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隣のキミと過ごす、本当の恋人までの一年間。  作者: 四乃森ゆいな
第二章
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第18話「幼馴染同士は、お互いに真意を打ち明かせない①」(凪宮晴斗の場合)

 ◆凪宮 晴斗◆


「はぁ……。思わず逃げてしまった……」


 ふかふかなベッド、その上に山積みにされた新刊のラノベ。

 僕――凪宮晴斗は、家に着くと同時に部屋へと入りベッドの上に乱れた制服で倒れる。


 転がる最中、少しばかりこの部屋に似つかない匂いが漂う。

 つい先日、まだ幼馴染だったあいつと一緒に寝たときに残った……抱き締めたキスした感触。そして、あいつの匂い。


 ……あっ、やばい。完全に今不審者モードだった。我ながらこれは引くって……。

 けどしてしまうのは、あいつが幼馴染で…………恋人同士だから、当然のことなんだよな。


 そんな彼女が――今朝知らない痣をつけていたことに気がついた。


 いつもだったら気にすることもなかっただろうに。……何故か今回のことは、無性に気になって仕方がなかった。


『――そんな跡、僕は知らない』


 そんな醜い感情が渦巻いていて……僕の中で何とも言い難い感情が混沌していた。僕自身も知らない。あんな小さな青痣如きで《《嫉妬している》》自分なんて……僕は知らなかった。


 ……でもそれを、渚に向ける必要はどこにもなかった。

 きっと不審がられている。幻滅されたと思う。

 けど仕方ないんだ。……こんな、自分勝手で、根暗だから言葉にも出せない、根性無しの幼馴染なんて。


 今朝のことも、言ってしまえば少し癪に障った。

 完全な無自覚だったのだろうが、僕にはわかった。――渚が嘘をついていたことに。


 彼女は図星を突かれたときの反応が表情に出やすい奴だ。嘘をついていることなど一瞬でわかった。でもあいつは、おそらく自覚していない。

 だけど癪に障ったのはそこじゃない。――彼女が嘘をついたことではなく、僕に本当のことを話してくれなかったことだ。


 そのとき初めて自覚した。――僕は彼女に痣をつけた『誰か』に嫉妬したんだ。


 運動部でもなければ文芸部にも所属していない渚が、一体いつ、どこで、誰にあんなものを付けられたのか。それを隠されたことに――。


「はぁ……。ダメだ、考えが暗い。暗すぎる……」


 こう考えていると本来自分が根暗な性格だということを忘れてしまう。

 それに元々、痣如きで嫉妬するなんて僕にはあり得ないことだった――こうなってしまった原因は当然、『ハル君のことが好きなの!』と告白してきた渚のせいだ。


 ……と、心の外側では文句や憎まれ口を吐けるものの、内側ではそんな気は失せている。

 それは、多分……僕自身も、渚のことが好きだからなんだと思う。


 でなければ、こんな些細なことで嫉妬などするわけない。僕のカノジョなのに……なんて、些細なことで僕らしくもない本心が揺らぐ。


 僕はごろん、とベッドの上を転がり仰向けになる。

 すると突然スマホに着信が入る。……もしかして。なんて淡い期待で画面を見ると、その幻想は一気に現実へと還っていった。

 文句を言ってやろうと、着信ボタンを押す。


「――お前暫く電話してくんな」


『いきなり何その暴言!! つーか酷くね!? 人がせっかく心配してやってんのに、何だその露骨な嫌味は!! ってかまだ「もしもし」すら言ってねぇんだけど!?』


「お前に心配される言われはない、不愉快だ」


『口の減らねぇ奴だな! それでもお前はオレの友人か!』


 容赦なく罵詈雑言を浴びせてくる通話主――藤崎透は、僕とは真逆に渚と同じ最上位カーストに点在するクラスメイトだ。


 正直、今このテンションで来られるのは非常に堪える部分がある。

 性格やタイプから考えても、僕とこいつが噛み合うことなんてほとんどないのは明白だ。


「……んで、何で電話してきたんだよ」


『要件ならさっき説明しただろ。お前のこと心配して電話してやったんだよ』


「余計なお世話だって、さっきも言わなかったか?」


『言われたな! けど、ちょっとそれどころじゃなさそうだったしな。……それに――何だよ、今日のあのあからさまな避け方は! あっははは! 今思い返しても笑える!』


「殴っていいか。そして地中に埋めてやる」


『何だその嫌がらせ! 物理攻撃反対!』


「お前が言うかそれ」


『けど今思うと、本当あからさまな避け方したよなっ! ある意味爽快だったよ!』


「…………。…………そんなことはない」


『じゃあ今の間を説明しろよ!』


「はぁ……。面倒な奴だな、本当に」


 今朝の一件があってからというもの、僕は滅多にしない行動を取ってしまった。


 この嫉妬心を表に出さず、どうやって彼女と接すればいいのか。朝露骨な態度で避けてしまったせいで、余計にそれは僕にもあいつにも悩みの種を植え付けてしまった。


 渚にはバレていなかったが、さすがにこいつにはバレてるよな。

 いや、多分避けたという事実だけは渚も気づいているはずだ。

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