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 二十八日目


 初めて王城の外へ出た。

 そのまま城下町を素通りし、街の外で待機していた軍の補給部隊と合流して最前線へ移動が始まった。

 王城からは騎士団長以下十人の騎士が僕の護衛と監視についてきている。

 逃げ出そうにも隙がない。

 騎士団長は一瞬たりとも僕から目を離さない。

 このまま戦場に行くしかないようだ。




 二十九日目


 基本的にずっと馬車の旅。

 馬車の揺れも一日あれば慣れた。

 明日には最前線に到着する。

 怖い。




 三十日目


 もう全てがどうでもよくなった。


 最前戦へと連れてこられた僕は、望遠の魔法によって敵陣地の魔族達の姿を見せられた。

 褐色の肌をした人たち。

 黒い肌をした人たち。

 赤い肌をした人たち。

 青い肌をした人たち。

 長い耳を持った人たち。

 獣の耳を付けた人たち。

 獣の顔をしている人たち。

 爬虫類の姿をしている人たち。

 背の小さな人たち。

 背の大きな人たち。

 翼を持った人たち。

 たくさんの人間がそこにいた。

 あれは人間ではないのかと尋ねた。

 あれは人間ではなく魔族だと返答された。

 魔族は人間ではないのかと尋ねた。

 魔族は悪魔を宿した唾棄すべき存在だと返答された。

 皮膚の色が違うのは悪魔の血が流れているから。

 獣の姿をしているのは悪魔の呪いを受けているから。

 高い魔力と長い寿命をもっているのは悪魔と契約しているから。

 魔族は人間と違い神の祝福を受けていない。

 だから魔族は悪であると。

 そこで僕は理解した。




 ああ、これはただの宗教戦争なんだ。




 僕はこんなことのために呼ばれたのか。

 僕はこんなことのために訓練させられたのか。

 僕はこんなことのために焼かれたのか。

 僕はこんなことのために苦しんでいたのか。

 もう、どうでもいいやと思った。

 僕は陣地ごと魔族を吹き飛ばすと言って、回路を描きはじめた。

 常人には描くことのできない、理論しか存在しない広域殲滅魔法のための回路。

 勇者にしか扱えない最強の魔法。

 回路を描き終わり詠唱した。

 そこで騎士団長は違和感に気が付いたようだが、もう遅い。

 僕は広域殲滅魔法を自陣へと放った。

 天空から降り注ぐ雷は陣地を消し飛ばした。

 雷は僕には直撃しなかったが、余波で吹き飛ばされた。

 地面に打ち付けられて、体中が痛い。

 脇腹が大きく抉れて血が出ている。

 治癒魔法で塞がなければこのまま死ぬだろう。

 つまり、僕はこのまま死ぬことができるということだ。

 やっと僕は死ねる。

 最高の気分だった。

 僕はこのまま眠ることに決めた。

 もうそろそろこれを書くのも限界だ。

 だから最後に一言書き添えよう。




 この世界に呪いあれ。





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