第二十七話 ざまぁw
今回は何故か頭が回り、結構な速度で執筆できました!
いつもここうであれば・・・
それでは第二十七話をどうぞ!
違法薬物製造「ゲル」の施設。
そこの現責任者にして、ここ、カーゼル迷宮都市の大手商会「リッド商会」の会長、ガウェイル・
リッドは今現在、目の前で起こっている出来事に付いていけず、混乱していた。
自分が高々と言い放った言葉を、声を記録するマジックアイテムに録音され、自ら証拠を作るような事をしてしまった。
それを奪うために飛び掛かったが、叶わなかった。だから傭兵のルークに命令するが、名前で呼べと聞かない。
ここまではいい。
いや、良くはないが理解できる。
だが
「所でお前はなにやっとてんだ?」
「ワシは今テューバー子爵に雇われとるんじゃ」
「へぇ?だったら今からでも良いから、契約を破棄したがいいぞ?犯罪には加担しないというお前のポリシーを曲げることになる」
「やっぱり犯罪を犯してたか。で?こいつらなにやってるんじゃ?」
「ゲルの製造だ」
「げ・・・ゲルかよ・・・」
なんでこんなに親しげなんだよぉぉぉぉぉぉぉ! !!
・・・というのが、ガウェイルが理解出来ていない部分だ。
ガウェイルにとってもまさか過ぎる、尚且つ急な展開で、思考が一瞬だが止まった。
「おいルーク!命令だ!そいつからマジックアイテムを奪うんだ!!」
ガウェイルは必死に叫ぶが。
「あ~それなんじゃがな?」
「?」
「旦那は直接の雇い主じゃないからのぉ」
「何を言っている?」
「ワシが旦那のとこに来たのはあくまでも、雇い主であるテューバー子爵の命令で、旦那の邪魔をしようとする輩を排除しろって言われてんだわ」
だから、と続けるルーク。
「旦那の命令を聞く筋合いはないのよ」
「貴様!傭兵の分際d・・・」
「それともう1つ!」
ガウェイルの言葉に被せるように大声で言う。
「ワシは犯罪には加担しないんじゃ。よって、犯罪を犯していると判明した現時点を持って、契約は破棄させてもらう!ええの」
「そんな勝手が!」
「残念だが許されるんだ」
ゼオンが口を挟む。
ルークは冒険者ギルドで主に傭兵稼業を行っている。
そしてギルド裏の、というより暗黙の掟がこれ。
『依頼主が犯罪を行っている場合、および依頼内容が犯罪への加担、関与の場合は。冒険者の独断で契約を破棄できる』
というもの。
そしてルークはそれをそのままポリシーにして活動しているのだ。
「もっとも、そうするには明確な証拠が必要になるがの!」
「だが、その証拠は既に持っている」
ガウェイルは完全に詰んでいた。いや、ゼオンにゲルの製造を知られた時点で詰んでいるのだが。
「で、だ」
それはそれとして、と言うように話を切り替えるゼオン。
「な、なんだ?」
「お前は俺に対して何をしたか覚えてるか?」
「・・・!」
「俺の女に何をしようとした?」
「女?」
女にはルークが反応した。
「お前は俺に牙を向いただけでなく、俺の女ににまで手を出そうとしやがったな?」
鋭い目付きでガウェイルを睨む。
「・・・・覚悟は出来てるんだろうな、おい」
刃を向けたんだから覚悟が出来てない筈が無いよな?と言いながらガウェイルに歩み寄るゼオンから放たれる殺気が凄まじい。
それを見ているルークは、こういうやつじゃったわ、と昔を思い出していた。
『人に刃を向けていいのは、刃を向けられる覚悟がある者だけだ』
ゼオンに言われた言葉だった。その重みのある言葉は、今もルークの中に響いている。これがゼオンを兄貴と呼ぶ理由だ。ゼオンという人物に惚れ込んでいるのだ。
だが決してゲイではない、ということをここに記しておく。
閑話休題。
ゼオンは怒っていた。
「ひぃぃぃ!ま、まて!!」
尻餅をついてガクガクと震えるガウェイル。
「うるせぇ!」
バキィッ!
「へぶぅっ!」
それを容赦なく蹴り飛ばすゼオン。転がったガウェイルを更に踏みつける。
「ぎはぁっ!」
「お前は俺の大切なものに手を出そうとした。許さんぞ」
怒鳴ることもなく坦々と言われる言葉、だが怒りを感じさせる。
胸ぐらを掴み、持ち上げて床に叩きつける。そして懐(正確には異空間倉庫)から回復薬を取り出してガウェイルにぶっかけた。
みるみる内に傷や痣が消えていく。
「・・・え?」
傷を癒されたことで、もしかして許してくれたのか?と思いゼオンを見上げるが。
「・・・・あ」
そこにあったのは冷たく見下す視線のみだった。
「制裁だ」
この後もしばらくはボッコボコにされては回復薬をかけられて癒され、癒されてはボッコボコにされてを繰り返し、それが終わった頃にはガウェイルの心は完全に、そして完膚なきまでに砕き尽くされていた。
「すみませんでしたもう何もしません許してください殴らないでください蹴らないでくださいお願いします生まれてきてすみませんでした心を入れかえます如何なる処罰も受け入れます奴隷でもなんでもいいです家畜にだってなりますだからどうかもうやめてくださいすみませんでしたもう何もしません許してください殴らないでください蹴らないでくださいお願いします生まれてきてすみませんでした心を入れかえます如何なる・・・・」
・・・もはや廃人と化していた。
「兄貴、こりゃあやり過ぎじゃなかろうか」
「そうか?」
「顔中シワだらけじゃし、髪も真っ白じゃ。しかもブヅブツとなんか呟いとるし」
「そうだな、うるせぇから黙ってろ」
ゼオンの一言でブヅブツ呟いていたガウェイルがピタリとそれをやめた。
「よし」
「ペットか」
ルークの目にはしつけの行き届いたペットとその飼い主に見えたようだ。
それからしばらくして、マウンティス伯爵の私兵が到着した。テューバー子爵はともかく、ガウェイルは既にゼオンは伯爵の元へゲルを持っていったことで罪を犯しているのは明確だった。
全滅している警備兵と髪が真っ白になったガウェイルに驚く私兵達だが、流石はプロ。すぐに平静になり身柄を拘束して連れていっていた。
「ところでじゃ、兄貴」
「なんだ?」
「女おったんか!?」
「今それ言う?」
ルークにはどうしても気になったらしい。ゼオンは別に隠すような事でもないので、恋人にサラが居ることともう一人、低ランクの冒険者で付いてきている女性が一人居ることを伝えた。
「女性二人と活動とか羨ましいぞ!ええのう!」
「だぁぁぁ!うるせえ!」
「その冒険者を紹介してくれんか?」
「お前そんな女好きだっけ?」
「ちがうぞ。兄貴が教えていると言うから、どんな戦いをするのか気になるんじゃ」
意表を突かれたゼオンは、あぁそっち?と答えるしかなかった。
「これを伯爵んとこに持っていくから、その後な?」
「おう!」
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『ふーん・・・・じゃあ、確認なんだけど。テューバー子爵はこの件に関与しているんだな?』
『ふははは!そうだ!関与しているよ。というより、テューバー子爵の指示でやっていることだ!だが、証拠がない!』
「どうよ、これ」
「ふむ・・・」
「巧妙な誘導ですなゼオン殿」
録音された音声を再生し、伯爵とセバスに確認してもらう。
「誘導じゃない。確認したらガウェイルが勝手に喋ったんだよ」
それを誘導というんだが・・・
伯爵とセバスは内心そう思った。
ゼオンは見事に証拠を持ち帰った。だがまさか証拠書類などてはなく、マジックアイテムを使って証拠を提示するとは思わなかった。それでもやはり、失敗はしなかった。失敗どころか、ちゃっかり報復まで済ませているのだから達が悪い。
「これでテューバー子爵に逮捕状をだせるな」
マウンティス伯爵ニヤリと笑って言う。「念願の逮捕状だ!」とか言いそうな勢いだ。
「くはははは!念願の逮捕状だ!」
本当に言ったよ・・・どんだけテューバー子爵嫌ってんだよ!と思うが色んな不正をやっているようだから仕方がない。
「テューバー子爵の捕縛だが、これもゼオン。君に頼みたい」
「俺に?」
「そうだ。セバスと共に私の騎士を連れてテューバー子爵を捕縛せよ。逮捕状は今出来た」
「仕事はやっ!」
話ながら何やら書いているなと思ったゼオンだったが、逮捕状とは考えなかったようだ。
こうしてゼオンとセバス、そして騎士3名を連れてテューバー子爵の館に向かうのだった。
「報告するだけのつもりだったんだがな・・・」
ぼやく、だがもう遅い。
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時刻は15の刻。
テューバー子爵の館に5つの人影が近付いてくる。
その5人は言うまでもなくゼオン達だ。
ゼオン達は門兵を無視して中に入ろうとするが。
「止まれ!なんのつもりだ!?」
案の定止められる。
「テューバー子爵を逮捕するつもりだ」
「た、逮捕?」
何を言ってんだ?と言いたげな表情の門兵。
「これ、逮捕状な?」
ピラリと1枚の紙を見せる。
見ると、確かに逮捕状であるのが確認できる。そして、マウンティス伯爵の印か押されている。
「・・・お通りください」
門兵はそう言うしかなかった。
「ところで子爵どの部屋にいるんだ?」
「へ?」
「今子爵が居そうな部屋だよ」
「そ、それならこの時間は書斎ではないでしょうか?あの部屋です」
そう言って指を指す門兵。その先を辿ると、1つの部屋を指していた。
「どうも。んじゃ、俺は先に行ってるわ」
「「「え?」」
ゼオンは周りの困惑の声も無視して走り出す。
そのまま高く跳躍し、「空跳」で更に距離を稼いでテューバー子爵が居るであろう部屋に窓をぶち破りながら突っ込んいった。
「予想外の行動ばかりですな」
ホッホッホッ!と笑うセバスと唖然としている騎士二人。
「さて、我々も向かいましょう」
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ガシャァッ!!!
「ひっ!」
突然窓をぶち破って侵入してきた者に驚くテューバー子爵。その拍子に無駄に付いている脂肪が揺れる。
「な、なんだ貴様は!?」
「声、上擦ってんぞ」
驚きのあまり声が裏返ってしまった様子。
「私が誰か知ってのことか!」
「あぁ、知ってる。不正ばかりやってまともな仕事もしない馬鹿貴族のテューバー子爵だろ?」
テューバー子爵の怒りパラメーターが一気に跳ね上がる。
「そんな貴方にとっては悪い、他の人にとってへ良いニュースがあるんだ」
「?」
「逮捕状が出てる。罪状は色々あるなかの1つ、違法薬物製造関与だな」
「な、なに!?違法薬物!?」
「そう」
「な、なな、何のことか私にはさっぱりだ」
お前誤魔化せてねぇよ、と言いたくなる程に動揺しまくっている。
「証拠もないのにそんな言い掛かりはやめて欲しいわ!」
「んん?じゃあ、ガウェイルの書斎にあったあんたからの指示の書類の数々は何なんだろうな?」
「あ、あれは!!」
「あれってどれだ?ガウェイルの書斎には何もなかったぞ?」
「んがぁぁぁぁ!!」
抵抗の意思をボッキリとへし折る事を忘れない。
「あと、安心しろ。証拠はちゃんと別にあるから」
「ぐっ、おおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
壁に立て掛けてある剣を取りゼオンに斬りかかった。
「抵抗は許さんよ」
素手で剣を払いのけ、バランスを崩したところで顔面に拳を叩き込み、股間に蹴りを入れる。
「ぐふぅおおぉぉぉぉう!!」
テューバー子爵が悶絶した所でセバス達も到着した。
「己の罪も認めずに抵抗するとは。いやはや愚かですな」
そう言いながらテューバー子爵を拘束して連れていこうとするが。
「ぐっ!離せ!私は子爵であるぞ!」
「申し訳ありませんが、こちとらマウンティス伯爵の命令ですので」
「は、伯爵の!?」
ガーン・・・・と崩れ落ちる。
「悪いことばかりするからだ」
ゼオンは冷たく呟いた。
「ざまぁw」
と