第二十八話 宿にて
更新遅くなってすみせん!
今回も展開メチャクチャかも知れませんが
読んで頂けたら幸いです!
テューバー子爵がセバス達に引っ張られながらもギャーギャー喚いていたので。
「因果応報だバカ野郎!」
と殴って気絶させるといった事が起こりつつも、ガウェイル・リッド、テューバー子爵の両名の逮捕によって事件は終息した。
「いや~流石はゼオンだ。君が居なかったら、もう少し手こずるか逃亡を許してしまうところだったよ」
「いや、あんな贅肉だらけの奴が逃げ切れるとは思えんが?」
「くはははは!言いよるわ!」
テューバー子爵を逮捕出来た事で、かなり上機嫌のマウンティス伯爵。
「で、報酬はなにがいい?」
「そうだったな。ガウェイルをボコ・・・捕まえることが出来たから満足してしまっていたよ」
マウンティス伯爵とセバスはボコ?と首をかしげるも、直ぐに気にするのをやめた。
「そうだな・・・」
ゼオンは言いながら異空間倉庫から取り出した紙に何やら書き込んでいく。
「これに書いてあるものを用意してほしいかな?」
「どれどれ?・・・特殊な鉱石ばっかじゃねぇか。しかも魔鉱石まで!?」
紙を受け取り確認するが、その内容に驚く。
「魔鉱石は迷宮からも採れるだろ?だが、俺が集める分だけで足りるか分からんから必要最低数だな」
「鉱石だけじゃなく鉄もか。お前、鍛冶でもやるつもりか?」
「鍛冶ではないがもの作りだな」
正確には錬成なのだが、それは言うわけにはいかないだろう。
今ゼオンが見せた紙に書かれていた内容は、色々な性質を持った鉱石や魔鉱石が殆んどで、他には鉄やら鋼やらだ。
実は技巧の神ラウラドの加護により「万物生成」のスキルを手に入れて以降、元から持っていたスキル「鑑定」にも変化が起きていた。
元々「鑑定」は対象の名前、詳細、状態を見るスキルだった。人物に発動すれば名前や性別、年齢の他に所持スキルや使用できる魔法の属性が分かる。剣や鎧に使えば、名前やその性能が。道具に使えば、その使用方法まで分かるという、分析スキルである。
そして、スキル「万物生成」を得てからはその鑑定スキルに、道具や武器に使われている素材や、その製造方法まで分かるようになったのだ。
言ってしまえば、ゼオンが身に付けている「神製布のターバン」や「神製布のマント」そして「魔導神銃フリューゲル」の仕組みや構造まで見ることが出来たのだ。だからこそ、メリアに渡している「黒刀シュベルトゲベール」に、フリューゲルと同じように魔力弾を射出する仕組みを組み込めたのだ。
これらの影響からか、スキル名も変わっていた。
スキル「解析の神眼」
ゼオンは、このスキルを使ってシュベルトゲベールを完成させたことで手応えを感じ、他にもあらゆる武器やアイテムを考えていた。今、伯爵に報酬として頼んだ素材は、そのアイディアの中で必要性のあるものを作るのに必要だと判断した物ばかりだ。
因みに、「見切り」と「見極め」も、このスキルの中に統合されている。
「いつまでに用意したらいいんだ?」
「暫くはここに居るつもりだし。いつでもいいよ」
「そうか。セバス」
「はっ」
名前を呼ばれたセバスは、それだけで何かを察したのか部屋を出ていった。
「?」
これに疑問を持ったゼオンだが。
「しばらく待っていてくれ」
というマウンティス伯爵の言葉に、何かあるんだろうと思い、気にしないことにした。
それからはセバスが戻ってくるまで、色々な話をしていた訳だが。
「え?じゃあ、どうやって?」
「めんどくさかったから、その部屋をぶっ壊して脱出したんだ」
「・・・・超高難度迷宮のトラップ部屋をか!?」
内容がぶっ飛んでいた。
「当時は既にこれを持っていたからな」
と、言いながらフリューゲルを取り出す。
「見たことない武器だな」
「こいつは『魔導神銃フリューゲル』って言ってな。ガルディアの大迷宮で手に入れたアーティファクトだ」
「マドウシンジュウ?打撃武器か何かか?それに、この変な形に加工された魔鉱石はいったい」
机に置かれたフリューゲルを手に取り眺めながら訪ねた。恐らく、銃身を持ってグリップで殴ると考えたのだろう。
「まぁ、確かに打撃にも使えるが。こう使うんだ」
ゼオンはもう1つのフリューゲルをホルスターから抜き取り、魔力を少量だけ込めて。
ドンッ!
「グケッ!!」
外に向けて射撃し、窓際にとまっていた鳥を撃ち抜いた。
「これでも威力は抑えてある」
フウッと意味もなく銃口に息を吹き掛ける。
「・・・飛び道具なのか?」
「そうだ。魔力を弾にして撃ち出すものでな。この魔鉱石に魔力を溜め込むんだ」
「なるほど。つまり、それを使って部屋を破壊したと」
「そういうこと」
「お待たせしました」
丁度、話の切りが良いところでセバスが戻ってきた。その後ろには台車を押す使用人。
「・・・なんだ?」
「待たせて悪かったな。あれはお前が報酬として提示した鉱石や魔鉱石だ」
「・・・」
いくらなんでも用意するの早すぎじゃね!?
と言うのがゼオンの心情だ。
「まて!3刻も経ってないぞ!!」
「私にかかればこれくらいは雑作もないことです。寧ろ、少々時間をかけてしまったくらいですが」
「早くて3日はかかると思ったんだが?」
因みに解析の神眼で確認すると、ゼオンが提示した鉱石や魔鉱石の名前と数が出てきた。提示通りの種類と数だ。
「マウンティス家の執事たる者、これくらいのことを出来なくて何としますか」
そういえば、どこぞの黒い奴みたいな、スーパー執事だったなと、苦笑いする。
「数と種類に間違いがないか、ご確認をお願いします」
「間違いない。確認できた」
「「む?」」
今度はマウンティス伯爵とセバスが驚く番だった。
「俺は見たものを解析するスキルを持っているからな。見ただけでも充分に確認できる」
「これはこれは。そのような力まで持っておいででしたか」
「ふむ、ますます欲しくなったぞ!ゼオン!どうだ?俺の元で働けば、珍しい鉱石もすぐに手に入るし、収入も困らんぞ?」
「それは魅力的で、揺れるな」
どうだ?という視線を向けるマウンティス。
「だが断る」
この言葉にマウンティスはやっぱりねー、という表情に変わった。
「悪いな、俺も色々とやらなきゃならんことがあるんだ。」
「わかったよ」
「じゃあ俺はこれで失礼するよ」
「お、もうか?」
「この後も少々予定があってね」
「そうか。セバス、門までお送りしろ」
「かしこまりました」
セバスのこちらへ、という促しに従い歩き出すゼオン。その背に再び声をかける。
「ゼオン!此度は助かった。心から礼を言う」
「なに、ただの報復と八つ当たりをしただけさ」
実際にそれを喰らったガウェイルとテューバー子爵からすれば「ふざけんな!」と言いたくなるであろう台詞を吐いた。
「くはははは!そうか!八つ当たりか!」
だがそれはあの二人の自業自得であるため、笑い飛ばすマウンティス伯爵。ゼオンはその笑い声を背に部屋を出ていくのであった。
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「おう兄貴!遅かったのう!」
伯爵の屋敷をでたゼオンは、ルークを探さなければと思い歩を進めていたのだが、宿屋「銀の匙」を通り掛かったところでその必要は無くなった。
「お前な・・・」
銀の匙がとても賑やかになっていて、気になり入ってみるとルークがいたのだが。
「すげぇな!この兄ちゃん。20人抜きだぞ!」
「よっしゃあ!次じゃあ!誰でもいい!掛かって来んかぁい!」
そのルークを中心に、何故か腕相撲大会が開催されていた。しかも、体格的には遥かに上回るであろう屈強そうな男達を相手に20連勝しているようだった。
ルークに負けたであろう男達は皆、筋骨隆々とした体格の者ばかり。そんな男達を相手に20連勝しているのだからこいつは最早バカだ。筋肉バカだ。
ルークは元々、腕っぷしはかなり強い。ルークが扱っている武器は大剣なのだが、ただの大剣ではなく、馬を叩き斬る為に作られた特殊な剣「斬馬刀」なのだ。
それをちょいちょい片手で扱って見せることもあるのでその力は計り知れない。
純粋な力比べならば、ゼオンが負けるであろう程。むしろ肉体を強化しないと勝てない相手だ。
そんなルークを筋骨隆々とは言っても強化もしていない者がルークに勝てるはずもない。
「私がお相手いたそう!」
ふと聞こえたそんな言葉に、その発声元を見る一同。
そこにいたのは。
ビシィッ!と上半身裸になってポーズを決めているゴウゲンだった。
「我が肉体の美しさ!とくとご覧にいれよう!!」
ガシィッ!!と机に肘をついて準備万端のゴウゲン。
・・・ていうか今のが机に肘をついた音なのか?
と内心突っ込みたいゼオンを他所に。
「ほう、それは楽しみじゃのう」
と、無駄に迫力を滲ませるルークはゴウゲンの手を握り、相対する。
そして、それを確認した審判役の男が「はじめっ!」と合図した。
その瞬間
「むん!!」
ゴキャアァッ!!!
それは一瞬だった。
机が砕かれ、ルークの体が宙を舞った。
「「「「・・・・・え?」」」」
「そこまで!勝者!ゴウゲン!」
周りが唖然とする中、審判だけが冷静だった。そして、そう宣言されたゴウゲンは勝利のボーズ!とでも言うように、ビシィッ!とサイドチェストポーズを決めていた。
何が起こったのかというと。
開始の合図と共にルークの腕が机に叩き付けられたのだ。力が込められた瞬間、負けじと踏ん張ったルークはそのまま腕ごと体を持っていかれて宙を舞ったのだ。そして机は叩き付けられた衝撃で真っ二つに割れてしまった。因みに、宙を舞ったルークは腕が机についた瞬間にゴウゲンが手を放したことで、その勢いのまま壁まで吹っ飛んでいた。
ゼオンはポーズを決めているゴウゲンを見てふと思い出したことがある。
この男どこかで見たことがあるなと思っていたのだが、その理由が明らかになった。
このゴウゲンは、某錬金術師の漫画に登場する、よく脱ぐ涙脆い軍人に似ていた。
「この宿はどうなってんだよ・・・」