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面倒やから投げたわけやないで?次世代に引き継いだんやで。

ブックマーク、評価ポイント、皆様ありがとうございます。



 西バーランディア大陸の魔の森は初めて来たがクルンヴァルトほどの難易度ではなく、さくさく進んで目的地の遺跡へとやってきた。


 途中、例の邪竜を追い出したというグリーンドラゴンが行く手を阻んだが、ルルミアに貰った魔道具のインフェルノストーム×五倍の威力を見るための実験台になってもらったら魔石すら残らないほどバラバラになった。


 ドン引きなロッテを尻目に意外に範囲は狭いんだなと口にしたらルルミアがじゃあ次回は十倍でと魔道具に新たに魔法を込めていた。


 いや、範囲は予想より狭かったけど威力は予想を遥かに上回っていたんだが。

 

 そこまで強くないとはいえレッサーではないガチドラゴンのグリーンドラゴンをこま切れにするとかビックリだし。


 とにかく障害は排除したと遺跡探索を続けたら、この遺跡は西バーランディア大陸でかつて栄華を極めた普人の王国のものだと判明。


 高い技術力で大陸の殆どを支配下においていたのだが、ある時禁忌の実験を行い一夜にして首都が魔の森に飲み込まれたという記述がとある本に記載されているだけの実在が疑問視されている国だったらしい。


「これで実在が証明されたね」


「本当にここなのか?」


「うん、名前も合ってるし」


 俺達の目の前には碑文が刻まれたでっかい石が転がっていた。


 ルルミアはこれを解読してその王国だと分かったらしい。


 俺にはちんぷんかんぷんだ。


「とりあえず、中に入って本を探そう」


 ルルミアはやる気満々だ。


「あるといいね、新しい本」


「うん。シャロ、先導をお願いね」


「分かってる。皆、気をつけてついてきてね。ロッテは遺跡探索は初めてだから特に注意。どこに罠があるか分からないから無闇に周辺の物にさわらないでね」


「わかりました。気を付けます」





 ゴロゴロゴロゴローーー!


 ロッテがうっかりさわった壁に仕掛けられた罠によって発動した巨大な金属製の玉から走って逃げる。


「あああぁぁぁぁ助けてーー!」


「兄さん、あれ切れない?」


「もう試した。無理だった。アダマンタイトだあれ」


「ブースト」


「自分だけじゃなくロッテにもかけてやりなさいやルルミアさん」


「あああぁぁぁぁーーー!」





「「「「コノサキハIDキーヲショジシテイナイモノハシンニュウキンシデス」」」」


 さらに先で謎のゴーレム軍団に取り囲まれる。


「じゃあIDとやらの代わりに剣と魔法で」


「関節を切り込めばいけるかな」


「金属だからとりあえず炎の高熱で溶かしてみよう」


「私は応援しています」





「パスワードヲニュウリョクシテクダサイ。モシクハDNAニンショウヲシテクダサイ」


「うーん、何か言葉を入れないとだめみたい」


「どんな言葉?」


「扉を開くための暗号なんだけど、ここにくるまで手がかりがなかったから」


「それじゃわからないな。壊す?」


「アダマンタイト製だから時間かかると思う」


「DNAニンショウってなんでしょうか?」


「個人の魔力に反応して開く魔力鍵みたいに特定の人の血とかに反応する鍵だよ。ここの光ってる部分に手の平を当てるタイプみたい」


「ほうほう……開いたな」


「開いたね」


「開きましたね」


「………デューク、実は王族?」


「んなわけあるか。普人なら開けれたんじゃない?」


「ロッテ、さわってみて」


「はい。………開きましたね」


「どれどれ……あ、私だと無理だ。やっぱり普人用なのかな?」


「種族で反応するような鍵ではないはずだけど………まあいいか、開いたし」




 沢山の像が設置された広い部屋に出た。


「あの王様の近くに立ってる黄金の像、なんかデュークさんに似てません?」


「そんなこと言うならあの側に控えている女性の像はロッテにちょっと似てるぞ」


「普人だから余計にそう見えるだけでしょうか?」


「そうだな」


「ここで行き止まりかな?」


「本、本は置いてないかな」


「知っている神様の像とかはないですね。神様を信仰してなかったのでしょうか?」





「むぅ、本が一冊もなかった」


「まぁ、機嫌直せよ。そのかわり各地の遺跡のヒントになりそうな古代の地図は手に入ったわけだし」


「あの地図だとイサカって昔からあったって事になるよね、兄さん」


「名前もそのままだしな」


「王朝が滅んだ後も街として残り続けたのでしょうか」


「イサカの地下に古代遺跡があれば本もあるのでは?」


「ない、とは言いきれないなぁ」


「何か開かずの扉みたいなのないのルルミア?」


「先ほどのIDやDNAのような扉ですね」


「わかんない。あの街についてからはずっと本を読んでるだけだったから」


「とりあえず、イサカ行くか?」


「そうだね、キーランもまだ忙しいみたいだし」


「私は異論はありません」


「しょうがない。行こうかー」




 ユールディン帝国は第三皇子ミュリアスの謀反を鎮圧した第二皇子キーランがそのまま帝都の現ユールディン皇帝ティーファスに退位を迫り、これをティーファス帝は受け入れた。


 また、権力中枢にいた西部皇家は邪竜の影響下にあった事から全員を排除し、代わりに東部皇家と平民出身の官僚を中心とした新政権を樹立。


 キーランは東部皇家で海洋都市ズィールを治めるバックラント家の長女との婚約を発表。


 ラグラントとの平和条約の締結を待って結婚するらしい。


 おそらく年内にはなるだろうが、流石にまだ当分先だなぁ。


 ちなみにラグラントとの和睦が成されたとはいえ、俺の顔を知っている人が居るかもしれないってことでユールディンに入国してからは俺はフルフェイスの兜を被っている。

  

 魔の森に行く途中は街に泊まらず野宿が基本だったが、イサカでは宿を借りて久しぶりにベッドでグッスリだった。当然シャロをモフナデしながら。


 翌朝はひとまず冒険者ギルドイサカ支部長のトルーマンと面会し、お礼として北の大陸で採取した素材をお裾分け。


 トルーマンは驚いていたがこの辺りでは手に入らない希少素材に目を輝かせ、お礼に俺の母親について独自に調べていたというその調査内容を教えてくれた。


「ここがそうかー」


「思ったより大きなお家だね」


 トルーマンの調査結果から訪ねてきたのが、母親の生家だった。


 名義はまだ母親だったが、現在は誰も住んでいないわりに小綺麗だった。


 今日は兄妹水入らずで、ルルミアとロッテは知識の棟で開かずの扉がないか調べにいった。


「とりあえず、中に入ってみるか?」


「そうだね」


 玄関の扉の前に立つと、なんとここの扉は魔力鍵がついていた。


 えー?こんなん王家とか高等貴族の家にしかついてない代物だぞ?


「こりゃ、壊すしかないか?」


「うーん、念のため魔力を流してみようよ」


 そういってシャロが魔力を流すと、あっけなく鍵は開いた。


「開いたな」


「開いたね」


「前に登録したりは?」


「してないよ」


「まあ、お袋だし」


「うん、母さんだし」


 俺達は無理矢理納得して中に入ると、中もずっと無人だったとは思えない綺麗さだった。


「誰か定期的に掃除に来てるのか?」


「そうとしか思えない綺麗さだよね」


 どこもさほど埃がたまっているわけでもなく、生活感はないがずっと無人というよりは数ヶ月留守にしていたとかそんな感じに思えた。


「お、こりゃお袋だなきっと」


「とすると両側はおじいちゃんとおばあちゃんかな?」


 居間に飾ってあった絵には若き日のお袋と思われる女性とその家族が描かれていた。


 この家を後ろにした家族の集合絵画のようだ。


「若いなー。今のシャロくらいか?」


「もっと若いと思うよ」


「親父と結婚したのがわりと遅い年齢だって言ってたもんな」


「でも歳を聞いても大人の女の歳を聞くもんやないでって教えてくれなかったよね」


 シャロのお袋の口真似に二人して笑い、居間を後にして他の部屋も覗いてみた。


 じいちゃんばあちゃんの寝室。

 

 台所。


 客間。


 そして、お袋の部屋。


「予想はしていたが」


「色々あるねー」


 錬金術師兼薬師のお袋らしい、所狭しと様々な素材と調合器具の置かれた部屋。


 素材は流石に経年劣化で使えない物が多かったが、中には希少な素材がまるで残っていたものもあったらしい。


 シャロが目を輝かせながら漁っていた。


 俺はそっち関係ではない所に目をやると、ベッドの脇のサイドテーブルに、一冊の本が置いてあるのが目に入った。


「日記か」


 ベッドに腰かけて中を読んでみる。



 ◯月✕日 

 

 不老不死の薬はないのかとお偉い貴族様がやって来てボケた事抜かしおった。アホちゃうかと返事したら上司にめっちゃ叱られてもうた。解せぬ。


 ✕月◯日


 エリクサーの研究をしとったら偶然お肌が若返る薬ができとった。上司に報告したらそんなん何の役にたつんやと返事しよったのでほんならこのレシピはうち個人で管理するでええな?と言ったら頷きおったのでレシピを薬師ギルドで公開したら馬鹿売れした。上司が上司の上司にめっちゃ怒鳴られとったからおかけで大儲けですわー言いながらその場を通りすぎたった。


 ◯月◯日


 エリクサー研究にどうしても必要な素材があんねんけど誰も採ってこられへん。冒険者のにいやん達も死にに行くようなもんやと依頼を受けてくれへん。どないしよ?自分で行くいうたら上司の上司に絶対ダメと両親味方につけて説得された。


 ✕月✕日


 必要な素材があっさり手に入った。外国のお貴族様の集団が知識の棟の視察に来はったんやけど、その内の一人が暇潰しに登った山で襲われたからぶち殺してもうたけど良かったんかとか言いながらギルドに持ち込んだらしい。ドラゴンをソロで倒すとか外国のお貴族めっちゃ強いな。


 △月◯日


 外国のお貴族のおかげで今まで手に入らんかった素材が全部手に入った。外国のお貴族にお礼言いに言ったら何故か街外れの牧場で牧場の人らと一緒に乳搾りしとった。外国のお貴族てめっちゃ変わりもんやな。


 △月✕日


 外国のお貴族と素材採取に出掛けた。モノが植物で玄人しか見分けがつかんからって頼み込んだらあっさりええよって返事もろた。しかしこのお貴族様普人の皮を被った別の生き物やないの?ドラゴン素手で殴り殺すとかおかしいやろ?生物は弱点さえつけば的確に殺せる?おとろしい人やな。


 △月△日


 お貴族様が帰る日まで後三日になってもた。逗留中に素材はようさん集まったんやけど素材よりこのお貴族様のが気になりだした。せやかてほっといたら家畜の世話しかしーへんしあんだけ強いのにみょーにどっか抜けとるし。あ~今日はミスばっかやん。


 △月□日


 お貴族様の帰る日。お貴族様からプロポーズされた。いきなりやんムードも何もあったもんやないで私一応花も恥じらう乙女なんやぞって言ったろ思ったけど口からは『はい』しかでーへんかった。おとんとおかんがめっちや喜んどる。私みたいなのを貰ってくれるような剛毅な人はこの人しかおらん思った?解せぬ。解せぬがまぁええか。これから一生お世話になります。




 いつの間にか横で一緒に読んでいたシャロと最後のページを読み終えた。このページ以降は白紙だから置いてってそのままだったのだろう。


「お袋だったな」


「お母さんだったね」


「親父だったな」


「お父さんだったね」


「お袋、お父さんがうちに一目惚れしたんやでーって言ってたけど、両思いだったんじゃねーか」


「お母さんらしいよね」


「しかし日記なんかつけてたんだな。実家では見たことなかったけど」


「お家だと錬金部屋で書いてたよ」


「道理で見なかったわけだ……ん?」


 裏表紙を開いたら、新しい感じの筆跡が残っていた。


「これは?」



 デュークとシャロへ


 このメモを見とるって事はうちの実家に来たってことやな。勘違いしとるやろうから言うとくけど、先にアプローチしてきたんはお父さんからやで。お母さんからやないからね。お母さんにベタ惚れのお父さんが可愛かったから結婚したんやで?そこは間違えないようにな。


 さて実家に来たんなら伝えなあかん事がある。


 実家は別にお貴族様やなかったけど、昔から住んどる地元の名士やった。大金持ちとか大地主とかやないねんけど、街議員とかにはようなっとったらしい。でもな、それだけやない。実家はとある王朝の生き残りでな、過去の遺産を引き継ぎ次の世代に手渡す使命を帯とったらしいで。ほんでももうそんな時代やあらへんとうちの両親、あんたらからしたらおじいちゃんとおばあちゃんはそう考えて私の嫁入りを笑って見送ってくれたんや。おじいちゃんとおばあちゃんは流行り病で二人同時にポックリ逝ってもうたと連絡来てな、すぐに帰ってお葬式あげたんやけど、まだ流行り病が酷い時期やったから二人には伝えへんかった。葬式終わって実家を掃除していたら両親からの遺書が見つかってな、読んでみたら王朝云々の話が書いてあったんや。地下室に何か秘密の扉があるらしいねん。お母さんは興味なかったからそのまま見ずにお家帰ったんやけど、それをどうするかはあんたらが決めなさい。面倒やから投げたわけやないで?次世代に引き継いだんやで。ホンマやで?ほな、愛しとるで二人とも。


 偉大なる二人のお母様より



「面倒だったんだな」


「完全に考えるの放棄してこっちに投げたよね」


 んーこんなんうちに託されても別に興味ないしなーでもほっといても何かあったらあれやしーよし、デュークとシャロが何とかするやろ、って感じだったんだろうなぁ。


「地下室かぁ」


「行ってみる?」


「存在を知ってしまったら放置はできないなぁ」


「だよねぇ」


 二人で地下室を探しにお袋の部屋を出たのだった。



 


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