようだ。その頃からルークは斬馬刀を使っていて、突然ガインに勝負を挑んだ。
もちろんルークは瞬殺されたわけだが、その時のガインの手際の早さと良さに惚れ込んでしまい、弟子入りを申し込んだのだ。その時のガインの言葉は。
「こいつは俺の息子でゼオンという。ゼオンと戦ってみろ。それ次第で考えてやらんでもない」
これを聞いた瞬間、ルークは目の色を変えてゼオンに襲い掛かった。
結果は互角。
それも、ゼオンが肉体強化を施してやっと互角だった。この事実にガインは驚き、同時に興味を持った。以来、ルークもゼオンと共にガインの下で修行するようになったのだ。
「今思うと、懐かしいもんじゃ。のう!兄貴!」
「ん?まぁな。はじめの頃は俺にすんげぇ突っ掛かって来てたしな」
「そ!それは子供故の過ちじゃ!」
最初はゼオンに対しては喧嘩腰の態度だった。しかし、ある事件でゼオンがルークを助け、その時に敵へと向けて言い放たれた「人に刃を向けて良いのは、刃を向けられる覚悟のある者だけだ」という言葉にルークは衝撃を受けた。それからは自身の態度を改め、ゼオンを兄と呼び慕うようになり、兄弟にも似た関係へとなっていった。
ゼオンも加わり、思い出話に花を咲かせる。
毎朝、準備運動を兼ねた組み手をやっていたことや、どちらが先に盗賊のアジトを見つけるか競争した話。ガチの殴り合いの大喧嘩をして、仲裁に入ったガインによって二人まとめてぶっ飛ばされた話など、本当に懐かしい話ばかりだ。
「けど抜けるタイミングがな」
「・・・おう」
「抜けた??」
「そうじゃ。ある日、立ち寄ったギルドで偶然耳にしたニュースがあってな」
ルークの祖国、ケルディード国で内乱が発生したというニュースだ。それを聞いて、祖国に住む家族を心配するルークをガインは。
「危機に陥っている家族を放置するような奴はいらん」
と破門にした。
これはガインの気遣いだった。
自分から頼んで弟子入りしておいて、抜けるのはどうなのかとルークは考えていた。それを察したガインは、ルークを破門とすることで自分等との関係を断ち切り、祖国へ帰りやすくしたのだ。
ゼオンは破門にする必要あるのかと思ったのだが、内乱はいつ終わるか分からず、終わったとしても、その後にもし何かあって祖国へ残らなければならなくなった場合を考えると納得できた。
「じゃが、あの時の破門は正解じゃったわ」
「もしかして、本当に国に残らなくちゃいけなくなったの?」
「いや違う。その内乱は3年も続いたんだ」
「さんっ!?」
ケルディード国軍と反乱軍の争いは泥沼化してしまったのだ。
「そういえば終息間際くらいからだったよな?お前の名前が出始めたのは」
もっとも、その当時は「赤眼」ではなく「赤い眼の男」だったがと補足する。
「赤眼!?」
メリアが物凄い反応を見せた。
「ルークって赤眼だったの!?」
「ん?おう、そうじゃ」
メリアは知らなかったらしい。それもそうだろう、ルークは名前しか言ってないし「赤眼」の異名も名前とセットで出回っている方が少ない。
「メリアはそういう、異名持ちとか英雄に関して意外と詳しいな」
「あ~、確かに」
サラの言葉にゼオンはそういえばと思い出す。
ゼオンがガインの息子だと言った時も、ガインに関する逸話をかなり知っていた。
こいつはそういうのが好きなんだろうなと思いながらマントとターバンを外す。
「俺はもう疲れたから寝る」
「早いな」
「リッド商会による薬物製造にテューバーが関与している証拠を伯爵んとこ持ってったら、テューバーの逮捕までやらされたからな」
一仕事終わって「さ~帰ろ!」のタイミングでまた一つ依頼された。その八つ当たりとしてテューバーの股間を蹴ったわけだ。
「このまま部屋に居ても良いが、大声は出すなよ?」
と言いながら服を脱いで上半身裸になる。それによって露になるゼオンの肉体。
細いか太いかで言えば太いその体は細マッチョと言える、とてもバランスのいい肉付きである。それでいて無駄な肉はない。たくましい筋肉質な身体だ。
「・・・なに見てんだよ」
「いや、前よりも鍛えられてんだと思ってのう」
「それでもお前には勝てんだろうよ」
「そうかのう?」
筋肉の量と質で言えばルークの方が上と言える。ゼオンはそれを魔力による肉体強化と身体補助で補っているにすぎない。
だから。
「純粋な力比べならだがな」
と付け足しておく。
「んじゃ、おやすみ」
ゼオンは布団の中に潜り込み、その後にサラが当たり前のように続いて布団に入った。
これによって気まずさを覚えたメリアとルークは部屋を出てメリアの部屋へと場所を変え、再び話をし始めたのだった。
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「・・・・」
遠くで声がする。
「オン・・・」
その声は段々と近づいてくるのが分かる。
「・・・・ゼオン」
どうやら名前を呼んでいるようだ。
「ゼオン」
誰の?
「ゼオン・マークス」
自分の名前だ。
その事に気がつき、ハッと目を覚ます。その瞬間、視界に入ったのは真っ白で何もない空間だった。つまり、さっきまで自分がいた部屋ではないということ。
それを理解したことで何故か冷静になれたゼオンは。
「・・・知らない天井」
ネタに走った。
「こんな空間で天井もクソもない気はするのだが」
苦笑しながら身体を起こす。
「ゼオン・マークス」
また呼ばれた。聞き覚えのある優しい声だ。
その声に誘われるように振り向くと。
「お久しぶりです、ゼオン」
創造の主神「ルティナ」がそこにいた。