表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/76

プロローグ:左遷先は、異世界

 東京・大手町。


「お引き取りを。ここはもう、あなたの会社ではありません」 


 無機質な声とともに、零は警備員に腕をつかまれた。

 その手を払いのける気力もなかった。 


 敵対的買収──TOB。

 一ヶ月前、上場企業である彼の会社は、外資と結託した旧経営陣に株を過半数握られ、乗っ取られた。

 守ってきたものは、あまりにも脆く崩れた。 


 資本は力だ。

 ルールを知っている者が、ルールの中で一番強い。

 

「皮肉だな。俺が一番それをわかってたはずなのに」

 

 夜の風が吹き抜ける。

 35階建ての屋上、無人の空に、零は立ち尽くしていた。


 失ったのは会社だけじゃない。

 育ててきた人間も、パートナーも、株主も──

 “信頼”さえも、数字の一行で消えていった。 


 目を閉じる。

 耳鳴りがやけに遠くなった。

 

 ──その瞬間、空気が“ねじれた”。

 

 光が逆流し、風景が崩れる。

 コンクリートが消え、重力が裏返り、音がしなくなる。 


「は……?」

 

 気づけば、そこは石造りの広間だった。

 

 そして、金の髪をした少女が、神妙な顔で彼を見つめていた。 


「異界より来たりし御方よ。我が国を、お救いください」

 

 加賀谷零、二十八歳。

 天才と呼ばれ、すべてを失い、そして今──異世界に立っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ