第二十四話 違法薬物 ゲル
この話を書いてて気が付きました。
こういうき貴族とかが絡んでくる話は苦手だということに・・・
でもそんな苦手なものをなるべく無くしたいので
このまま行きます!
は?これ意味がわかんねぇし
な部分もあると思いますが、これからも
「最強の迷宮攻略者」をお願いします!
リッド商会に関する噂が流れて1週間。
とある施設の中ではそれなりの人数が忙しく働かされていた。それ以外に、その働かされている人達を監視しつつ、施設の警備を行っている者達。
ここは、ヤドク草の神経毒を利用した違法薬物「ゲル」の製造施設だ。
その施設の中に人知れず入っていく、否。侵入していく1つの影があった。
まぁ、それはゼオンなのだが。
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「さて、うまく入り込むことには成功したが。この後どうしようかな」
ちなみに、ここに侵入したのは単なる思い付きだった。そして何故、違法薬物「ゲル」の製造施設を特定して侵入できたのかというと。単純に襲撃者たちの魔力を記憶して、それをスキル「魔力探知」で追跡したのだ。
「・・・・適当に現物を拝借して、領主のとこに持っていこう」
ゼオンの中では完全に某潜入ゲーム「メタル○ア」の気分だった。
物陰に隠れて警備をやり過ごしたり、天井に張り付いて移動したり、魔力念動力を使って物音を立てて警備の気をそらしたり。色々な方法で奧へ奧へと進んでいく。
そうしてゼオンは1つの部屋に辿り着く。
「部屋っつうか倉庫だなこりゃ」
それは製造したゲルを保管する為の部屋、ではなく倉庫だった。白い粉末状のゲルを小瓶に入れて、それを木箱に詰めて重ね置きしている。
一応、スキル「鑑定」でも確認したが。
違法薬物「ゲル」:ヤドク草の神経毒を利用した薬物で、強い開放感や快感を得る作用がある。非常に中毒性が高く、使用し続ければ、幻覚が見え始めたり幻聴が聞こえ始めたりして、最終的には死亡に到る。
「・・・うん、間違いないね。うん」
ゼオンはゲルが入っている小瓶を1つ手に取り、それを少し眺めてから異空間倉庫に収納した。
「誰かいるのか?」
二人の警備兵が倉庫へと入ってきた。ゼオンはすかさず隠れる。
「おい!誰かいるんなら返事をしろ!」
「ほんとにいるのか?」
「確かに声のようなのが聞こえたんだよ!」
「なんて聞こえたんだよ」
「『・・・うん、間違いないね。うん』て言ってた」
完全にゼオンの独り言を聞かれている。
「意味分からんわ!まさかお前ゲル使ってんじゃないだろうな!」
「使ってねぇよ!」
「じゃあ、疲れてるんだよ。何が『間違いないね』だよ。もう行くぞ!」
「あ!まてよ!」
そんなやり取りをしがら倉庫を離れていく警備。
それを見送ったゼオンは。
「・・・アホだな」
と、つ呟いたその時。
「やっぱり誰かいるぞ!」
どんだけ地獄耳なんだよ!!
と物凄い勢いで内心突っ込む。
「誰かいるのは確かなのか?」
「納得できなかったから、聴覚強化をしていた」
「・・・なら、誰かいるってことだな」
「そこにいるのは誰だ!」
その言葉を合図に二人の警備兵は剣を抜いて構えた。
それに対してゼオンがとった行動は。
「俺だぁ!」
物陰から飛び出して一人に飛び蹴りを叩き込んだ。
「な、なに!?」
突然相方がやられたことに、事態の理解が出来なかったもう一人の警備兵。その視界に迫る拳。
「うわぁ!?」
ドサッ!
彼はあまりの驚きに腰を抜かしてしまい、尻餅を突いた。だがそのお陰でゼオンの拳を偶然にも避ける形となり、気を失うことなく、侵入者を知らせる笛を鳴らす隙ができた。
ピイィィィィィィィィィィィィィィ!!
高く響き渡る笛の音は、他の場所を巡回していた警備兵を呼ぶのに充分なものだった。笛が鳴ってから1分もせずに次々と警備兵が集まり、あっという間にゼオンを取り囲んでしまった。
「貴様!何者だ!」
「侵入者だよ。見て分からないのか?」
「そんな口をたたけるのか?貴様こそ状況を見て分からないのか?」
既に全員剣を抜いてゼオンへとその切っ先を向けていた。それを見渡して言う。
「ん?どういう状況なんだ?」
「囲まれて、逃げ場はないということだ!捕らえろ!」
その瞬間、一斉に襲いかかる警備兵達。
「あらよっと!」
それを難なく跳躍して避けた。
「どこに逃げ場はないって?」
襲いかかる警備兵達を飛び越えて、馬鹿にしたように言った。
「ば~~~~~か」
馬鹿にしていた。
それはもう見下したように、露骨にニヤリと笑って。
「絶対に捕らえろぉぉぉ!!」
額に青筋を浮かべて叫んだ。
結局、ゼオンを捕らえる事もできず、呆気なく逃がしてしまった。
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翌日
ゼオンはカーゼル迷宮都市の管理を任されている領主、クラディ・マウンティス伯爵が住む館へと足を運んでいた。
「何か用か?」
二人いる門兵のうち一人が声をかける。
「できればマウンティス伯爵に取り次いでもらいたいんだが」
その言葉に顔をしかめる門兵。
「アポは?」
「ない」
「話にならんな」
「だが、これはアポの代わりになるんじゃないか?」
そう言ってゼオンが取り出したのは、ギルドカードだった。
「こ、高ランク冒険者だったのか!?」
「あぁ、そうだ」
「本当に何の用で来たんだ?」
「最近流れている噂を知っているか?」
「・・・リッド商会とテューバー子爵のことか」
ゼオンが流させた噂は瞬く間に広がっており、この門兵がしっていても不思議ではなかった。
「ただでさえリッド商会とテューバー子爵の行っている不正を抑えることが出来ていないと言うのに、そこに流れる噂だ。頭を抱えておられる」
「その事について、伯爵に直接話をしたいのさ」
その一言で門兵は覚った。この男は何か真実を知っているのだと。
「その内容とは?」
「悪いが、伯爵にしか今は言えないんだ」
「・・・・・・分かった。完全には信じきれないが、どちらに転んでもこの問題が片付く切っ掛けにはなるだろう。マウル、伯爵に客人が来たことを伝えてきてくれ。あと案内人もな」
「え?あ、はい!」
マウルと呼ばれたもう一人の門兵は急いで中へと消えていった。
それから少しして案内人を連れて戻って来くる。
「私はマウンティス伯爵の執事兼護衛を務めております。セバスと申す者です」
と自己紹介してきた人物は、執事服を着た男性で、THE執事!という貫禄を堂々と出しており、何でもこなしてしまいそうな雰囲気がハンパない。そして、それと同時に強者の迫力も滲み出ている。頭には白髪が目立ってはいるものの、それらのせいで年齢の予想が全然出来ない。
「執事兼護衛?」
「はい。言葉の通り、伯爵の身の回りのお世話と護衛をさせていただいております」
「俺はゼオンという。なるほど、あんた程の人物が常に伯爵の側に居れば、暗殺なんかは失敗に終わるだろうな」
ゼオンの言葉を聞いてセバスは内心ニヤリと笑う。会ってすぐの自分に対して、そこまでの評価をするのかと。そこまでの評価をする人物、ゼオンの持っている実力は本物だと分かる。本物どころか、それを更に研ぎ澄ましているかのようだと。
このたった数秒のやり取りでゼオンとセバスは、お互いがお互いの持つ力を図りあい、認めあったのだ。
本物だと。
この二人にはそれが出来るだけの実力を持っていた。
「話は伺っております。こちらへどうぞ」
セバスの案内に従い、後をついていく。
ゼオンに背を向けているにも関わらず隙がない。やはりただ者ではないという結論に到る。
「セバス、だったか?」
「はい」
「元々冒険者か傭兵か、もしくはどっかの騎士団にでも入っていたのか?」
「いえ、私はここで生まれ、幼い頃から執事としての教育を受け続けておりました」
「じゃあどこでそこまでの力を?」
「マウンティス家の執事たるもの。何の力も持っていなければ務まりません」
どこの黒い執事だよ!と突っ込みそうになったのを飲み込む。
「しかしゼオン様こそ、かなりの力をお持ちのようですが?その顔を隠す為に巻いているターバンも、相手に表情を読ませないためでしょう?」
戦いにおいて表情を読まれるということは、自分がどういう状況か知られてしまうということ。
例えば、苦しい顔をしていれば何の手立てもないと分かる。
「ですが、ゼオン様にはもう必要ないのでは?」
「・・・確かにな」
と、こんな話をしているところで伯爵の執務室につき、セバスは馴れた様子でノックする。
そのノックに、部屋の奥から返事が返ってくる。ただ一言、入れ、と。
「失礼します。客人をお連れしました」
「うむ」
書類が積まれた机で印を押したり、何か書き込んだりしている男。威厳のある顔つきで、歳は30代だと予想できる。結構筋肉質な体をしているようで、服の上からでも何となく分かる。傍らに剣を置いていることからこの男、マウンティス伯爵自身も戦えるのだろう。その隣には秘書と思われる女性。キリッとした表情が似合う綺麗系だ。
そして周りにも3人程兵士がいて、こちらも何か作業をしている。恐らく護衛を兼ねた仕事の補佐的なものではないだろうか。
「すまん、仕事がまだ山積みでな。悪いが仕事をしながら話を聞かせてもらう」
「構いません。ですが、二人きりにはなれませんか?」
「どういうことだ?」
作業の手を止めてゼオンを見る。その目は何を企んでいる?と探りを入れるような眼差しだった。
「この中にテューバー子爵の息が掛かった者がいるかもしれませんので」
「ほう?私の部下が信用できぬと?」
「リッド商会長も言ってましたよ?伯爵の元にテューバー子爵の私兵を紛れさせていると」
マウンティス伯爵成る程なと納得した様子。それを見たゼオンは、そんな簡単に納得できんの?と思わずにはいられなかった。
「まぁ、その辺は心配御無用というものだ」
「心配御無用とは?」
「テューバー子爵と繋がっている可能性のある者は既に把握しております」
どうやら噂が広まり始めた頃に、これはただの噂ではなく誰かが意図的に流したものだと直感したらしい。そして、同時に自分達ではその噂の薬物製造施設の特定もできないと考えた。それは何故か。
テューバー子爵の私兵等が伯爵の所に紛れ込んで、何らかの工作をされている可能性が浮上したのだそうだ。
「伯爵、嘘をおっしゃってはなりません。テューバー子爵を泳がせるために、今まで放置していたではありませんか」
セバスがそんな指摘をする。
「何故放置を?」
「まともに責務も果たさず、権力ばかりを振るっている。そんな横暴な者は貴族の資格はない。だから、泳がせて摘発できるネタを探していたのさ」
やはりテューバー子爵はダメ貴族だったか、と内心納得するゼオン。
そして、
「じゃあ、これはテューバーとかいうダメ貴族を摘発するのに多少使えるのではないですか?」
そう言って取り出したのは、白い粉末が入った小瓶。
「セバス」
「はっ。よろしいですか?」
「あぁ」
伯爵の一言でゼオンから小瓶をもらう。そのこ小瓶を一度逆さまにしてまた戻した。蓋のコルクを抜いて、先程逆さまにしたことで裏に付着した粉を人差し指ですくいとった。その粉の匂いを嗅いで、ペロリと舐め、懐からハンカチを取り出してペッ!と吐き出す。
そして
「ゲルですね」
と断定した。
何をしているのかと見ていたゼオンは、セバスの行動に、あんた探偵になれるよ?と言いたくなったのはここだけの話。
それは置いておき。
1つの提案を持ちかけた。
「もし、俺に依頼してくれるのなら、これへのテューバー子爵の関与を決定付ける証拠を探してきますが。どうです?」
「なんだと?」
「伯爵の代わりに、俺が動きます。リッド商会長との間には個人的なトラブルが起こっているので、その解決のついでです」
そこでゼオンはリッド商会を潰すつもりだと宣言した。
「くはははははははは!なるほどな!」
伯爵がゼオンに依頼したとなれば、商会を1つ潰しても罪には問われない。
「だがどうする?リッド商会はこの都市では最大の商会だぞ?」
「代わりになってくれそうな伝がある」
「ならば良し!リッド商会の薬物製造による罪は確定している。後はテューバー子爵関与の証拠を見つけるのみ!その際にリッド商会が何らかの理由で潰れたとしても文句は言わせん!」
「ありがとうございます」
こうしてゼオンはリッド商会長、ガウェイル・リッドに対し、公的に報復への報復が出来る口実を得た。
「俺に牙を剥いたんだ。俺だけじゃない、大切な人にまで手を出そうとした。この報いは大きいぞ?」
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