表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第2話〜異世界転移初日〜

召喚戦争 ルール

第12条 4.パートナーとなる両者の間柄は、種族、地位、性別、いずれもその是非を問わない。


繋「それで、もうこのままそっちの世界へ行くのか?」


シャリア「なぁ、繋。誘った方がこう言うのもなんだが、随分と落ち着いていないか?一応その、戦いにいくのだが・・・・・・」



――シャリアはそう言うと不思議そうに繋を見つめる。



繋「ん?まぁもちろん初めての経験だが、そういう題材のものはこっちには沢山あるからな、まぁ見慣れたというか」


シャリア「見慣れた!?過去にそういった経験をした人物を知っているのか!?」


繋「あぁ〜違う違う。とりあえずこの話はまた後でするから!それで?もう行かないといけないのか?」


シャリア「いや、そんなにすぐでなくていい。異世界からの来訪者には戦いに参加する前に2日ほど猶予が与えられる。」



 シャリアが言うには、向こうでそのまま命を落とす、もしくは向こうで使命を見つけた者はその世界に留まるなどの理由で元の世界に帰らないこともあるから、別れの挨拶や身支度を済ませるための猶予が与えられるらしい。



繋「2日か、少ない気もするが、長くても未練が残っちまうか、仕方ないな」


シャリア「そういうことだから、私も一度帰還する。また2日後の同じ時間にここに集まろう。それで良いか?」


繋「おう、それで大丈夫。何か準備するものとかはあるのか?」


シャリア「さほど気にすることはない。生活に必要なモノはこちらの世界のそれほど変わらない。通貨等に関しても向こうに行けば貴方の持つ財産は自動的に変換される。転移したは良いが無一文で路頭に迷われたら困るからな」



 なんともまぁ気の利いた異世界だろうか、珍しい物でも持っていくべきかと思ってたが杞憂に終わりそうだ。


繋「OK、そんじゃまた2日後に」


シャリア「あぁ、また会おう」


 

 そう告げるとシャリアの身体が淡い光を纏い、次の瞬間姿を消した。


繋「・・・・・・いや、それなら登場も静かに来いよ」





 次の日から俺は出来る準備を進めた。

バイトへは長期留学が決まったとウソをついて辞めて、学校へは休学の手続き、しばらくの間離れても大丈夫なように準備をした。意外となんとか帳尻は合うものだ。大学生とはなんと都合のつけ易いものだろうか。いや、普通はそうもいかないんだろうな。



繋「あとは・・・・・・」






???「はぁ??海外旅行??」



 疑いの声を上げるその声の主は、俺の親だ。

俺は両親にしばらく日本を離れる事を話す為、実家に帰ってきた。



繋「まぁなんつうか大学生だし?なんかそう言う見聞を広めといた方が良いかなぁって思ってさ」


結「見聞ってあんた、そんな言葉知ってたのね」


繋「バカにすんなよ大学生だぞ!?」



 この人を小馬鹿にしたような軽口を叩く人は俺の母親。新城しんじょう ゆいだ。

若くして俺を産んでるので母というより歳の離れた姉のような感覚っぽい気もする。



結「でも海外って急よね〜、あんたお金とかあるの?どこにいくの?ラトビア?リトアニア?」


繋「あぁしつこい!てかなんで母さんの中の候補がヨーロッパの、しかもマイナーな国なんだよ!」


結「あら良いじゃないヨーロッパ!どうせ行くならオシャレなとこにしときなさいよ〜、あんたのその素直じゃない性格も少しはマシになるんじゃない?」


繋「俺は別に素直だし、オシャレとは無縁だから良いんだよ・・・・・・」



 この人と話すといつもだ。なぜかペースを乱される。気づけば俺の話したい事より、向こうが聞きたい事に答える流れに変わっていた。



結「それで誰と行くのよ、海外なんて。いつもの大ちゃん?それともあんたまさか、女の子!?」


繋「ゼミで知り合った子だよ、今回は大介はいかない」


結「ゼミってなによ!女の子!?2人!?若いわねぇ良いわねぇ〜、あんた変なことするんじゃないわよ??」



 しまった、めんどくさい流れになってしまった。なんで俺は適当に流せないんだ。とりわけウチの母は恋バナが好きだ。これは長くなる、早めに話を切らないと。ん?そういえば・・・・・・



繋「?そういえば父さんまだ帰ってきてない?」


結「そうねぇ、そろそろ帰るって連絡はあったからもう帰ってくるはずよ、あんたがウチに来るって聞いて楽しみにしてたし、寄り道はしないんじゃない?」



 ウチは割と家族関係は良好であると思う。

特にこれまで大きいケンカは無く、両親には大事に育ててもらった、はず。でも俺は両親のことに詳しいわけではない。2人の馴れ初めとか知らないなぁ、そういえば。まぁいつかわかる日が来るんだろう。


 


――ガラッ



???「お、久しぶりだな!繋」


繋「おぉ、父さん」


巡「まだまだ成長期か?おっきくなったな、元気にしてるか?」



 この気さくな雰囲気を常に纏わせている感じの良い人が、俺の父さん、新城しんじょう めぐるだ。

俺の趣味やサブカルの知識は大体父親譲り。大学に行くきっかけも父親の影響だった。



結「おかえりなさいお父さん、ねぇ聞いてよこの子、突然海外に行くなんて言い出してね?」


巡「ただいま母さん、そうかついにか、良い経験じゃないか繋、父さんも若い頃は海外に行って経験を積んで男としてレベルアップを図ったものだなぁ」


繋「ついに??まぁ、そんな感じだよ。時間のある今しかできない経験があると思ったからね」


結「それにねぇ、この子、彼女と行くんですって!ゼミで知り合った子らしくてね?」


巡「なに!?彼女!?繋、そうなのか!?お前やるじゃないかぁ」


繋「違う!断じて違う!!母さんの妄言だよ!父さん信じちゃうじゃないか!」


結「妄言なんてあんたそんな言葉じゃよく知ってるわねぇ」


繋「はぁ・・・・・・このくだりさっきもやったから・・・・・・」



 家族団らん、と言って良いとは思うが、悪くない時間がこれから親に黙って戦いに行く俺をなんとなく励ましてくれてる、そんな気がした。



繋「じゃあ、俺そろそろいくよ。ご飯ごちそうさま。また帰ってきたら話聞いてよ」


巡「おう、元気でやれよ。自分を見失うなよ」


繋「珍しく深いこと言うな・・・・・・」


結「海外なんて危険もあるだろうから、気をつけなさいよ。彼女を守ってあげなさいね」


繋「母さんも珍しく真面目だな、大丈夫だよ!あと彼女じゃないって」



繋「じゃあ、行ってきます」



結、巡『いってらっしゃい』




 そうして俺は実家を後にした。もう別れの言葉は済ませた。 

帰り途中、もう会えないのかもと思う自分の心を、大丈夫、また会えると奮い立たせながら、でもそれでも寂しさは消えることなく、少しの涙に変わってこぼれ落ちていった。





結「ねぇ、あの子・・・・・・」


巡「そうだな、きっとデカくなって帰ってくるさ、なんてったって、俺の子だからな」


結「うん、無事だといいね、どこにいてもね」












――2日後、初めて出会った場所



シャリア「やぁ繋、待っていたぞ」


繋「また雷と共に来るんじゃないかとヒヤヒヤしてたよ・・・・・・」



 俺たちはまた再会した。出発の時が近づいてきた。



シャリア「この世界でやり残したことはないか?」


繋「うん?まぁ、やりたいことは沢山あるんだけど、それはまた帰ってきてからでいいもんな、大丈夫、行けるよ」


シャリア「・・・・・・そうか、向こうの世界では、私がいる。貴方は1人じゃない」


繋「そりゃ、心強いねぇ。頼りにしてるよ、ナイトさん?」


シャリア「それ、からかってるだろう?まぁ良い、貴方にも強くなってもらうからな。さぁ、行こうか」



――シャリアが目を閉じた時、周囲に青白い光の粒が集まり出してきた。その粒はシャリアと繋を囲い、包み込むようにその姿を変えた。

繋はその眩しさに思わず目を閉じてしまう。

目を開いたその瞬間、繋にとって初めての光景と感覚が広がった。



繋「ここが、ラグナウォール・・・・・・」



――目の前に広がる風景は森林が均等に列を組み、青空を覆い隠すように生い茂っていて、それでいて空気は澄んでいる。足元を流れる河川は澄み切っており、泳ぐ魚や水中に沈む石ころまで鮮明に見える。

これだけだとただの大自然なのだが、それだけではない。空に浮かぶ淡く光る玉のような物質。触ろうとするが手をすり抜け、視認することしかできない。その玉は青、赤、黄色、いや3色に留まらずさまざまな輝きを放っている。


繋「なんて、綺麗なんだ・・・・・・」


シャリア「どうだ?私達の世界も中々だろう?」


繋「あぁ・・・・・・ここまでちゃんと異世界を感じるのは流石に初めてだから」


シャリア「ふふっ、口が開きっぱなしだぞ繋、とりあえず今は歩こう。まずは私の故郷の村までな。ここからだいたい30分ほどだ」



 そうして俺たちはシャリアの生まれ故郷まで進むことにした。

道中、召喚戦争について簡単にシャリアから教えてもらった。



1.ラグナウォールには3つの大陸、8つの国があり、それぞれに王がいて、国を治めている。


2.3つの大陸の中心、エンファシスと言われる国が残り7つを含める全ての国のトップと呼ばれており、召喚戦争もその国の王を決める戦いである。


3.その昔とある人物が中心の王になった時、エンファシスとその人物の出身国以外の国を崩壊させるような政策が敷かれ、その際他国との間で反乱が起きた。


4.それを止めたのは異世界からの来訪者とそのパートナー。異世界人によって救われた歴史から学んだラグナウォールの人々は、世界を納める王には優秀な異世界のパートナーが必要だと考え、召喚戦争を行い、生き残った一番勇敢な人物たちにこの世界を託すことにしている。




 といった具合だ。自分達の世界の問題を他者に委ねるとは如何なものかと思ったが、来訪する異世界人が各々納得しているならそれもまた良いのかもしれないな。


 ちなみにこの世界の理もざっくり教えてもらった。

この世界には『ルナ』と呼ばれる力が巡っているそうで、魔法や機械などの動力源としてそれを用いているらしい。

ルナは人の眼には視認出来ず、感じる方法は専用の計器、もしくは法具などといった魔法を身に纏う装備をするなどしなければ分からないらしい。

ルナという名前の通り、夜の方がその力は活発に働くらしく、昼間は夜に比べて出力が劣る為、夜の内に量をストックしておく方法とかもあるらしい。



 とまぁこんなところらしく、まだまだ聞きたいことは多数あるのだが、今日はもう歩き疲れた。また追々聞いていくことにしよう。



シャリア「さぁ、ついたぞ。ここが私の育った村だ」


繋「なるほど、村だな、イメージ通りの村だ」


シャリア「なにをイメージしてたのか分からんが、今日のところは寝床に案内しよう、その前に村長に挨拶だ」


 

 そういうとシャリアは俺を連れて村の一番奥の大きく構える豪邸に案内してくれた。



シャリア「村長、戻りました。そして私のパートナーを連れて参りました」


ドナー「おぉシャリア、よく戻ったね、そして君が、繋くんか」


繋「あ、どうも、初めまして・・・・・・ってなんで俺の名前を??」


ドナー「はっはっ、細かいことは気にしなくて良いんだ良いんだ、よくきたね、ゆっくりしていくと良いよ」



 この人が村長のドナーさん。てっきり人かと思ってたが、その実種族としてはドワーフに近いらしい。小柄な体格だが話しただけで分かるその器の大きさは、村長と呼ぶに相応しい風格を備えていた。

すでに村長としての任期を60年以上続けているらしく、人脈の広さは計り知れないんだとか。


ドナー「本戦の開始は1週間後だろう?それまでに国王にくらいは挨拶しておくべきだろう、いつ向かう?」


シャリア「明日にはここを発ってグランツに向かおうと思います。村長のおっしゃる通り、国王へは話しておくべきかと思いますので」


ドナー「うん、それが良いね。繋くんにもこの世界に慣れてもらいながら慌てず進むと良いよ。今日のところは私の邸宅で休むと良い」


繋「え、こんなデカいところで休ませてもらえるんですか!?すげぇ・・・・・・」


ドナー「はっはっ、君は素直なリアクションをするねぇ、似ている。やはり君は見た通り素晴らしい素質があるね」


 似てるって誰に・・・・・・といった質問をしても答えてはくれなさそうだ、ならこの記念すべき異世界生活初日を堪能させてもらうとしようか!!

 

シャリア「では繋、明日またここに迎えに来る。それまで今日の疲れを癒しておいてくれ。明日も移動が多くなるからな、よろしく頼む」


繋「そっか、シャリアは自分の家があるもんな。君の両親への挨拶は良いのか??」


シャリア「いや・・・・・・それはまた今度でいいだろう。今日は貴方も疲れているだろうし、ゆっくり休んでくれ」


 ?今少しだけシャリアの表情がおかしかったような・・・・・・


ドナー「繋くん、今は気にすることはない、部屋に案内しよう」


繋「え??あ、はい・・・・・・」



 ドナーさん、まるで見透かしたような一言。俺そんな顔に出てたかなぁ・・・・・・



――そして繋は客室に招かれ、この日は疲れを癒すべく静かに過ごした。









――夜、1人湖畔のふもとに立つシャリア。





シャリア「・・・・・・必ず、勝ってみせます。」










⭐︎キャラ紹介⭐︎


――新城 巡――

繋の父

身長183cm

繋が多くの影響を受けている人物の1人であり、趣味や好きや食べ物は彼から教えてもらって繋はハマった。

性格は基本的に温厚、繋でさえ父が怒ったところは見たことがないらしく、母である結も『あの人がキレたのは私が知る限りで2回だけ』と語っている。

繋曰く『怒らせたら絶対怖いと思うので、今まで非行に走ることは出来なかった』

武道をある程度嗜んでいる方で、剣道、柔道においては中学時代に全国ベスト4まで上り詰めた実力者らしい。今はただの会社員。




――新城 結――

繋の母

身長156cm

若くして繋を産んだこともあり、繋とは母子というより姉弟に近い感覚で接している。

あっけらかんとした性格と軽口も相まって人とすぐに打ち解けるのが特技らしい。繋自身もこの関係性は嫌ではないみたいだが、もう少し母親らしさも見せて欲しいとは思っている。

繋曰く『母らしいと思った事は少ないが、悩みを相談するならこの人』

たまに考えを見透かしたような発言、行動をする事があるらしく、結に対しては嘘はつけないなと繋は本能で感じている。専業主婦。





――ドナー村長――

フォリア村の村長。

歴代村長の中でダントツの人気と長い任期を誇っており、その魅力は繋の目にも止まる。

ポリシーは『村民あっての村』自分の地位は二の次、まず第一は村民の安全と繁栄を心から想い毎日を過ごしているとのこと。

小柄なのに笑い声は大きい、村中どこにいても笑い声で場所が分かるため、把握しやすいらしい。

その昔、召喚戦争に参加した事があるらしいがパートナーは見当たらず。

ちゃんと良い人。

第2話、遅くなりましてすみませんでした!

ついに始まる異世界での新たな出会いと、召喚戦争本番に向けての準備をする繋達。

次話では、もう少し仕組みの深掘りと繋にとっての整理の時間がメインになるかも知れません。

のんびり投稿が続きますが、どうぞお付き合いくださいますと幸いです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ