02-11
「――なるほどな。それは間違いなく組まれてるな」
セリナは自動販売機で買ってきたペットボトルの水を飲みながら、応えた。
「誰が組んだと思う?」
セリナは広縁にある椅子に腰掛け、足をぱたぱたと動かしながら問いかけた。
何かを示すように上げられた手には、いつの間にくすねてきたのか、あの天井裏でみた人形の紙が握られている。
「……ちゃんと祓ったのか、それ」
「うーん、いまのボクが触ってなんともないのだから大丈夫じゃないか?」
「妙な体の張り方をするなよ……これはどこの系統の式だろうな……」
眉間に皺を寄せながら、ユウカはその形代をセリナの細い指から奪い取った。
咥えタバコの煙が揺れる。
ユウカは煙草を灰皿に押し付けるように消して、まじまじと形代を観察しだした。
それを見たセリナが呟く。
「……ボク達のところだったりして」
ユウカの肩がピクリと動いた。
「そんなバカな。形代の形状は似ているけれど、それだけで断定はできない」
「ではどこの」
「わからん」
一瞬の沈黙。
空気が重くなった刹那に、セリナがおどけた口調でユウカに突っかかる。
「しっかりしたまえよ、霊障コンサルの社長さん」
「はったおすぞお前」
「おお、怖い怖い」
拳を上げたユウカから逃げるように、セリナは小走りで僕の後ろに隠れた。
その割にセリナはくつくつと笑っている。ユウカを見やると、呆れたような顔をしていた。
両者に喧嘩の時のそれのような、緊迫した空気はない。いつものじゃれあいのようなものなのだろう。
空気が柔らかくなったところで、ここぞとばかりに気になっていたことを聞いた。
「……組んだと言うのは?」
文脈から何となく察しは付くし、存命のときに僕の親の口からも時々聞こえてきた単語でもある。
けれど変に知ったかぶりするものでもないから、聞いておくに越したことはない。
「ああ、悪いな。置いてきぼりにして。こういう界隈ではそういう風に言うんだよ。ノロイを仕掛けることを」
*
「――ノロイの根源は、人の思いだ」
ユウカは煙草に火をつけながら、ポツリと話しだした。
甘くも苦い、紫煙がゆらりと漂う。
「悪霊もそうだと」
先ほど見た、得体のしれないあれのことを思い出す。ユウカはあれも――悪霊のこともそう説明していた。
「そう。悪霊も、ノロイもマジナイも……イノリの出発点は人の強い思いだ」
「途方もない強い思い――自らを蝕むほどの強い思いの発露としてそれらが現れる」
――だから人を呪わば穴二つなのか。
ふとそう思った。
「そんなことを毎回やってたんじゃカロリーが高すぎる。それを専門とする連中は、効率よくノロイを発露させるための仕組みを組むんだよ。供物とともに」
「今回、コウタ達が見たものがまさにそうだ。各部屋から伸びる形代で作られた通路が、逆止弁を経てこの部屋に集まっていたんだろう。――それは、集積装置にほかならない」




