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第二十六話 証拠

毎回更新が遅くてすみません!


本当に展開が急になってる気がする第二十六話です!


それではどうぞ!

「あなたへの依頼内容は既に話しているとマウンティスから聞いているけど。本当かしら?」

「あぁ。・・・ていうか伯爵を呼び捨てにしていいのか?」

「いいのよ。マウンティス家とは彼の曾祖父の代からの付き合いだし」


あんた何歳だ?と言いそうになったゼオンは何とかそれを堪える。


実際にそれを言ったらブッ飛ばされそうだから。


「話を戻すけど、本当にできるのかしら?」

「それはマスターもわかってるんじゃないのか?」

「・・・そうね。手続きをするからギルドカードを見せてもらえない?」


ゼオンは今まで門番やらに見せていたギルドカードとは違う、本当の(・・・)カードを渡す。


「・・・・!?」


それを見てカリーナは大きく目を見開く。


「ランク0!?あ、ありえない!」

「そのカードは本物だ」

「普段からこのカードを使っているの?」

「いや、いつもはこっちだ」


そう言っていつも使っている方のカードを渡す。

これはギルド総本部のグランドマスターから直々に渡された、偽物のギルドカード。

因みにこのカードにはランク2と表示されている。


「まさかランク0の冒険者が実在するなんて・・・」


それ故の異質さなのか、異質故のこのランクなのか。カリーナには計れないものだった。


「ま、まぁいいわ。話を続ける。これは緊急の極秘依頼だから、失敗は許されない。そのつもりでね」

「わかっている」


その瞬間、一瞬だが殺気が溢れた。


「ガウェイルには個人的に恨みがあるんでな」

「恨み?」

「俺のアーティファクトを散々ガラクタ扱いした挙げ句、俺の女に手を出そうとしやがったからな」

「そ、そう」


カリーナは戸惑い気味に相槌を打って書類にサインをする。ゼオンはそのまま依頼を受理する手続きを済ませ、応接室を出るのだった。


その背中を見送るカリーナは一人考えていた。


彼を一目見た瞬間、この依頼を失敗するのではないかという考えが消え失せてしまった理由が、渡されたギルドカードを見た瞬間に何となく理解できた気がした。恐らくこの先、何か大きな事を成し遂げるのではないかと思える。それも、この世界を震撼させる大きな何かを。


願わくば、間近でそれを見届けたい。


カリーナの目の輝きや表情が、恋する乙女のそれに近いものとなっていたことに本人は気が付いていない。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






ー薬物製造施設付近ー




「やるか」


軽いノリで呟くゼオン。だが、その呟きには重さを感じさせる。


その眼には獰猛な光。


胸の内にあるのは、大切なもの(サラ)に手を出そうとした事に対する怒りだった。


「覚悟しとけよ?」


まずは製造施設に再び侵入者して、テューバー子爵関与の証拠になりそうなものを入手する。


その後は?


決まっている








制裁だ







どうするか、段取りを決めて施設の中へと足を踏み入れた。


それも堂々と。


その結果。


「そこのお前、止まれ!」


見つかることとなる。


「何者だ?」


腰の剣に手を添えて警戒の色を示しながら近づいてくる5人の警備兵達。


「お、おい!」


その中の一人が慌てて声をあげる。


「こいつ!この前の侵入者だ!」


前回侵入した時、ゼオンが翻弄した警備兵の一人が混じっていたのだ。

この言葉を切っ掛けに全員が剣を抜いた。


それを見たゼオンは。


「おー、覚えててくれたのか」


と言うのみだった。


ただ平然と、悠然と、この状況などなんでもないと言うが如く。そして更に口を開く。


「この際だ、この前のリベンジのチャンスをやるとしよう」


完全に舐められている。そう悟った警備兵達からは強い殺気が溢れ始めた。


「殺る気は充分ってとこか?」


煽るゼオン。


「この前は逃れることができたからと、舐めるでないぞ!」

「今日は逃がさん!」


刹那、同時に襲いかかってくる。その殺意を剣にのせて。


だが。


ガゴゴッ!


早業だった。


同時に襲いかかってきた警備兵全員を蹴り飛ばしたのだ。


「うぐっ!」


だが、大したダメージを受けた様子はない。それもそのはず。ゼオンは蹴りの瞬間にそれぞれを気絶させず、尚且つ吹き飛ばせるという通常では考えられない絶妙な手加減をやってのけたのだから。


「さぁ、かかってこいよ」


わざと隙をつくる。



ピィィィィィィィ!



他所を巡回中の警備兵を呼ぶための笛が鳴り響く。


それを見届けたゼオンは、顔を隠すターバンの中でニヤリと笑う。



第一段階終了、と





第二段階に入ったゼオンは施設内を走り回りながら、魔導神銃「フリューゲル」も使わず、全てを自身の格闘技術を用いて警備兵を次々と薙ぎ倒していく。


しかし、次から次に襲いかかる警備兵にゼオンはその物量に少し押されていた。


「くっそ!流石に多すぎたな」


前回は逃げに徹していた為に、数は意味がなかった。しかし今回は違う。


証拠になる物を探さなければならないのだ。


その為、警備兵を全員倒してからゆっくり探そうと考えていたのだ。


「やっぱり探すのはやめだ」


そう呟いた瞬間、ゼオンの視界の端に剣を大きく振りかぶった警備兵が映った。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「ガウェイル様!」


バタァン!と荒々しく開かれた扉。


「なんだ!騒がしい!」

「報告があります!」

「報告?」

「先日の侵入者が再び侵入した模様です!」

「なんだと!」


先日の侵入者、恐らくはあの冒険者であろう。今度こそ逃がしてはいけない。


絶対に逃がすな!


そう指示しようとした瞬間にそれは必要ないと分かった。


何故なら。


「大半の警備兵がやられたようですが、なんとか捕らえる事が出来たと報告がありました!」


やったぞ!


ガウェイルは思考の中で盛大に歓喜した。


これで屈辱を晴らせる、仕返しができる、自分以上の屈辱を与えられる、自分以上の苦汁を飲ませることができる、後悔させてやることができる。


「クククク・・・・簡単には死なさんぞ」


施設へと向けて歩きだした。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





ガウェイルが施設へと入った瞬間に目にした光景。それは、倒れ伏す警備兵達だった。


「な、なんだ・・・これは」

「侵入者の抵抗で大半の者がやられたようです」

「・・・ッチ!まぁいい。この落とし前はきっちりつけてもらうさ」


ガウェイルは報告に来た男と、テューバー子爵が送り込んだ「赤眼のルーク」なる人物を伴い、先に進む。


「捕らえた侵入者は何処にいる?」

「ガウェイル様の書斎に監禁しております」

「ふん!気が利くな」


ガウェイルはニタリと笑みを浮かべながら書斎へと向かう。


「連れの女二人も後で捕らえよう。女二人の前でたっぷり痛め付けたあとは、奴の目の前で女二人を犯してやる」


以前決めていた報復の計画をここで実行しようと考える。


「・・・旦那ぁ、おかしくねぇか?倒れた警備兵の数が多すぎるぜ。こりゃあ、大半って言うよりほぼ全員じゃないか?」


傭兵のルークが口を開くが。


「そんなことはどうでもいい!はやく侵入者の所へ行くぞ!」


聞く耳を持たれなかった。


それに少し傷つきながらもルークはガウェイルに付いていき、書斎に到着する。


「はっはぁ!」


ガウェイルが歓喜の笑い声と共にその扉を開く。

そこにはボロボロになり、縛り上げられた冒険者、ゼオンの姿。








ではなく。


優雅にガウェイルの仕事机に座り寛いでいるゼオンの姿があった。


「よお、待ってたぜ?」

「きっ!貴様!捕らえられたのではなかったのか!?」

「ん?あぁ、あれはあんたを呼ぶための嘘だ」


物量に押されていたとは言っても所詮普通の人間だ。ターバンを(こん)にして薙ぎ倒していったのだ。そして、一人を残して全滅させて、捕らえたと嘘の報告をさせたのだ。


「わざわざ来てくれてありがとさん」

「きさまぁ!!」

「まぁ落ち着け。俺はただテューバー子爵がここの薬物製造に関与しているかどうかの証拠を探しにきただけなんだ」

「なんだと?」

「だがなぁ、証拠になるような書類も品物も見つからなかったよ」


ゼオンはわざとらしく、肩を竦めてヤレヤレといった風に首をふる。


「クックックッ!そりゃあそうだろ?書類も品物も全部俺が処分してしまっているからなぁ!」


声を高々と張り上げるガウェイル。


「処分?」

「そうだ、テューバー子爵にも言われているからな。万一の為に書類は全部燃やせとな!」


その様子は「証拠など残していると思うか?馬鹿め!」と言っているようだ。


「ふーん・・・・じゃあ、確認なんだけど。テューバー子爵はこの件に関与しているんだな?」

「ふははは!そうだ!関与しているよ。というより、テューバー子爵の指示でやっていることだ!だが、証拠がない!」


勝ち誇るように言うガウェイルは完全に油断しきっている。


「じゃあ、その事はマウンティス伯爵に報告させてもらうわ」

「報告してどうする!?証拠がないではないか!!」


この言葉を聞いてゼオンはニヤリと笑う。


「確かに証拠はない。さっきまではな」

「さっきまでは?」

「そ。証拠がないなら作ればいい」

「まさか俺がさっき言ったことを証拠にでもするのか?ふははははは!どうやって証拠にするんだ」





『ふーん・・・・じゃあ、確認なんだけど。テューバー子爵はこの件に関与しているんだな?』

『ふははは!そうだ!関与しているよ。というより、テューバー子爵の指示でやっていることだ!だが、証拠がない!』



「なんだ・・・俺の声?」

「あんたの自白は全部これに録音させてもらったぜ?」


困惑するガウェイルを他所に、ゼオンは懐から、直方体の鉱石の様なものを取り出した。


「こいつは音を記録するマジックアイテムでな?これを伯爵のとこに持っていけば証拠になるって訳さ」

「き・・・き!・・・きさまぁ!!それをよこせぇ!!!」

「いやだ」


ゼオンからマジックアイテムを奪おうと飛び掛かるが、あっさりと避けられる。


「傭兵!命令だ!マジックアイテムを奪いとれぇ!」


敵わない分かるや、傭兵に命令する。


「旦那、ワシはルークって名前だ。ちゃんと名前で呼んでくれなきゃ」

「そんな事はどうでもいいだろ!?命令だ!はやくしろ!」


ガウェイルと傭兵のやり取りを聞いていたゼオンは傭兵の名前に反応した。


「・・・ルーク?」


ゼオンは傭兵を見る。


銀髪の頭に赤い目。背中には大剣。


「赤眼のルークか?」

「お?兄ちゃんは俺の名前を呼ぶか!」


名前に拘るこの性格。


「久しぶりだな!ルーク・バレス!」

「あ?」

「ゼオンだ」


ゼオンはターバンを外してルークに素顔を見せた。


「ゼオンの兄貴!」


ゼオンは「赤眼」の異名を持つこの男とは古い友人だった。

思わぬ所での再会を喜ぶ。









ガウェイルを放置して。

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