第十九話 刀
最近更新が遅くて申し訳ありません。
もしかしたらこれからもこ更新が遅くなる可能性がありますが
今後も最強の迷宮攻略者をよろしくおねがいします!
メリアがポイズンスネイカーを倒してからしばらく、迷宮の探索はサクサク進んでいた。
「どうだ、その武器には慣れてきたか?」
ゴブリンナイト率いる30近いゴブリンの群れを殲滅し、売れそうな素材や武器などのアイテムを回収し、ゼオンの異空間倉庫に放り込んだのを確認したサラはメリアに問いかける。
「この刀ってすごい使いやすいよ。柄が長いから両手持ちで扱うものなんだろうけど、片手でも扱えるてくらい軽い」
「まぁ、使用者に合わせてサイズや重さが変化するようにしてるからな」
「・・・え?」
「人によって扱いやすい大きさとか重さがあるだろ?」
何気なくゼオンは言っているが、実を言うとこれは、とてつもなく画期的な発想だった。何せ、使用者に合わせてサイズや重さが変わるのだから一々調整をしなくて済む。
「そんなことまで出来るの?」
「ラウラド神から授かった加護は万物生成だ。生命体以外なら作ろうと思えば何でも作れる」
「な、なんでも!?」
「じゃあ、絶対に壊れることなく、何でも切り伏せることができる最強の剣とか?」
「刀っていう武器のデザインそのものがある意味そうなんだがな」
「こんな形状の剣が最強なのか?」
「まぁ細いし普通の素材で作れば刀ってのはとても折れやすく最強には程遠いってのが一般論だが。そのデザイン故に剣というくくりの中では最強と言えるんだ」
日本刀という刀は片刃で細い。だが、斬撃、刺撃、打撃という近接戦闘において重要な3つを刀一本で行える。つまり戦闘の幅が広がるという事だ。
この世界でよく使われるのは西洋武器である両刃の剣で、これはどちらかと言うと斬撃ではなく刺す事をメインとしている。逆にに刃先が大きく広がるようなデザインの中国刀は、斬ることをメインとしてはいるが刺す事を目的にはしていない。
よって日本刀が剣というくくりの中では最強と言われているのだ。
もっとも、武器全体で見ると、攻撃範囲や攻撃力、防御など全てを見ると「三節棍」が圧倒的に最強と言えるのだが、これは余談だ。
「そうなんだ。普通の素材でってことは普通の鉄でってこと?」
「そうだ。普通の鉄で作られた刀は連続で精々2~3人が限界だな」
「そんなにもろいの!?」
時代劇や映画では刀で攻撃を受け止めたり、何人もバッサバッサと切り倒していくが、実際はそんなことは不可能だったと言われている。
戦国時代では刀はとても折れやすく、戦でも使われることは少なかったという説もある。
ゼオンが説明できる範囲でその事を伝えると、メリアはシュベルトゲベールを不安をはらんだ目で見る。
「アホ」
ビシッ!
「あだっ!」
ゼオンのデコピンがメリアの額に炸裂する。
「シュベルトゲベールに使ってるのは普通の素材じゃねぇし、そう簡単に折れるような柔な作り方はしてない。少なくともワイバーンの鱗くらいは切れるし、それでも折れないと思うぞ?」
「ワイ・・・」
まさかここで竜系の魔物の名前が出るとは思わなかった。
竜系の魔物は下級種でも攻撃力、防御力共にかなりの高さを誇り、ベテランと言えるランク7以上の冒険者が束になっても倒すのは難しいし、実力者と言われるランク5以上の冒険者でも手こずる程。
その理由は竜の吐息という驚異のそれもあるが、その体に纏う竜鱗と言われる、竜種特有の強固とも強靭とも言える鱗だ。
下級種の竜でも剣や矢などの物理攻撃は簡単に弾いてしまう程に硬い。
それを切ることができるというのだから、メリアが驚くのも無理はないのだ。
「そんな事ってできるの?」
メリアは腰にさげた黒刀【シュベルトゲベール】から放たれる、ただならぬ雰囲気を感じながら問う。
「なんか、やってみたら出来た」
「ぷっ」
「・・・・・」
サラが吹き出し、メリアは無言になる。
「なんでゼオンはそう常識外れなことばかりやってのけるの?」
「・・・俺だから?」
メリアは全力で思った。
ゼオンはこういう男なのだと。
そして、これからは何があっても驚かないとも。
「ゼオン、メリア。そんな話は後にしよう。新手だ」
サラの言葉にメリアは警戒して臨戦態勢にはいる。
ゼオンは。
「またゴブリンか・・・」
自然体で特に警戒した様子もなく、構えることもなく、ただ平然と呟いた。
だが、様子がおかしいことにすぐに気がつく。
ゴブリン達は獲物を見つけたという表情などてはなく、必死の形相だった。
「オークがゴブリン達を追いかけてきてるな」
その背後から複数のオークが地響きを立てながら迫っていた。
「しかも先頭はオークジェネラルのようだな」
ゼオンの「鑑定」スキルで確認するとオークジェネラルの名前があった。
「メリア、ゴブリンを頼む。サラはオークだ。ジェネラルは俺が撃ち抜く」
ゼオンが魔導神銃【フリューゲル】を抜いたのを合図にサラが飛び出し、それに続くようにメリアが黒刀【シュベルトゲベール】を構えてゴブリンの集団に突っ込む。
サラが空中走行スキル「空走」でゴブリン達の頭上を越え、オークジェネラルを避けてその後ろのオークの元へと着地する。自らの頭上を越えて行ったサラに気を取られていたゴブリン達は、その隙を付かれて数匹が斬り伏せられる。
「グゲゲッ!」
メリアに気が付いたゴブリンは、どけとばかりにその右手に持っているボロボロの剣を振りかぶる。
対するメリアはシュベルトゲベールに魔力を通して一閃。
ゴブリンの持っていた剣ごと鼻から上を寸断し、絶命させた。
ただでさえワイバーンの鱗も斬ると説明を受けたシュベルトゲベールに、魔力を込めて更に強度と切れ味を増している。ボロボロの剣など、あって無いようなものだった。
メリアはシュベルトゲベールを逆手に持ちかえて、背後から迫ってきたゴブリンを切り伏せ、その後に続いて来たゴブリンは柄から射出される魔力弾で仕止める。そして、順手に再び持ちかえて4体をまとめて斬り払い、その死体を飛び越えて、奥にいた2体を連続で斬り捨てる。
ポイズンスネイカーを倒す程の実力を身に付けていたメリアは危なげなくゴブリンの群れを殲滅した。
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メリアが最初の1体を斬り伏せていた頃、サラは炎で作った槍を十数本展開し、目の前のオーク達に向けて放っていた。それだけで群れの半数を火だるまに変えた てしまった。だが、それだけで終わらないのがサラだった。
元々サラは一族の中では最も強く、力で勝る雄の白天狼にさえ簡単に勝ってしまう程だった。その強さの秘密は、膨大な神力と、そのコントロールの才能、そして膨大な神力故の高い身体能力だった。サラは独自にその扱いを磨きあげていき、その結果、魔神との戦いに参加する程の力を身に付けたのだ。
それでも魔神と自分では天と地ほどの力の差があったのだが。
それは置いておき。そんなサラがオークの群れの半数を火だるまにして、それで終わりかと言うとそんな筈もなかった。
焼け死んだオークを踏み越えてサラに襲いかかろうとするが。
ドドドドドォッ!!!
オークの焼死死体が爆発を起こし、それに巻き込まれた残り半数も死滅した。
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一方、ゼオンはと言うと。
ドパァンッ!!!
その場から一歩も動かず、オークジェネラルをフリューゲルの一撃で仕止めていた。
そして、そのままフリューゲルをしまい。サラとメリアの戦いを見詰めるのだった。
すみません
今回は短めになっております。