表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/45

第二十三話 襲撃者

久しぶりにここまで間を開けずに更新できました!モリータです。


ですが、展開が強引かもしれません。


もっと構成を頑張ります・・・


それでは第二十三話をどうぞ!

大きすぎる損失をしたガウェイルは、違法薬物による利益を伸ばそうとすると同時にもう1つ、あることを行っていた。


「なるほど、あの男の周りには二人の女がいて、内一人とは恋仲にあるのか」

「そのようです」

「赤髪の女と、白い髪の女、どっちとだ?」

「白い髪の方ですね。宿でも赤い髪の女は別の部屋のようですので」


宿と聞いてガウェイルの目尻がピクリと反応する。


「銀の匙とかいう、横着な宿屋だったな?」

「はい、テューバー子爵の騎士もあの冒険者に追い返されたようです」

「貴族に歯向かうつもりなのか?」

「それは分かりませんね。では、報告は以上です」



そう言って、次の指示を待つ男。彼は情報収集や暗殺などの影の仕事において、ガウェイルが一番頼りにしている人物だった。


「赤髪の女は殺して、白い髪の女は拐ってヤツの目の前で無惨に殺してやろうか。いや、凌辱しつくしてやったがいいか?」

「では、赤髪の方は殺して、白髪の方は拐うということでよろしいですか?」

「・・・いや、女は二人とも拐え。ヤツを誘い出して、その目の前で二人を大人数で犯し尽くしてやる。その上で、ヤツの身ぐるみを全て剥いで放り出してやろう」

「その後、女二人はいかがなさいますか?」

「地下室で客の相手でもしてもらう。損失分を全て取り返すまでな!」


クツクツと黒い感情に包まれた笑いをあげながら、どうやって自分と同じだけの、否、それ以上の屈辱を植え付けてやろうかと考えるガウェイルは憎しみの対象、ゼオンの逆鱗に触れようとしていることに気が付く筈もなかった。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「・・・・と言うわけで。もしかしたらっていうか、ほぼ確実にリッド商会の会長さんは報復に来ると思われるので気を付けてな」


宿屋「銀の匙」に戻ったゼオンは、サラと二人でメリアの部屋に押し入り、先程の出来事、ガウェイルとの取引の事を話した。


「あ~もう!なんでそういうことしちゃうかな!」

「え?だってムカついたし」

「そんな理由!?これでテューバー子爵だけでなく、リッド商会にも目をつけられたってことよね!」

「俺的には正当な理由だ」

「あんた的にはでしょ!?もし報復に来たらどうするのよ!」

「潰す」

「もう・・・いやだこの人」


メリアは正にorzという感じに沈んだ。


「報復って言っても、どんな事をしてくるんだろうか?」

「影の者を寄越して暗殺とか、お前ら二人を拐ってなんかするとか、どうせそんなんだろ」

「なるほどな。どう対処するんだ?」

「今からまた迷宮に行くか、ウレイルの街に帰って、奴等に無駄足を踏ませるってのもありだな」


報復行動に対して、子供がするような発想で対処しようとしていることに呆れた表情をするメリアと、その様子を見てクスリと笑うサラ。


「あ、でも、あいつらが怖くて逃げたとか思われるのはなんか(しゃく)なんだよな。やめよ」


これまた子供みたいな理由で却下する。


「ねえ、この事態を重く捉えてないでしょ?」


言ってしまえば相手をなめきった態度にしか見えない。


だが、ゼオンとしては何をされても対処できる自信がある故のこと。自信過剰では?と思うかも知れないが、彼は3つの超高難度迷宮を攻略しているのだ。超高難度迷宮では思わぬ事態というものが茶飯事に発生しており、中には一歩どころか1ミクロン単位で間違えれば命を落としかねない環境にあった。


それを乗り越えて今に至るゼオンとしては、この事態は大したこのないものだった。それ以外にも。


「前にも似たようなことがあったしな」


ゼオンの育ての親にして師匠でもあったガイン・マークスと行動していたころ、悪徳貴族に目をつけられたことがあったのだ。経緯はどうであれ、結果的にその貴族は分家も含めて潰れてしまったのだが。


閑話休題


「つまり経験済みな訳さ」

「ゼオンのオヤジさんか、中々面白そうな人物だな」

「もう、ホントにスゴい人だったぞ?色んな意味で。俺にできることはお前にもできる!っつって無茶ぶりばかり押し付けてきてたからな」

「例えば?」

「サバイバル技術を叩き込む!っていきなり崖から突き落とされたり。不利な状況を打開する方法を考えろ!って言って盗賊のアジトに放り出されたり」

「す、すごいな」

「いやそこはよく生きてたねって、突っ込むべきじゃないかな?」


流石にビックリな表情のサラ。それをみて可愛いなと微笑むゼオン。


「あれで英雄だって言うんだから信じられなかったよ」

「え?」


ゼオンの英雄という言葉に反応したメリア。


「お父さんの名前ってなに?」

「どうしたんだよ」

「いいから教えて!」

「ガインだよ」

「・・・・・・・・」


目を見開き、口をポカンと開けたまま固まるメリア。


「おい?どうしたんだ?間抜けヅラに加えて色々と凄いことになってんぞ?」

「ガ、ガインってガイン・マークス?」

「そうだが?」

「英雄ガインの息子!?」


ガタッ!と机から体を乗り出す勢いのメリアは、どうりでマークスという姓に覚えがあったと呟いている。


「知ってるのか?」

「知ってるも何もこの国で彼の話を知らない人はいないよ!!!」

「どんな話があるんだ?」


曰く、数々の迷宮を一人で攻略している。曰く、戦争の際、200近い数の敵兵をたった一人で壊滅させた。曰く、魔物の大軍から王都を守った。


「うへー。オヤジはその頃からやることぶっ飛んでたんだな」


お前が言うな!


内心突っ込みながも話を続ける。


「だから、英雄であると同時に、ランク0に最も近い男としても有名だったそうよ?」

「あ、それは多分間違いだ」

「どういうことよ」


まさか身近でガインを見てきて、ランク0に近い男には見えなかったとか言うのではないか。

そうメリアは思ったが、ゼオンの口から出た言葉はそれを簡単に(くつがえ)した。


「オヤジはランク0だったぞ?」

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


絶叫に近いメリアの驚きの声が、銀の匙に響き渡った。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



その夜


「しかし驚いたぞ。まさかゼオンのオヤジさんが人間の英雄だったとはな」

「俺も半信半疑でしか話を聞いてなかったからな」

「ふふっ。まぁ、これでゼオンの強さの秘密が分かった気がするよ」

「そうか?」

「英雄に直々に鍛えられたんだからな」

「今更だが、よくここまで生きてこられたなって自分で思うよ」


二人で笑い合うゼオンとサラ。その空気は恋人同士ではなく、もはや夫婦と言っていいものだった。


「ま、だからとい・・・っ!」

「ゼオン!」


同時に表情が変わる。


「行動がはやいようだな、ゼオン」

「あぁ。来客は明日以降だと思ってたよ」


ゼオンは机の上に置いていたフリューゲルを取り、構えた。


「外に5人、廊下に3人、天井裏に2人か。てか、よく天井裏に侵入できたな」


声を殺して静かにサラに伝える。


「私も同じ数を確認した」

「メリアは大丈夫かな」


ドガァッ!


「ぐがぁっ!!」

「大丈夫だな」


隣から聞こえた壁、もしくはドアが破壊される音と、男と思われる叫び声を聞いて、大丈夫だと即断した。


「サラは外の5人を頼む。俺は廊下と天井裏をやる」

「分かった」


「・・・GO!」


ゼオンの合図で同時に動き出す二人。


サラは窓から外へと飛び出し、光の神力で辺りを照らして着地する。


ゼオンは机を蹴り上げ、天井を破壊して潜んでいた二人を落とした。


「へいらっしゃい!歓迎するぜ?」


なんかよく分からないノリで歓迎された敵二人は、気付かれていたことも含めて混乱していて、気が付けば拳が目の前までせまっていた。


バキィッ!


「がばぁっ!」


ドゴッ!


「げふぅっ!!」


一瞬で敵を無力化したゼオンは続いて部屋の出入口に向かって声をかける。


「廊下のお三方(さんかた)も入ってこいよ」


と言いながら、ドアを蹴破り廊下へ突撃。


「うぎゃぁっ!」


蹴破られたドアに巻き込まれて一人が一緒に壁へと叩きつけられた。


「き!きさま!」


声をあげた男に一瞬で肉薄して肘打ちで静め、短剣を抜こうとした残り一人にはフリューゲルを向けて制止する。


「こういうのをチェックメイトって言うのかな?」

「ぐっ!」


銃というものを知らない男だが、充分に自分の命を刈り取れる物だと察したのは、長年の経験からくる堪故だろう。


「こんなに早く来るなんて聞いてないよ」


文句を垂らしながら部屋から出てくるメリア。


「よく生きてたな」

「なんか、よく分からないけど胸騒ぎがして眠れなかったのよ」

「へ~」


と、適当な返事をしながら鑑定でメリアを確認する。


そこにあったのは。


スキル【危機察知】

効果:自分の身に危険が近付くと、それを感覚的に察知できる。というものだった。


「へ~」

「え?なに?」

「いや、何でもない」

「ゼオン」

「サラも無事に片付けたか」

「あぁ」


二人の無事を確認したゼオンは、フリューゲルを向けている最後の一人に向かって言った。


「お前らは俺に刃を向けたな。それだけでなく、俺の大切なものにも刃を向けた。刃を向けられる覚悟があるってことで良いんだよな?」


徐々に溢れ出す、尋常じゃない殺気。


「何の覚悟もない奴が軽々しく刃を向けるなと、お前らの主に伝えろ。いいな?」


襲撃者は気付いた。この男は敵にしてはいけない人物なのだということ。そして、その人物を敵にしてしまったのだと。


「全てをここの住民に流すからな?」


その言葉を最後に、残った一人も強制的に意識を飛ばされたのだった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「まったく、派手にやってくれたね」


襲撃者達を適当な場所に捨ててきたゼオン達が、宿に戻ってきて早々にそんな言葉を女将にかけられた。


「すまんな、おばちゃん。すまんついでに頼まれて欲しいことがあるんだがいいか?」

「何がついでだい」

「材料さえ揃えば俺が綺麗に直すからよ」

「あら、直せんのかい?」


なんなら、この宿全体を改築してやっても良いけど?と挑発気味に言う。


「お!それなら良いね!」


全体を改築することで決定。


「で、何を頼まれればいいんだい?」

「それはだな」


不当な取引をしていること。違法薬物を製造販売していること。その事実を知っているゼオン達を殺そうとしたこと。リッド商会の事を全て話した。


「この情報を市民に流して欲しいんだ。テューバー子爵も関与してるって尾ひれを着けてもいいぞ?」

「そりゃいいね!」


ゼオンと女将は楽しそうに話を展開していく。


その翌日から噂として情報が流れ、三日後にはテューバー子爵が後ろ楯になっていることから、子爵も関与しているのではないかという話まで出てくることになる。

やっと、お父さんは英雄だったという話を出せました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ