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武士(もののふ)クライシス  作者: マイン


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7/12

中央の空疎な命令

真田さなだ 義人よしと豪族による「インフラの管轄権独立宣言」は、静かに、しかし確実に中央政府を震撼させた。


東京・永田町の官邸。政府の緊急対策会議は、緊迫した空気に包まれていた。


「真田の動きは、完全に国家反逆罪にあたる!直ちに自衛隊を出動させ、武力で鎮圧すべきだ!」

防衛大臣が声を荒げた。


「待ってください!彼らは地域の圧倒的な支持を得ている。下手に武力介入すれば、内戦と見なされ、国際的な問題になる。しかも、真田は『地域安全組合』、今は『真田武士団』という名の強力な私兵を持っている。彼らは元猟師や元自衛官であり、地の利を熟知している。正面衝突は避けるべきだ」内閣官房長官が鎮静を促した。


中央政府が最も恐れたのは、**「連鎖反応」**だった。真田の成功を見て、他の地方自治体や有力者も同様に独立を宣言し、全国が分裂することだ。


数日後、政府は真田豪族に対し、「インフラ管理権の即時返還」と「武士団の武装解除」を求める**『地方特別措置命令』**を発令した。この命令は、事実上、真田への最後通牒だった。


命令はテレビやインターネットを通じて真田の「領地」にも伝えられたが、その効果はほとんどなかった。

真田豪族が独自に管理する通信インフラでは、中央政府のニュースは「地方の混乱を煽る虚偽報道」として編集されて流されていたからだ。


真田の事務所では、彼がテレビに映る総理大臣の会見を嘲笑とともに見ていた。


「空疎な命令だ。中央は、我々が武力でこの地を護っているという現実が見えていない」


真田は、筆頭武士である**加納かのう 幸蔵こうぞう**を呼んだ。


「加納さん。中央は近く、我々の領地に派遣団を送ってくるだろう。おそらくは警察の特殊部隊か、自衛隊の偵察部隊だ」 「どうされますか」幸蔵が静かに問うた。

「武力は使わない。だが、彼らにこの地の**『法』**を理解させる必要がある」


真田は、武士団に対し、全隊員を領地の境界線に沿って展開するよう命じた。


翌日。中央政府の派遣団(警察と内閣府の職員)を乗せた車列が、真田豪族の支配地域への入り口となる主要な峠道に到達した。


そこには、数百メートルにわたって鉄柵が張り巡らされ、真田 武士団の隊員たちが、最新のライフルを携え、威圧的な制服姿で整然と立ちはだかっていた。


元警官の武士が、拡声器を通して派遣団に告げた。

「ここは、真田豪族の領地である。真田義人が定めた『地域安全条例』に基づき、外部からの無許可の侵入を固く禁ずる。直ちに戻られたし」


派遣団のリーダーである内閣府の官僚は、怒りに震えた。

「我々は政府の人間だ!この国の法に基づき、立ち入りを要求する!」


「この国の法?どの国のことだ?」武士は冷たく言い返した。

「この地では、住民の命と平和を守る真田様の条例こそが法だ。お前たちの法は、既に奥平沢の悲劇とともに死んだ」


派遣団は、武士団の圧倒的な武力と、彼らの背後にある住民の支持という目に見えない壁を前に、立ち往生した。


彼らがさらに進もうとすれば、武士団との衝突は避けられない。それは総理大臣が最も恐れた「内戦の端緒」となる。


内閣府の官僚は、無線で官邸に状況を報告した。

「現場は完全に武力によって封鎖されています。衝突を避けるため、一旦撤退します」


中央政府の威信は地に落ちた。彼らが発した「特別措置命令」は、真田の領地では**「空疎な命令」**でしかなかったのだ。


この事件により、真田義人の支配地域は、名実ともに**「国の中の独立国」**となった。


青山あおやま たけるは、遠巻きにその様子を見ていた。彼が恐れていた「武力による支配」が、中央の権威すら凌駕する光景だった。


「加納さん。これで本当に、誰も俺たちを止められなくなった」猛が言った。


幸蔵は、険しい顔で山脈を見上げた。

「止められないのは、中央政府だ。だが、この国の秩序が崩壊したことで、新たな脅威が生まれる。真田と同じように、武力で支配を企む者たちだ」


真田の成功は、隣接する地域の有力者たちに、強烈な**「独立」**の誘惑を与えていた。

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