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第十三話 武装商隊

最近、更新速度が遅くて申し訳ありません!


それでは第十三話をどうぞ!


イーリス商隊。


この商隊は、ガルディアの大迷宮が存在している、ルーウェン王国の辺境付近を中心に行商を行っている商隊であり、同時に一人一人が戦闘の心得を持った武装集団でもある。故に、別名「イーリス武装商隊」と言われている。


そのイーリス商隊と共にゼオン、サラ、メリアの3人はウレイルの街からカーゼル迷宮都市へと向かうべく、街道を進んでいた。


何故ゼオン達3人がイーリス商隊と行動を共にしているかと言うと、六の刻の鐘が鳴る頃に街を出る手続きが終わり、門を潜った所でイーリス商隊の隊長である、クロルド・イーリスに声をかけられたのだ。


彼らはゼオンとサラが『一昨日来やがれ』で宴会をした時、参加していたようで。勿論サラに手を出そうとしていた輩を薙ぎ倒す所もしっかりと見ていた。その身のこなしを見て、かなりの実力を持っていると判断していた。そして、偶然にも門を出たところでゼオン達を見かけたため声をかけさせてもらったとのことだった。


ゼオンとクロルドが話をして、迷宮に行こうと考えているがどこの迷宮に行くかは決めていないと言ったところ。それならイーリス商隊と行かないかと言われた。


彼らは丁度、仕入れの為にカーゼル迷宮都市に向かうところだったらしく、ゼオンに達にしても丁度良かった為、ギルドの仲介無しの護衛依頼という形で話がまとまった。


クロルドは依頼する為ではなく、知り合っておこう、程度の気持ちで声をかけたつもりが、まさかこうして行動を共に出来るとは思わなかったと、驚いていた。


「この商隊は武装集団でもあるんだろ?わざわざこうして護衛を雇う必要はあったのか?」


昼を回った頃、ようやく森を抜けた商隊は休憩に入り、昼食をとっていた。そこでゼオンはふと気になっていたことをクロルドに尋ねる。


「まぁ、一人一人がしっかり戦える実力を備えているからな。普通の商隊や商人からすれば羨ましいだろうな」


クロルドは肩を竦めながら答える。


「だが、命と体の次に大事な商品を守るのに人手は多いにこしたことはないさ」

「それに、この商隊は男だけじゃないからね」


一人の女性が飲み物を両手にやって来る。


「はい、ゼオンさんもどうぞ?」

「ありがとう、リーヤ」

「すまん」


リーヤと呼ばれた女性はゼオンに微笑み掛けて、クロルドの隣に座る。


「ゼオン、紹介する。この人はリーヤ、俺の女房だ」

「ブッ!!」


突然の女房発言に、口に含んだ飲み物を吹き出してしまう。


「お前、結婚してたのか?」

「ハッハッハッハ!驚かせてしまったか?」


目の前の男、クロルドはゴツゴツした体格をしていて、見た目からは商隊を率いているとは思えない人物だ。それがまさか既婚だとは思わなかった。


いや、『一昨日来やがれ』の亭主が綺麗な奥さん持ちなので、可能性はあった。


「この商隊のお金や商品の管理と食事の準備は女たちが請け負っているの。私はその長といったところね」

「へぇ、男女でも役割が決まってんのな」

「ま、そんな訳だ。どうだ?綺麗だろ?」

「ちょっ!クロ!?」


ゼオンに自慢するようにリーヤの肩を抱き寄せてニカッ!と笑う。

それに対して、ほんの少しだけゼオンの中に対抗心が芽生えた。


「確かに綺麗だ。だが、俺の中ではサラが一番だな」


目には目を、歯には歯を、ノロけにはノロけだとばかりに、サラを自慢する。


「サラ?あの白い髪の方か?」

「あぁ」

「そうね、確かにあの子はとても綺麗だね。もう一人の子は?メリアっていったよね?」

「メリアはただ臨時でパーティを組んでるだけだ。元々はサラと二人で活動している」

「そういうことか」

「クロルドさん、そろそろ出発しやしょう!」


そんな話をしていると商隊のメンバーが声を掛けてきた。


「そうだな。日が暮れるまでに距離を稼いでおきたいし。皆に伝えろ、出発のじゅ・・・」

「まて」

「・・・どうした?」


出発の準備を指示しようとしたクロルドを止めるゼオン。


「気配が複数近付いている。数は大体20といったところか。盗賊だな」

「なに?」


ゼオンの言葉は襲撃を意味していた。


「それは本当なのか?」

「俺は索敵に使えば強力とも言えるスキルを持っている。敵の動きを細く言えば、右側に5、左側に5、後方に3、前方に7だ。包囲しようとしているな。それに各所のヤツらの配置から考えて恐らく、最初に弓で攻撃してくるだろう」

「・・・・」

「安全を考えるなら、最初に女たちを馬車の中に入れたがいいな」

「・・・分かった。ジェルド、聞いたな!全員に警戒するよう伝えろ!戦闘に備えるんだ!」

「おう!」

「あと、騒がしくするなとも伝えてもらおうか」


ゼオンに言外に気付かれたことに気付かれるなと言われ、ジェルドと呼ばれた男は商隊メンバーに伝えるべく走り出す。

それを見送ったゼオンは立ち上がり。


「前方の敵が多いから俺が行く」

「前方は確か7人だっただろ?一人で大丈夫なのか?」

「むしろ、一人だから良い」


食事の為に下ろしていた口元のターバンを上げて目元以外を隠し、高く跳躍してその場から姿を消した。


「俺らも動くとしよう。リーヤは女衆を頼む」

「気を付けてね?」


リーヤの言葉にクロルドは頭を撫でるという行為で答え、そのまま走り出す。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





サラは商隊を囲む前後左右の不穏な気配を感じ取っていた。


「サラ?どうしたの?」


メリアはサラの表情が険しいものになっていることに気がつき問い掛ける。


「この商隊は包囲されているみたいだ」

「え?」


ザン!


不意に聞こえる何かが地に当たる音、否、着地する音。


「ゼオン、丁度良かった!今・・・・」

「分かっている。盗賊だ。俺は前方に向かうが、サラはどうする?」

「・・・・なら私は馬車の防衛にまわるとしよう」


感じ取れる気配の雰囲気からそれほど大した相手ではないと判断していたサラは、この程度の敵なら一人でも充分だろう?とゼオンに笑みを向ける。


しかしこれは別にゼオンに対するプレッシャーでも何でもなく、純粋にゼオンのことを、ゼオンの実力を知っている、知っている実力を信頼している故の行動だった。

それに気付いているゼオンは顔を覆い隠すターバンの中で笑う。自分には勿体無い女だと。


「メリアはゼオンについていけ」

「ゼオンに?」

「彼の戦いは凄いからな。見ておいて損はない」


そう言われてメリアは思い出す。ゼオンとはじめて会った、正確には遭遇した時の事を。

あの時はゼオンに言われた言葉に対する憤りが大きかった為に、見ることをしなかった彼の圧倒的な実力の片鱗を。サイクロプスを一撃で、しかも素手で仕留めてしまうその力は、凄いというより凄まじいと表現した方が良いのではないか。


「出発の準備だぁ!急げ!」


「「「「おぉぉぉぉ!!!」」」」


クロルドが手を上に伸ばして自分に商隊メンバーが注目するようにしながら、出発の準備を促す声をあげる。商隊メンバーには既に盗賊に包囲されていることは伝えている。証拠に伸ばしている手は握り拳となっている。商隊の中ではいくつかのサインが決まっていて、本来の出発の準備の場合は握り拳ではなく、指先までしっかりと伸ばしたサインなのだ。握り拳は戦闘準備のサインとなる。

更に、口頭では出発の準備と言いながらの戦闘準備のサインとなれば、出発の準備をするように見せかけながらの戦闘準備となる。


「流石、武装商隊と言ったところか」


ゼオンはその様子を見て素直に感心する。


そして、準備に取り掛かって少し。


複数の矢が商隊に向かって飛来する。


ゴウゥッ!!!


しかし、直後にそれを何かが吹き飛ばした。


矢に備えようとしていた商隊のメンバー達は何が起こったのか分からずその動きを止める。


「ふっ。この程度なら雑作もないな」


ポツリと呟かれた言葉。その発声源は白く美しい髪を風になびかせて不適でありながらも妖艶な笑みを浮かべる女性であり、魔法、否、風の神力で飛来する矢を弾いた張本人、サラだった。


「くっそぉ!構わん!やれぇ!」


「「「おおおお!!」」」


頭目と思われる声の後、怒号と共に剣や槍を持った盗賊が襲いかかってきた。


「やるな。流石は俺の女だ」


ゼオンはそれを気にせず、先程のサラの行動を誉めていた。


「ちょっ!ゼオン!盗賊!!」


それを見たメリアが慌てるが。


「サラに言われた通りよく見とけよ?」


これまた気にせずそう言って両腰のホルスターからフリューゲルを抜いて。


ドドドドドドドドドドドッ!!!!!


向かってくる盗賊達の足元に銃弾を撃ち込みそれを阻害する。

そして、それに驚き足を止めた盗賊達の元へと一人歩き出す。


盗賊達の数歩手前まで来たところで歩みを止め、腰を落とし、右足を引き、左フリューゲルをつき出すように、右フリューゲルは銃口を前に向けたまま後ろへと引くような構えをとる。


「どこを撃ち抜かれたい」


ゼオンの表情はターバンで隠れて見えない。しかし、確かにその表情はあった。


余裕とも、不適とも言える笑みが。

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