3.塔間偵察
よく晴れた丘の上の森の入り口。茂みから出てきた二人の兵士が息をついた。
ファンスィ・ワン(24):はあ、はあ、危なかったな。
ナーゴ・ルート(19) :……は、はい。
今日はナーゴ・ルートにとって初めての偵察任務だった。よく晴れた日の光を反射し、チラチラと揺らす彼女の首元の双眼鏡のレンズには細かいヒビが入っている。遠くを見つめながらファンスィが乾いた口に水を注ぎこむ。ナーゴの方はまだ息を整えるのに必死だ。
ファンスィ・ワン(24):いや、ほんとに危なかったな。
ナーゴ・ルート(19) :……はい。ほんとに。
再び沈黙。この気まずさに耐えきれず、ファンスィは何の当てもなく立ち上がってウロウロし始める。
ファンスィ・ワン(24):それにしてもよく逃げ切れた。うんほんとに。
ナーゴ・ルート(19):そ、そうですよね。もう終わりかと思いましたもん。
「見つけたぞ! 向こうだ! 追え!」
ファンスィ・ワン(24):マズイ。行くぞ!
ナーゴ・ルート(19) :はい!
ファンスィとナーゴ、二人は同じ偵察部隊に所属している先輩・後輩の関係に過ぎない。生きるか死ぬかの狭間で逃げ惑う姿がやけに魅力的に映る二人。その後、何とかして逃げ切りはしたものの、帰還するなり二人は上官にこっぴどくしごかれ、各々のタイミングで泣いた。




