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うなづくまでの10%

おまけ

「先輩、そろそろオレの事、先輩のものにしてくれる気になった?」


オレの言葉に、両手でスマホを弄りながら細長いスナック菓子を口に咥えていた先輩がこちらを見た。

真ん丸になった目がありありと驚きを伝えている。可愛い。

思わず噛んでしまったらしく、ぽたりとスナック菓子が口から落ちた。

あわてて下を見た先輩に、スナック菓子を指さす。

膝に落ちたそれを一瞬迷ってから口に入れ、先輩が改めてオレを見た。


「なんて?」

「だから、そろそろ先輩のものにしてくれる気になった、って?」

「いろいろ突っ込みたいけど、とりあえずそこは俺のものになれ、じゃねーの?」

「え、だってそれ何か上からじゃない? そもそも先輩は物じゃないし」

「そうだけどそうじゃなくて。まあいいや、何だよ急に」


苦虫を嚙み潰したような顔で先輩が言う。これはタイミングを間違えただろうか。

でも口をもぐもぐしながら眠たそうに目を擦った先輩が小さい子みたいで可愛かった。

なんて言ったら絶対に絞められるから言わないけれど、まあとにかくそろそろそんな先輩に触れる権利が欲しかった、んですよ、オレは。


「先輩、この前オレのこと80点って言ったよね? 今何点くらい?」

「……89点?」


相変わらず渋い顔をしているが、でも答えてはくれるらしい。

やけに中途半端な点数だけれど、一応前には進んでいる。


「やった、点数増えてる。正直何で加点されてるのかわかんないんだけど、オレ100点取れるように頑張るね!」

「コーヒー淹れてくれたら1点付けてやる」

「えっ、そんなんでいいの!? あと11回コーヒー淹れたら100点にしてくれる!?」

「んなわけねーだろ」

「ですよねー。でも今回の1点は付けてくださいね、約束ですよ!」


思ったよりもゆるゆるの先輩の加点方式にフットワークも軽く立ち上がる。

湯沸かし器に水を入れてスイッチを押した。

お湯を沸かす間にコーヒーの用意だ。あいにくとここにはインスタントしかない。

もし手抜きって減点されたらどうしよう、どこかで豆を買ってくるべきか。


「足りないのは、俺の覚悟なんだよな」


コンビニに豆は売っていたっけ? と、わりと真剣に悩んでいたら先輩が何か言った。

でも湯沸かし器の音が煩くて聞こえない。


「ごめん、先輩。聞こえなかった、何?」

「や、独り言。なんでもない」

「そお? ねえ、先輩。インスタントしかないんですが良いですか?」

「いい。っていうか、はじめからインスタントだと思ってた」

「なんだ、悩んで損した。じゃあ、もうちょっとだけ待ってて下さいね」

「ん。よろしくな」


ひらりと手を振って、先輩がまたスマホに視線を戻す。

スマホを取り上げたらもう少しオレの事を見てくれるかな。でもそうしたらきっと減点間違いなしだ。

テストで100点を取れたのは小学校まで、中学以降で100点なんて一度も取ったこと無いけれど、今度ばかりは満点まで諦められない。

苦手な英語と数学よりも難しい、こんな難解なテストは人生で初めてだ。



(戦隊ヒーローから国民のヒーローに駆け上がるお前を、独占する覚悟はまだ着かない)



うなづくまでの10%


FIN

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