第二話 ガン=カタ
第一話投稿でいきなりあアクセス数がはね上がり
とても驚いています。
これからもまた「最強の迷宮攻略者」をよろしくお願いします!
名前:ゼオン・マークス
性別:男
種族:人間族
魔力:5594620
攻撃力:測定不能
防御力:測定不能
適正魔法:なし
装備:魔導神銃「フリューゲル」「神製布のターバン」「神製布のマント」
スキル:「鑑定」「瞬歩」「空跳」
「見極め」「見切り」「身体補助」「肉体強化」
「精密射撃」「気配探知」「魔力探知」「威圧」
称号:「二つの試練を乗り越えし者」
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これがゼオンの現在のステータス。
ゼオンがオロチを倒してから数日。
ドォン!ドドドドドドォン!!ドドォン!
下層の85層にまで到達している。そして、この連続した銃声の原因だが。
ゴアヴェラキラプターという小型の肉食恐竜の様な姿の魔物の群れと交戦しているからだ。
既に十数体倒しているが、ゴアヴェラキラプターの数は50を越えており、ゼオンでなければ今頃は食い散らかされていたことだろう。
側方宙返りをしながら前方の2体を撃ち抜き、連続で後方宙返りしながら背後のゴアヴェラキラプターを撃ち抜いた。さらに、姿勢を低くして時計回りに回転しながらの連続射撃で10体のゴアヴェラキラプターを葬る。
「っく!こいつら、めんどくせぇな!」
飛び掛かってくる2体を撃ち落としながら、地面を転がって立ち位置を変え、振り向きざまに、自分の左にいたゴアヴェラキラプターを撃つ。
ゴアヴェラキラプターの群れからの攻撃をものともしない怒涛の攻撃。
集団に対し一人で戦う為に編み出された現代近接格闘術で、常に敵の死角に回ることで銃弾を回避しつつ、最小の攻撃で最大の成果を得る。多数の敵が持つ銃の向きを一瞬で判断し、その銃弾の軌道を予測しつつ攻撃を行うため、物陰に隠れず積極的に敵に接近し敵を仕留める 。
これが本来の「ガン=カタ」である。だが、魔物は人間よりも感覚が鋭く、その行動も予測不能な場合が多い。攻撃も銃の用に銃口から一直線ではなく、爪や牙、もしくは体全体を使っての攻撃になるため、範囲も直線上ではない。故に死角に入ったからといって攻撃がこない訳ではない。そこで、ゼオンは常に素早く動き回ることで、捕捉されないようにして、迅速に尚且つ確実に仕留めていくものに改良したのだ。
もっとも、これはゼオンのハイスペックな身体能力とスキル扱いとなっている魔力による「身体補助」と、同じくスキル扱いの魔力を使っての「肉体強化」があってこそ出来る芸当であり、一般の人間がやろうとしても修得は不可能な領域にある。
この圧倒的物量の差が、逆に「ガン=カタ」の力を充分に発揮できる状況といえる。
50を超えていたゴアヴェラキラプターの数も、気が付けば残り十数体にまで減っていた。
「・・・お前ら、こんなになってもまだやるんだな?」
ゴアヴェラキラプターはここに来てやっと群れの危機を悟り、撤退を始めようとしていた。
しかし
「1度は俺に牙を向いたんだ。このまま逃がすと思うなよ?トカゲ野郎!」
ゼオンはそれを許さなかった。
逃げ行くゴアヴェラキラプターに向け、トリガーを引き続け、残り5体となったところで新たな気配が接近するのを感じとる。
同時にゴアヴェラキラプターも逃げの足を止め、5体全てが同じ方向を向く。
ベキベキベキ!!
生い茂る細木をなぎ倒しながらそれは現れた。
見た目はゴアヴェラキラプターと似ているが細部が異なる。大きく発達したトサカと前足の爪。体も目の前のゴアヴェラキラプターの倍はある大きさを誇る。
「やはりお前もいたんだな?ドンヴェラキラプター」
ドンヴェラキラプターは、ゴアヴェラキラプターの群れを統率するリーダー的存在の魔物。今回の様な規模の大きい群れの中に確認されることが多い。
「ゴギャァァァァァァァ!!」
ドンヴェラキラプターの鳴き声に反応するように、その周りに集まった5体のゴアヴェラキラプター。
その後、ドンヴェラキラプターは「ギャウ!ギャウ!」と小刻みな鳴き声を上げた。
たった一人の人間相手に何をやっている!
と言っているように見えるのはゼオンだけであろうか?
小刻みな鳴き声が終わったと思ったら、今度はその5体のゴアヴェラキラプターが襲い掛かってきた。
ゼオンは先程までのように2挺のフリューゲルを構えてトリガーを引こうとしたその時、ゴアヴェラキラプターの動きが突然変わる。
それは直線的に襲い掛かってくるのではなく、不規則に左右に跳んだり、ジグザグに走ったり。
「・・・なるほど、狙いを定めさせないつもりだな?」
そう、ゴアヴェラキラプター達は突然の自らのリーダー、ドンヴェラキラプターの登場により冷静さを取り戻したようなのだ。
「だが残念だったな。その程度で俺が狙いを外すと思ったか?」
ゼオンは馬鹿にするなと言うように呟く。
正直、今更こんな風に動かれたところで動揺もしないし、狙いも外すことはないというのが本音だ。
ゴアヴェラキラプターがまだ知能が高かったらそれに気付いただろう。
ゼオンは、素早く動きながら、動いている敵を正確に撃ち抜いてきたのだ。
だから
「無意味だ」
ドォン!ドドドォン!ドォン!
5体のゴアヴェラキラプターは一瞬でその命を刈り取られた。
そしてドンヴェラキラプターに対して背を向ける。
それを見たドンヴェラキラプターはチャンスとばかりに襲い掛かる。
ゼオンにその牙が届こうとしたその時、ターンステップを踏み、左へそれるように避けると同時に小さいながらもターンによって生まれた遠心力を使って右足を振り抜く。
「ゴギャッ!」
首にヒットしたそれは骨を砕き、ドンヴェラキラプターを吹き飛ばした。動かなくなり、倒したのかと確認の為に歩み寄るゼオンだったが。
「・・・打ち所が悪かったか」
ヒュー、ヒューと力なく呼吸するその姿をみて呟いた。
ゼオンはフリューゲルを虫の息になったドンヴェラキラプターの頭に押し当て。
ドンッ!
トリガーを引き、その命を終わらせた。
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細木が生い茂り、ジャングルのようになっている第85層。
ズズゥン・・・
ドォン・・・
「は?」
遠くから聞こえてくる音に本気でそんな声を漏らしてしまった。
ドドン
確実にどこかで戦闘が繰り広げられている。
ドガァッ!
それも近くで
「グオォォォォォォォォォォ!!!」
いや、近づいている。
バギャァ!ベキベキベキ!!ズズン!!
「はあ"ぁ!?」
ゼオンは全力で声を漏らした。
その理由は。
「なんでカイザーコング同士で争ってんだよ!?」
そう、2体のカイザーコングが争っていたのだ。
カイザーコングは下顎から生えた牙と、4つの腕が特徴の魔物だ。
そしてこの2体のカイザーコングは、それぞれ見分けが簡単につく特徴を持っていた。
一体は片目に傷が入っていて潰れている。だが、それも大分前に負った傷のようで、完全に塞がっている。
もう一体は4つある腕の内、1つがない。左の2本目の腕だ。こちらも大分前にやられたようで既に傷は塞がっている。
どちらも歴戦の猛者を思わせる傷の負い方をしている。いや、実際そうなのだろう。
片目が潰れているカイザーコングは、他のカイザーコングより、視界が悪い状態で少なくとも目の傷が塞がるまで生きている。3本腕のカイザーコングも他のカイザーコングに比べ、不利な状況で同じく傷が塞がるまで生きている。これを考えると、この2体はカイザーコングの中でもかなり強い個体ではないだろうか。
それを裏付けるように、2体の争いは壮絶なものだった。
殴り合い、取っ組み合う。その度に地響きが起こり、砂埃が巻き上がる。
片目のカイザーコングが地面に押さえ付けられたが文字通り手数が多い片目が逆転し、3本腕を押さえ付けた。
「ガァッ!アガァ!」
それぞれの腕を押さえ付け、余った1本の腕で何度も何度も顔面を殴りつける。
ゼオンはこの争いが程なくして終わることを察して、その場から離れようとしたその時。
「ウガァァッ!ガッ!アァァァッ!」
まるで口の中に何かを突っ込まれた様なカイザーコングのこもった声に思わず振り返ってしまう。
ゼオンの目に写った光景は、3本腕のカイザーコングの上顎に手をかけ、引っ張っている光景だった。
「おいおい・・・」
まさかのエグい光景につい言葉を漏らしてしまう。
ミチミチ・・・・ブチッ!
徐々に裂け始める3本腕のカイザーコングの上顎。そして、何かが引きちぎれる音。それを合図に。
ブチブチブチッ!
バギャァァッ!
3本腕のカイザーコングは上顎と下顎から顔を真っ二つに裂かれ、絶命した。
違う種類の魔物同士でが争うのは何度も見たことがあるが、同種の魔物の争いは始めて見た。
ゼオンはそんなことを考えているが、もう一つ考えなければいけないことがあった。
それは、先程の争いでかなり気が立っているカイザーコング。その近くに違う生き物がいたら、問答無用で襲い掛かる可能性が非常に高いことだ。
「あ・・・」
ゼオンはカイザーコングと目が合ってその事に気が付いたが、
「こりゃまずい」
「ゴアァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
時すでに遅し。
雄叫びをあげ、カイザーコングはゼオンに襲い掛かった。