006 行き詰まり
かすかな光が虚無の灰色の薄明を突き破り、永遠の夜に閉じ込められたように見える街に、不気味な影を落としていた。それは、その憂鬱な美しさをさらに際立たせるものだった。
古びた図書館には圧倒的な静けさが漂っていたが、その場の緊張感はほとんど触れることができるほどに高まっていた。イアムンドとエリックは凍りついたように立ち尽くし、目の前に現れた謎めいた人物を見つめていた。
「さて、ここには何がいるんだ? 解放者と禁断の知識を持つ者、だが王は見当たらないな?」
彼の目は鈍く、不気味な紫色の光を放ち、その瞬間、イアムンドとエリックは周囲の空気の重さを感じた。何か見えない力がこの場所から命を吸い取っているかのようだった。
エリックの声は震えていた。「何が…起こっているんだ…?」
イアムンドは答えなかった。彼は心の中で揺れ動く感情を抑えようと必死だった。目の前の相手が並外れた存在であることを理解していた。この人物は普通の存在ではなく、彼が知る虚無の生物ですらなかった。
その時、謎の人物の背後にある影が動き始め、馬のような形をとったが、その姿は歪み、異常なものだった。影の目は同じ紫色に輝き、その存在があたりの光をすべて吸い込んでしまったかのように、恐怖のオーラが場を支配した。
イアムンドは武器に手を伸ばし、「俺が彼を引きつける。お前は逃げろ。後で合流しよう」とエリックに言ったが、無駄だった。エリックは恐怖でその場に釘付けになっていた。
「抵抗するつもりか?」謎の人物は冷静で皮肉な調子で言った。「お前が精鋭の一員になったのも無理はないが、残念ながらその努力は無駄だ。」
イアムンドが動く前に、彼は自分が圧倒的な力で地面に押さえつけられているのを感じた。影が地面を打ち付けたことで、イアムンドは膝をつき、地面に跪いていた。
「イアムンド?」エリックの声はほとんど聞こえないほど弱々しかった。
だが、イアムンドは返事をすることができなかった。彼が感じていたのは、肉体の前に精神を圧しつぶすほどの圧力だけだった。抵抗しようとしたが、動くたびに激痛が走った。
その人物は邪悪な笑みを浮かべた。「お前の抵抗は称賛に値するが、もがけばもがくほど終わりに近づくことになる。理解しているか?」
イアムンドはかすれた声で、それでも決意を持って言った。「俺は…許さない…」
その人物の笑みは揺るがなかったが、彼の目には少しの哀れみが浮かんだ。「ああ、この者が君たちに与える厄介なことだな。仕方ない、助けてやろう。引き返せば、何もなかったことにしてやる。」
「俺を…バカにしているのか?!」イアムンドは歯を食いしばりながら、のしかかる力に抗って言った。
途方もない意志の力で、彼は頭を持ち上げた。彼の赤く燃える目は紫の光を帯びていた。イアムンドの中にある力が謎の力と衝突していた。何が起こるかはわからなかったが、彼は諦めることができなかった。
その瞬間、その人物の笑みは冷たく、感情のないものに変わった。「冗談だ。お前たちをここから生かして帰すわけがない。」
そして、何の前触れもなく、彼は手を持ち上げ、イアムンドに向けた。瞬く間に、イアムンドの上半身が吹き飛び、血が四方に飛び散った。
エリックはバランスを崩し、顔は青ざめ、冷や汗が額から滴り落ちた。心臓が激しく鼓動し、視界がぼやけ、呼吸が苦しくなったが、意識を保っていた。彼が感じていた恐怖に押しつぶされ、叫ぶことすらできなかった。
その人物はゆっくりと視線をエリックに向けた。エリックは無意識に後退し始め、足は震え、立っていることすらできなくなった。影が再び地面を打ち付け、エリックは突然動きを止めた。彼の体全体に痛みが広がり、血が皮膚から汗のように滲み出し始めた。エリックは狂ったように叫び始めた。
イアムンドは叫ぼうとしたが、その声は彼の心の中だけに響いた。彼はエリックに手を差し伸べようとしたが、これは幻覚だと知っていた。『これが本物のはずがない…そうだろう?』彼は闇の中に沈んでいった。 (“これが君の限界か?”
「おお、いま私は誰か愛しい人の声を聞いて、私を励ましているのか?」イアムンドは弱々しく考えた。)
その人物は苛立った表情で「これが君たちの全力か?」と言った。そして、彼は小声で自分に言った。「もしかしたら、彼と関わる者に対する期待が高すぎたのかもしれない。さて—」彼が話を終える前に、刃が彼の目をかすめた。
イアムンドは手を伸ばして刃を取り戻し、もう一方の刃を引き抜いて攻撃態勢を取った。状況は厳しかったが、彼は戦う準備ができていた。彼の髪留めが外れ、こめかみの静脈が浮き出し、彼の目は赤く燃え上がり、冷徹な表情を浮かべた。彼は、自分の前にいる相手が強敵ではないことを理解しているようだった。
エリックは突然正気に戻ったが、まだ何が起こっているのか理解していなかった。
その人物はエリックに目を向けた。エリックの幻覚は消え去り、イアムンドは殺気を放つようになっていた。その人物は微笑み、その目には少しの賞賛が浮かんでいた。
「悪くない、ヴィナリの息子。」