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第十一話 臨時パーティ

更新遅くなって申し訳ありません

頑張って更新速度上げようと思います!

ドゴォッ!

ズズズズズズズズズズズズズズズゥン


響き渡る爆発音、舞い上がる砂や土、立ち込める煙、崩落する小さな地下洞窟。


「グゲッ!」


それに潰されたゴブリンキング。


「まさかゴブリンキングがいたとはな」

「私を見たとたんに体色と凶暴性が変わった気がしたんだが・・・」

「コイツらは人の女を拐ってまで繁殖するからな」


ゴブリンは獣人族や人間族など、人の女を拐って繁殖する魔物で性欲も凄い。ゴブリンのメスは常に妊娠している程で、女はゴブリンを見かけたら直ぐにその場から離れろ。と言われるほど。


「依頼も終わってるし、もう帰るか」





ーーーーーーーーーーーーーー



ギルド


「サイクロプスの討伐依頼の完了を確認しました。こちらが報酬となります」

「・・・ありがと」

「メリアさん、どうしたんですか?」

「実はサイクロプスを倒したの、私じゃないの・・・」

「え?」

「苦戦してたところに顔を隠して、マントで体を覆った変な男が突然出てきて、サイクロプスを一撃で仕留めたの」

「い、一撃!?・・・顔を隠して、マントで体を覆った変な男?」


受付嬢は若干、覚えのある特徴に首を傾げるが思い出せなかった。


「わるい、ちょっと退いてくれ」

「え?あ、ごめんなさい」


後ろからかけられた声に少し戸惑って、謝って場所を譲る。


「ヒュドラの討伐依頼を完了してきた。これが証明部位だ、確認を頼む」


メリアは驚いた。ヒュドラを討伐してきたという言葉に。


「はい、ヒュドラの討伐完了を確認しました。こちらが報酬となります」

「どうも」


ヒュドラの討伐を報告した男、ゼオンは受付から報酬を受け取り、金額を確認してギルドを出ようとしたときに掲示板のある依頼が目に入った。


「なぁ、この依頼なんだけど」

「はい、ゴブリンの群れの掃討とゴブリンキングの討伐ですね。もしかして見かけたんですか?」

「見かけたっていうか、寄り道ついでに片付けてきた」

「・・・・え?」

「え?」


ゼオンの言葉に少々間抜けな声を出す受付嬢。それに対して同じような声を出すゼオン。


「片付けてきたって、キングをですか?群れをですか?」

「ゴブリンは全滅、キングは巣になってた地下洞窟ごと潰してきた」

「つぶ・・・」


簡単な仕事をやってきたようなノリで事を告げるゼオンを受付嬢は信じられないといった目で見る。


それも無理はない。ゼオンとサラが受けたヒュドラの討伐は、霧が常に立ち込めている密林地帯の最奥部に潜んでいるヒュドラを討伐して欲しいという内容だった。立ち込めている霧は最奥部にまで行けば、1メートル先すら視認できないというひどい濃霧に包まれている。そしてヒュドラ自体は体長30メートルを誇る蛇型の魔物で、頭が六つあるのが特徴だ。それぞれの頭から繰り出される攻撃は厄介で、一歩間違えれば丸呑みにされてしまう。それ故に上位の冒険者でさえも倒すのは困難な魔物として有名になっている。次にゴブリンキングだが、普通のゴブリンよりも遥かに強力でゴブリンを統率する魔物。上位の冒険者でないと倒せない。


つまり、ヒュドラという上位の冒険者でもなかなか倒せないとても厄介な魔物を倒した帰りに、そのまま上位の冒険者でないと倒せないゴブリンキングとその配下の群れを片付けきた。


偉業というか、もはや異業。


そんな事をこなしてしまっているのだ。


「・・・あ!」


メリアは気が付いた。目の前のぶっ飛んだことを言う男が、サイクロプスを一撃で仕留め、自分に屈辱的な言葉をかけてきた男であると。


「じゃあ、その依頼の分の報酬もお願い出来るか?」

「見付けたわよ!」


その言葉にゼオンは振り返る。何処かで会った気がしないでもない。ゼオンの様子はそんな感じだった。


「ゼオン、彼女の匂いに覚えがある。サイクロプスと戦っていた者だな」

「あー、あん時の」


サラのおかけで思い出すことができた。


「あー、じゃないわよ!何が『その程度の実力なら、まだサイクロプスに一人で挑むのはやめた方が身のためだ』よ!?」

「一字一句間違えずによく覚えてるな」

「誤魔化さないでよ!あんな屈辱ははじめてよ!!」

「屈辱ってか、あんたが弱いのは事実じゃないか?その事実を言われて屈辱を覚えるなんてな。サイクロプス相手に手こずるような実力しかないのに、それでプライドだけは高いってか?」

「・・・っ!」

「てめぇ!聞いてりゃ勝手なこと言いやがって!」


ゼオンの台詞にメリアが言葉を詰まらせたところで、ギルドの酒場にいた一人の冒険者が声をあげる。


「メリアには実力がある!ここ数年の間でも一番期待出来るルーキーだ!」

「ほう?」

「俺達はメリアを見守ってんだ!」

「そうだ!何も知らねぇ余所者が!」


最初の男に便乗して次々と声をあげる冒険者達。


「おい」


ゼオンの低くドスの効いた声がそれを止める。


「見守ってる?放置してるの間違いじゃないか?」

「なんだと!?」


声をあげていた者達が一気に殺気立つ。


「だったら聞くがな。コイツがサイクロプスを一人で倒しにいくって言ったとき誰か止めたのか?」


唯一露出している目は全体を見回すように睨む。


「誰も何も言わないってことはつまりそういうことだろ?放置じゃねぇか。見守るってことは、誤ったことをしそうになった時はそれを正す。そういうことじゃないのか?」


くだらないとばかりに一度見渡して、再び受付嬢へと向き直る。


「そんな訳で、ゴブリンの方の報酬もよろしく。念のために討伐証明部位は持っている」


ゼオンはそう言いながら、ラウラドから授かった加護によって得たスキルの一つである異空間倉庫(アイテムボックス)を発動し、そこから討伐証明部位の右耳を取り出す。


「か、かしこまりました。少々お待ちください」


受付嬢は部位の確認の為に奥へと入っていく。

それを見計らってなのか、一番最初にこえを挙げた冒険者がゼオンに近付き右拳を振るった。


「勝手なことばかり言いやがってモヤシが!!」


しかし、その拳はゼオンにあたることはなかった。

ゼオンは左腕で外側へと反らし、その動作のまま自分の腕を回し、脇の下に挟み込む形で掴む。それだけで終わらず、動きを止めることなく自分に引き寄せるように引っ張り、冒険者の顔がすぐ間近に迫ったところで。


ゴッ!


頭突きをかました。


「ぐあぁっ!!なんっつう石頭だ!いってぇ!!」


ゼオンの石頭の真相は、単純にターバンへと魔力を通して硬度を上げていただけである。


「・・・で?」


サラが唐突に口を開く。


「そちらのお嬢さんはどうしたいんだ?」

「・・・・え?」

「このまま無茶を続けるのかと言っている」

「・・・私は無茶をしてでも強くならなきゃいけないの!」

「それは違うな」


メリアはサラの言葉に不服の色をにじませる。


「強さとはなんだ?魔物を一撃で蹴散らす力か?どんな状況にも対応する技術か?強力な魔法か?強力なスキルか?そんな直ぐに手に入るものなのか?」


メリアは言い返そうとしたが出来なかった。何故なら、サラから放たれるオーラとも言うべき迫力が溢れていたからだ。直感的に自分とは比べ物にならないほどの、想像することすら難しいほどの修羅場を掻い潜ってきていると感じたのだ。サラの出すそれは歴戦の猛将と同じ、いや、それ以上のものだった。


「否」


次にサラの口から放たれた言葉は静かにメリアの中で響き渡った。


「強さとは経験だ。失敗や成功、あらゆる経験をして学び、反省し、活かし、上に進む。その中で技術を身に付け、知識を身に付け、体を鍛える。それらの経験が時間を掛けて蓄積され、強さとなるんだ。焦って手に入るものなんかじゃない」


かつて、自分自身がそうだったと語るようにサラは言った。


「あ、あの、よろしいでしょうか?」


いつの間にか戻っていた受付嬢の声に振り返るゼオンとサラ。


「あぁ、すまない」


ゼオンがそれに答える。


「いえ、こちらがゴブリンの掃討とゴブリンキングの討伐の報酬となります」

「ありがとう。それじゃあ、行こうか?」

「あぁ」


ゼオンの問いにサラは答え、二人はギルドを出るが。


「まって!」


メリアの声で止まる。


「なんだ?まだ文句でもあんのか?」

「違うわ・・・その、お願いがあるの!」

「お願い?」


メリアは少し考え、ゴクリと唾を呑み込み、意を決したようにゼオンとサラを見つめる。その目は一種の決意や覚悟の様なものを感じさせる光を宿していた。そして、口を再び開く。


「一度だけでいいんです。私と魔物の討伐に行っていただけませんか!」

「は?」

「強さは経験だと言いました。私も色んな経験を積みたいの!だから!」


必死にお願いをするメリア。


「必死なとこ悪いが」


それに答えたのはゼオンだった。


「ことわ・・・」


断る。そう言おうとしたゼオンだったが、サラがマントを掴んで引っ張っているのに気が付き言葉を止める。


「すまないゼオン。承諾してやってくれないか?」


思わぬその言葉にゼオンは戸惑った。もちろんそうなるとわ分かっていたサラは、聞かれる前にその理由を話す。


「彼女はかつての、幼い頃の私に似ているのだ。強くなろうと焦っていた頃の私にな。頼む、手を差し伸べてやってくれ。今の彼女には誰かの助けが必要だ」

「・・・」

「・・・ダメか?」


愛する人の頼みだ、答えは決まっている。


「メリア・・・だったか?少しの間、臨時でパーティを組むとしようか。一度だけでは大した経験値にもならんからな」

「え!?」

「ゼオン!?」


メリアだけでなくサラまでもが驚く。まさか短期間とは言えど、臨時でパーティを組むとは思わなかったからだ。


「ほ、ホントにいいの?」

「あぁ、どうせならランクが低い内は出来ないことを経験させてやろうと思ってな」

「え?」

「迷宮に潜ろうか」


これが後のメリアにとって大きな機転となるのだが、本人は知る由もなかった。

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