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走馬灯

作者: 深海鶴

童貞学生の処女作

のびた髪を耳にかけ、小走りで男はコンビニへむかっていた。仕事が休みの土曜の午後11時頃、遅めの夕食を買うためだ。団地の3階に住んでおり、外出はそこそこ面倒くさかったが腹が減った。1日中家にこもっており雨が降っていたことなど知らなかった。裾の長いズボンを濡れた地面に引きずりながら向かうこと5分ほどでコンビニに着いた。

月明かりのない夜道からは、コンビニの明かりを眩しすぎる。目を擦りながら、カップうどんとコーラを手に取りすぐレジに向かった。やっと目が慣れてきたところだった。客は自分1人だけであることに気が付き寂しい気持ちになった。1人暮しで友人もいない、常に孤独を感じ生きている。夜のコンビニでさえ感じることもあるものなのかと思った。店員の元気の良い声を聞くと、顔をあげることが出来なかった。会計を済ませ、逃げるようにコンビニを出た。

今の自分には暗い夜の方が落ち着く。雨を浴びることも気持ちが良く、家に帰りつくことが憂鬱に感じゆっくり歩いて帰った。いくつかの水溜まりに入ってしまったが、心地良く感じた。その刹那に、靴と靴下が汚れると思うと腹がたった。びしょ濡れの服にも気付き、さらに腹が立った。先程まで心地よく思っていた雨に対して怒りを覚え、走って家まで向かった。

帰り着くと明かりを付け、身につけてるものと買ってきたものを玄関に捨て、裸になった。寒気を感じ、先程までの自分に腹が立った。否、今までの自分に腹が立った。何度も思ったことはある。しかし、苛立ちは積み重なっていくものだ。自分より恵まれていない人もいる、自分より忙しくて大変な人だっていると思い、今までの自分を相対的に美化して精神を安定させてきた。今、何かが切れた。人生で最も「死」を美しいと感じた瞬間だ。無関心な性格だったが、今、気になることができた。走馬灯についてだ。走馬灯は死に直面した際、今までの人生経験で生き延びる手段を無意識的に探すことらしい。自分の人生経験は価値があるものなのか、気になった。ちょうど「死」への恐怖を感じなくなったところだ。ここは5階建ての団地なので飛び降りが1番都合がいい。自分のできる最高のオシャレをして屋上へ向かった。

帰ることを考えずに浴びる雨は最高に気持ちがいい。気持ちよくなって、服を脱ぎ捨て裸になった。肌寒いが気持ち良すぎる。高まった感情のままフェンスを超えようとした。足がフェンスに擦れて切り傷がついた。痛っ。急に飛び降りることが怖くなった。フェンスを超えた後に気づいてしまった。呼吸が荒くなる。寒気が不快に感じる。慌ててフェンスを超え戻ろうとする。滑った。


あれ…走馬灯なんてないじゃないか。

自殺ダメ絶対

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