1.小戦場砂漠
「……チッ。」
同僚の覇気のない舌打ちが、この銃火器の音にかき消されることなく鼓膜にまで到達するのは何なのだろう。
「……それ止めてくれ。」
「……チッ。」
ダダダダダッ。発砲音、衝突音、粉塵音、同僚の舌打ち、動きに慣れ過ぎて装填が怠い。それらが何重にもなって耳鳴りだった。上空には雲一つない、砂漠の猛暑と光る汗が、この小戦場に参加した連中全員の共通項だった。前線兵に渡された軽装備など、例に挙げた中のどれか一つだって解決してくれるはずがない。この小戦場ではこのまま誰も死ぬことなく、互いに持って来た銃弾を全て使い切るだけで終結するだろう。ただしそれは互いに一瞬も気を抜かなければの話だ。バリケード越しに向かい合った両軍、横並びに銃を構えた全員とっくに限界を迎えていた。
「……チッ。」
「おい、舌打ちを止めてくれ。」
やっと聞こえたらしく、同僚のユンフ・バンドはその赤黒い目をこちらに向ける。そんなあらゆる動きが鈍い。だから暗い奴は嫌いなんだよ。普段大人しくしているせいで極限状態に耐える余裕というのを持ち合わせていない。
「……はい。」そしてそれだけの返事。
ダダダダダッ。重なった戦場の音には周期がある。バラけたり完全に一致したり、精神を害すためだけの波形。砂漠のべた付いた空気。今は余計なことを考えてでも撃ち続けることに意味がある。気を緩めずに警告射撃を続け、相手にも警告射撃を続けさせる。死んでも砂漠にケツをつけるな。禅の領域が目前に戦場は肩を力ませたまま、敵の存在感と味方の存在感が、自らの存在感と同化してくる感覚に、決してぼんやりなどしてはいけない。
ダダダダダッ。ダダダダダッ。銃の強烈な振動を肩で持ち、無心で引き金を押さえ続ける。
「……チッ。」
そして再発した同僚の舌打ち、重なった戦場の周期、両軍の弾薬はピッタリ同時に尽きた。ここにいる誰もがそれを察知し、一斉に体を砂漠の上へ投げ出す。
「はああ。お疲れさん。」
「お疲れ様です……ピオニイさん、それ、耳に砂入りますよ。」
「いいんだよ。温けえ。」




