第十八話 初戦
遅くなってすみません!
やっと更新できました。
最近自分はやってみたい夢ができました。
高校からやっているカラーガードは今でも
趣味でやっています。
やってみたい夢というのは
「そのカラーガードでパフォーマーとして活動してみたい」
というものです。
できればそれで収入を得ることができたらいいんですけどね(笑)
それはさて置き!
第18話をどうぞ!
カーゼル大迷宮、第29階層。
ゼオン、サラ、メリアの3人は現在、紫の体色をしたコブラのような姿の魔物、ポイズンスネイカーと遭遇していた。
「こいつはその名前の通り、毒を持った蛇だ。噛みつかれたら牙から即効性の毒を注入されて死ぬ」
それ以外にも口からは麻痺や酸性の毒液や毒ガス等を吐き出してくる。更に、鱗はとても硬く生半可な攻撃など簡単に弾いてしまう程。膨らんだ頭部両脇には鋭い刃の様に伸びた鱗。
「あの刃状の鱗には気を付けろよ?コイツと対峙した冒険者の死因、第一位は意外にもあの鱗だからな」
「え!?毒じゃないの?」
ポイズンスネイカーという名前なのだから毒で殺されるのではないのかとメリアは言う。
「ポイズンスネイカーの毒はあくまでも補食と自衛の為の手段で攻撃手段では無いんだ。あと接近し過ぎると巻き付かれて、絞め殺されるぞ」
メリアはゴクリと唾を飲む。
「さて、そんな相手とどう戦うか考えるんだな。さぁ、行ってこい!」
「うぎゃっ!!?」
ゼオンは魔力念動力でメリアをポイズンスネイカーの前に押し出した。
「・・・あっ」
「死にかけたら援護するから安心しろー」
「できるかぁ!!」
メリアは悲痛の突っ込みを聞いたゼオンは。
「あれだけ元気なら大丈夫だな」
と呟くのだった。
「シャアァァァァァァァァァァァァ!!」
蛇特有の鳴き声を上げながらメリアに突っ込んでいくポイズンスネイカー。
「くっ!」
メリアは少し声を漏らしつつもそれに対応して避けながら片手直剣を抜く。
そして、深呼吸しながらメリアは思考する。
先程ゼオンから受けた説明を思い出す。注意しなければいけないのはこの名前が指す通り毒だが、その他に刃状の鱗を使っての突進による切り裂き、巻き付かれて締め上げられることのふたつだ。
剣による近接攻撃をメインに戦うメリアにとって苦戦は必至だろう。
「・・・・!」
そこまで考えたところで、とある事を思いつきポイズンスネイカーに向かって走り出す。
「はぁっ!」
ザンッ!ザシュッ!!
2撃ほど攻撃を加えてその場から離脱。直ぐに立ち位置を変えて隙を伺う。
突進してきた所を避けてまた斬りつける。
「ほう、あれだけのヒントでよく考えたな」
ゼオンがメリアに説明したことを別の角度で捉えれば。毒は攻撃手段として用いることは少ないため、最初は毒の事など気にせず戦え。だが、刃状の鱗を使った攻撃と巻き付きには気をつけろ。ということになる。
少なくともメリアはそう考え、攻撃しては直ぐに離脱して、離脱しては攻撃を繰り返す、ヒット&アウェイの戦法をとっていた。
それには勿論、ゼオンに叩き込まれた回避技術を用いている。
「初戦にしては中々だな。だがこれからではないか?」
「そうだな。ポイズンスネイカーが毒を使いはじめてからが問題だ」
それにはどう対応する?
と顔を隠すターバンの中でニヤリと笑うゼオンからは、イタズラをしているかのような雰囲気が滲んでいた。それを見たサラも思わず微笑んでしまう。
こういうところも素敵だと。
ガキッ!
「っ!」
その様子に気付いていないメリアはヒット&アウェイを繰返して時折、鱗に攻撃を弾かれながらも地道に、だが確実にダメージを与えていた。
メリアに噛み付こうと突っ込むが、それを跳躍して避けて、頭を蹴るように踏みつけて地面へと着地して腹部を斬りつける。今度は巻き付こうとしてくるが辛うじて出来た隙間を転がり抜けて、なんとか回避する。その後、追撃を避けるため1度、大きく距離を空ける。
「・・・え?」
そうしてメリアは初めて、ポイズンスネイカーの変化に気が付いた。
ポイズンスネイカーの紫色をした鱗の隙間から真っ黒なラインがハッキリと浮き出ており、眼光は黄色に鋭く光っている。そして体をより大きく持ち上げていた。
「ゼオン、あれは?」
「あのポイズンスネイカーは、メリアを獲物から敵へと認識を変えたんだよ。黒いラインが出てきて、尚且つ体を大きく持ち上げるのは威嚇行動さ」
「じゃあ」
「あぁ。ここからが本番ってとこだな」
その言葉をポイズンスネイカーは聞いていたかのように口を空けて、
ビシャアァァァァッ!!
液体を吐き出した。
「!」
それをみた見たメリアは咄嗟に避ける。
ジュワァ!
液体が散った地面は煙と音を立てて溶け始めた。
酸性の毒液。
これを受ければ剣でさえも溶けてしまうのは一目瞭然だった。
「シャアァァァァァァァァァァァァ!!」
メリアが毒に気を取られている隙にポイズンスネイカーは襲い掛かる。
それに対し、メリアは姿勢を低くしてその下を潜るように飛び込み、前転しながら片手直剣を突き立て、更に深く斬り込む。
ブシュゥッ!!
切り口からは鮮血が飛沫をあげ、それと同時に毒を生成して溜め込む器官、毒袋が破壊されたらしく剣の切っ先が溶けて短くなっている。
「あぁぁぁぁぁっ!!!」
だがそれも気にせずに、のたうち回るポイズンスネイカーの低くなった頭に飛び込むように肉薄し、その眼球に思いっきり突き刺した。
「ジャシャァァァァァッッ!!」
あまりの痛みに暴れだすポイズンスネイカー、それに巻き込まれる前に剣を更に深く押し込んでから離脱した。
その剣先は短くなっているとは言っても、深く突き刺せば脳に届く。
「ア・・・アァ・・・・」
ズゥン・・・
溶けた切っ先に僅かに付着し、残っていた毒袋の毒が脳を溶かしてその生命を途絶えさせた。
「時間はかかったが、まぁ上出来だな」
ゼオンが評価しながらメリアの元へと歩いてくる。
「上出来?」
そんなゼオンの言葉が信じられないとジト目を向ける。それも無理もない。今まで、戦いの評価と言えばちょっとだけ誉めた後は罵倒しか出なかったのだ。割合でいけば誉め言が1、罵倒が9と圧倒的に罵倒が多かったのだ。
「こいつを倒せればランク的には6か5にはなれるさ」
「やっぱり格上の魔物だったのね・・・」
メリアは少々疲れた様子で呟きながら、息絶えたポイズンスネイカーへと歩みより、その目から深く突き刺さった片手直剣を引き抜く。
グボォッ
とかなり生々しい音を立てて抜ける。そして片手直剣を確認したメリアは落ち込む。
剣先は中ほどまで溶けてしまっており、辛うじて残った刃は最早ボロボロで多少は使えるだろう程度でしかなかった。
ピキッ!
「え?」
パキィンッ!!
前言撤回
まったく使えなくなりました。
片手直剣は柄を残して完全に砕け散ってしまった。
これでメリアが使う武器は無くなってしまったこととなる。
「予備とか用意してないのかよ」
「この剣は安物ではあるけど、私のランクでギリギリな良い剣だったのよ?もう一本買う余裕なんて無かったわ」
「つまりメリアは貧乏ってことなのか?」
「むしろ、ランク8にしては稼いでる方なんだけどね」
微妙に遠い目をするメリア。
「武器が無いんじゃ戦いようがないな。何しに来たんだお前」
「う"っ・・・」
「とりあえず、武器を調達しに地上に戻るか?」
「いや、その時間が勿体無いからこのまま続行する」
「ちょっ!もしかして素手で戦えっていうの!?」
サラの問いに対するゼオンの答えに驚くメリア。
「・・・・・・」
ゼオンは顎に手をあてる動作をして少し考えて口を開く。
「・・・・難しいだろ」
「無理じゃないんだ・・・」
「ゼオンはこういう男だ」
ぶっ飛んだ事を言い出すゼオンもまた素敵だと頬を少し赤くする。それを見たメリアは最早言葉も出ない。
ゼオンはそれを無視して異空間倉庫から鞘に収まった、一振りの剣を取り出す。だがそれは剣と言うには細いシルエットで、メリアはその剣にはどこか頼りない印象を持った。
「貸してやるから、これ使え」
カチャッと音を立てて手渡され、剣を少し眺めて柄を握り、抜こうとするが。
「え?抜けない・・・」
堅くて抜けないなんてレベルじゃなく。剣身が鞘なのではないかと思うほどに抜ける気配がない。
「あ、使用者にしか抜けないようにしてるんだった」
「え?」
「そいつは登録した魔力を持っている人にしか抜けないようにしている。だから今は俺だな、貸してみろ」
ゼオンはメリアから剣を受け取り、魔力を流し始めた。
「よし、ここに1滴だけ血を垂らせ。それでこいつに登録してある魔力をお前の魔力に上書きできる」
鞘から切羽が出てくる程度だけ剣を抜いて指示する。そこには小さな六芒星の魔法陣のようなものが浮かんでいた。
「魔力の登録?そんなことして意味あるの?」
「人の体格や顔やそのパーツの微妙な違い、髪の色や質、声、性格。どれもそれぞれ違うだろ?魔力もそれと一緒なんだよ」
つまり、指紋や声紋と同じように魔力も個人の特定に使えるのだ。この剣は指紋認証や声紋認証ならぬ、魔力認証のシステムを組み込んでいるという。
説明を受けたメリアは、先程のポイズンスネイカーとの戦いで怪我した傷から血をとり、その六芒星の魔法陣につけてもう一度剣を鞘に収めた。
「これでお前の魔力が登録されたはずだ、抜いてみろ。魔力を込めながらな」
メリアはゼオンに言われた通り剣に魔力を流しながら引くと、スラァァァと静かな音を立ててあっさり抜けた。
そうして初めて、その剣身を見ることができた。
細い片刃の剣で、少し反ったデザインで波紋の紋様が浮かんでいる。色は漆黒で周りの光を怪しく反射させる。鞘に収まっている状態ではどこか頼りない印象を受けたが、その刃を見て受けた印象は、鋭く、獲物は確実に斬り伏せるだろうと思う程の威圧感だった。
それと同時に。
「きれい・・・」
目を引く美しさを持っていた。
「それは剣であって剣ではない」
「どういうこと?」
「そいつは刀と言ってな
「かたな??」
「俺の故郷に伝わる伝統的な武器だ」
この剣は所謂、「日本刀」と呼ばれるゼオンの前世の世界の日本の伝統のある武器だった。そしてこれかこれがゼオンが幾つもの試作品を経て完成させた武器である。
「黒刀【シュベルトゲベール】それがその刀の名前だ」
シュベルトは剣、ゲベールは銃の意味を持つドイツ語で、魔力を込めることで強度と切れ味が増すという機能を持っている。それ以外にも柄からはゼオンの魔導神銃【フリューゲル】と同じように魔力弾を撃つことができる。これが銃の名を付けた所以である。他には、鞘に収めている状態で魔力衝撃波を発生させることもできる。
「ちょっと待って。ゼオンが作ったみたいな言い方してるけど・・・」
「作ったみたいな言い方っていうか、それは俺が作った」
「・・・え?」
「ラウラド神の加護か」
「あぁそうだ。試しも兼ねて幾つか試作武器も作っている」
メリアは、またも黙るしかなかった。