プロローグ『カギ村事件』
「はっ...はっ...はっ...」
青年は走る。炎に包まれた森林の中を駆け走る。
黒髪を揺らしながら、走り続ける。
森の奥から光が刺してくる。炎の先に広がっていた世界は、彼を、レイガルドを更なる悲劇へ誘う。
「...これは...」
村が、カギ村が燃え尽くされていた。
そこら中には村人の死骸がたくさんあった。
昔、レイガルドをいじめてきた青年達の死骸も。
「...な..んで..」
「--これは、驚いた。まだ生き残りがいたのか。」
レイガルドが声のした方を振り向く。
額に角を生やした白い長髪の男が立っていた。
魔族だ、しかも、黒いコートに金の紋章を埋めている。
間違いない、魔王軍、しかも幹部クラスだ。
「...貴方がこれを?」
「いい、人間とはあまり口を聞きたく........お前、なんだその魔力は....」
魔族は突然目を見開いて明らかに動揺していた。
だが、レイガルドはそれどころでは無い。もしかしたら...こいつなら殺せるかもしれない。
と、淡い期待を抱く。
「...あの...お願いです...」
「ん?」
レイガルドはゆっくりと魔族に近づき祈りをする。
その行動に何かしら意味があるのではないかと、魔族は警戒をする。
しかし、深い意味は無い。
本当に、ただ単純な、心の底からの本心だ。
「...僕を、殺してください...!」
青年は魔族に向かって、涙を流しながらそう叫ぶ。
「...言われずとも...そのつもりだ!」
魔族は土を蹴り、青年に向かって刃を突き出した。
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『カギ村事件』
『--この日、魔族5体、全て魔王軍の使者である事が確認済み。その全ての魔王軍はカギ村を襲撃したと見られている。
魔力の衝突から何かしらの事件を察知し、国の魔法使い達が駆けつけるが、その頃には村は既に崩壊していた。同時に、5体全ての魔族が殺されている残穢を確認。
この時、村の唯一の生き残りである青年が発見される。その青年を重要参考人として国へ連れて行った様子が確認される。
政府は今も尚、魔王軍5体を退けたと思われる青年について詳しい情報を公表していない。』
事件の翌日、この記事がセリシア王国に広まった。
短編小説です。
一応学園モノになる予定です。