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武士(もののふ)クライシス  作者: マイン


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新たな身分の誕生

豪族・真田さなだ 義人よしとの支配下で、「地域安全組合」の存在は、もはや地域の常識となっていた。彼らの活躍はテレビのローカルニュースで連日報じられ、行政や警察の無力さと対比され続けた。


組合員は、もはや単なる「猟師」ではなかった。彼らは真田豪族から高額な俸禄(月給)を受け取り、専用の寮に住み、最新の装備を身に着け、住民からは感謝と畏怖の念をもって迎えられた。


ある日、地域の子供たちが、組合員たちに向かって声を上げた。


「あっ、お武士さまが来た!」


その言葉を聞いた元警官の組合員が、苦笑しながら訂正した。「武士じゃないよ。俺たちは『地域安全組合』の人間だ」


しかし、子供は真剣な眼差しで言い返した。「だって、熊や悪い人から村を守って、ご飯をもらってるんでしょ?昔話の武士さまと一緒だよ!」


このやり取りは、瞬く間に地域に広まった。公的な法や行政に頼らず、武力をもって主君(真田)の領地と民を護り、その代償として俸禄を得る。この概念は、千年の時を経て、人々の記憶の底に眠っていた「武士」という身分を現代に呼び覚ました。


真田義人は、この現象を見逃さなかった。彼は「武士」という言葉が持つ、伝統と権威の力を理解していた。


真田は、組合員全員を集め、改めて組織の再編を発表した。


「諸君、君たちがこの地にもたらした功績は、もはや単なる治安維持の範疇を超えた。君たちは、この真田家が擁する、かけがえのない防衛者である!」


真田は、組合員に対し、特別に作らせた新しい制服を配布した。それは、現代の迷彩服をベースにしつつも、肩や胸部に重厚な防護プレートが取り付けられた、威圧的なものだった。そして、その制服の胸には、真田家の家紋を模した新しいエンブレムが刻まれていた。


「今日より、君たちを『地域安全組合』という事務的な名称ではなく、**『真田 武士団もののふだん』**と呼ぶ!」


歓声が湧き上がった。組合員たちは、単なる雇われ兵から、歴史的な重みを持つ「武士」という特別な階級へと引き上げられたことに熱狂した。


これにより、真田豪族内には明確な身分階級が確立された。


豪族(殿様): 真田義人


武士(棟梁・幹部): 加納幸蔵、及び熟練の元猟師・元自衛官たち


百姓(一般住民): 豪族の庇護を受け、農耕や労働に従事する人々


幸蔵は、真田から「武士団筆頭」の地位を与えられたが、その表情は晴れなかった。真田の支配体制は、彼が理想とした「純粋に住民を守る力」から、ますます遠ざかっていた。


「加納さん、どうしたんですか。俺たち、正式に武士ですよ?」興奮気味の青山あおやま たけるに、幸蔵は静かに言った。


「猛。武士はな、権力者のための刀にもなれば、領民を守る盾にもなる。真田は、我々を刀として使いたがっている。そして、刀はいつか、血で錆びつく」


この身分制度の確立は、すぐに住民の生活に影響を及ぼした。


豪族・真田義人は、武士団への俸禄を安定させるため、住民に対して「安全保障費」という名の新たな徴税を開始した。これは、従来の税金とは別に、武力による庇護の対価として納めさせるものだった。


住民の中には不満を持つ者もいたが、彼らの生活を脅かす熊や略奪者が現れた瞬間、武士団が即座に排除するのを見るにつけ、その不満は口にされることはなかった。


「税金は高くなったが、夜は安心して眠れる。警察も行政も、金は取るだけで何もしてくれなかったが、真田様は実際に護ってくださる」


住民たちは、自由と引き換えに安全を選んだ。この地の「法」は、真田豪族の武士団の武力そのものとなっていた。


真田は、この確固たる支配体制を中央政府に見せつけるため、ある発表を行う。


「この地域の物流、エネルギー、そして通信は、中央政府の管轄下から切り離し、真田豪族の完全管理下に置く。中央政府からの指示や干渉は、今後一切受け入れない」


これは、地方自治体の独立宣言に等しかった。中央政府は慌てて真田に是正を求めたが、真田は武士団を本部周辺に展開させ、威嚇。中央からの派遣団は、真田の領地に入る前に引き返さざるを得なかった。


現代日本の地方の一角が、法的に、そして実力で、中央集権体制から切り離された瞬間だった。

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