彼女はまさにモフモフ不足な世のモフラーの救世主と言えるでしょう
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「あの時はビックリしたよ。カウリエンからブラフエンズの奴に襲われたって連絡きてさ」
お茶の入ったカップを置いたミアーナ様は可笑しそうにお腹に手を当てた。
「そんな?!って思ったら普人と一緒にブラフエンズを神天宮に吊るしに行きたいんだけどどうしたらい~い?何て意味不明な事言い出すしこの子。もう訳がわかんなかったけどとりあえずある程度事情を聞き出して、使徒なら大丈夫って伝えて慌ててルナリアと母さんに連絡してさ」
「私はミアーナからの連絡を受けて、可愛い妹をはめたレヴィーナを捕まえるために事情は後で話すから今すぐあいつの神殿に入れるようにしてとお父様にお願いしたわ」
「母さんにはブラフエンズがレヴィーナと共謀した事、ブラフエンズの行いが愛なんかじゃない事を審判してもらうために来てもらう事にして、とりあえずカウリエンに合流したら本当に普人が神界にいたし。大きな荷物を背負ってさ。神天宮の門まで来て布から出てきたブラフエンズのアホな格好っていったらもう!」
思いだし笑いでお腹を抱えるミアーナ様。
「私はその頃レヴィーナにドンちゃんアタックを繰り返していたわね」
ドンちゃんとはルナリア様のペットの羊のドンケルク君のことで、羊らしく強烈な体当たりを得意とし、ルナリア様はそれでレヴィーナを神殿中どつき回してやった、お父様に事前に事情を話したら止められると思ったから後から話すっていったんだと胸を張っていた。
「あなた達を帰した後に入れ代わりでやって来た母さんもブラフエンズを見てお腹を抱えて笑っちゃって、中々審判が出来ずに大変だったんだから」
「そこにボロボロになったレヴィーナを背中に乗っけたドンちゃんと私が到着したんだけど、私もブラフエンズを見て思わず笑っちゃって」
「へんなおっさんにしか見えない吊るされたブラフエンズの前でお腹抱えて大笑いしてる母さんと私にズタボロのレヴィーナを背負った羊の横でクスクス笑うルナリアの図っていう謎の空間に通りがかった神々が何事だって集まってきて」
「ついには中からお父様まで出てきて、ブラフエンズを見た瞬間、後ろを向いて肩を震わせていたわね」
「その後ブラフエンズが人界の女性だけでなく神界の女神まで狙いだした事がバレて、そこにレヴィーナが関与していて、さらに襲われたのがカウリエンだって聞いてガイナス様がカンカンに怒っちゃって」
「やっと目を覚ましたブラフエンズは百年間その姿のまま自分の神殿内で謹慎。レヴィーナは百年間化粧もお肌のお手入れも髪のお手入れも禁止されて、二人とも悲鳴をあげていたわ」
当然の報いよね、と頷くミアーナ様とルナリア様。
そうか、あの格好のまま謹慎中か。
鏡とか見れないんだろうなー。
自業自得たけど。
「あの髪型と落書きは私とデュー君の神と使徒との初めての共同作業だったから、百年くらい残すのは当然だよね~」
おお、カウリエン様から黒いオーラが出ている。
とは言え襲撃未遂事件の当初はカウリエン様は本当に傷ついていて、ご家族と親友のミアーナ様、使徒の俺以外とは誰とも会おうともせず神殿内に引きこもっていたから、それを思えばこうやって話のネタに出来るくらい回復されたんだなぁとちょっと感動。
ミアーナ様も同じ気持ちなのか、カップを傾けながらこっちにこっそりウィンクをした。
今思えば、月一報告会という名のお茶会もカウリエン様が自身の傷つき沈んだ気持ちを紛らせるために行っていたのかもしれない。ミアーナ様が頻繁に顔を出していたのもそれが理由だったんだろう。
「本当、カウリエンも災難だったわよね」
「でも、おかげでデュー君と会えたし、悪い事ばっかりじゃなかったよ~。空から降ってきた時は本当にビックリしたけど~」
「それにしても、凄いタイミングで召還されましたよね俺」
「あの台座の仕掛け自体神々ですら忘れてたからね。そこにデュークが腰かけた瞬間と、カウリエンが誰か助けてって願ったタイミングが重なったからデュークが使徒候補として神殿に召還されたんだろうね」
あの神々との謁見が許されし忘れられた神殿は、元々使徒候補を選別するための場所でもあったらしい。
かつての世界は神様との距離がもっと近かったらしく、使徒も人界で幾多の試練を乗り越えた者のみが候補として選定の儀を受けられたという。
選定の儀とは、年に一度候補者達があの台座に腰かけて神々から選ばれるかどうかを見るもので、選ばれた者はそのまま選んだ神様の神殿へと転送され使徒に任命される、といった内容だ。
そこにたまたまどっこらしょっと座った俺が使徒候補としてカウリエンさまに召還されて、結果的にお助け出来たのだから人生って何が起こるかわかったものじゃないな。
「あの日、俺がダンプリンキャットをモフモフしにツェーラ山に行かなかったら、俺がこうして皆様とお茶をすることもなかったんですねぇ」
「ダンプリンキャットで思い出したわ。同志、例のモフラー魂を揺さぶる素晴らしいしっぽだけど」
「ハッ。こちらに」
俺はマジックバックから恭しくダンプリンキャット製のしっぽ飾りを差し出した。
「ふむ、このモフモフなさわり心地、まさにダンプリンキャット。中の詰め物もちょうどよい心地。素晴らしいの一言だわ」
「ハッ。こちらのしっぽもブラシの作成者の作品。彼女はまさにモフモフ不足な世のモフラーの救世主と言えるでしょう」
「同志デューク、私はこの素晴らしい作品の数々に対してモフラーの守護神として報いねばならないと思うの」
「おっしゃる通りかと。彼女はドワーフの中でも特に柔軟な発想の持ち主。彼女にはその物造りの発想を刺激するような希少な素材を褒美として与えられてはいかがかと」
「素晴らしい進言ね。さすがはモフラーの守護者と私が認めた同志デューク。では私の神殿にも使われている月の石を与えようかと思うのだけど、どうかしら?」
「この世に二つとない希少な素材。ミスリルやアダマンタイトすら足元にも及ばぬ物ですな。さぞかし喜ぶ事でしょう」
「では、同志デューク。後程月の石をドンちゃんに持ってきてもらうから、作成者に無事届けてね。頼んだわよ」
「ハッ!モフラーの守護者として必ずや」
「あなた達も、なんというか、仲良いわよね」
「む~、デュー君は私の使徒なんだからお姉ちゃん取っちゃだめだよ~!」
「カウリエン、同志デュークは貴方の忠実なる使徒にして、世界のモフラーを守護する者なのです。使徒は使徒、モフラーはモフラー」
「申し訳ありませんカウリエン様。モフラーでない私は私に非ず。モフラーであったが故にカウリエン様の使徒となる事が出来たのです。私は勿論使徒として何時いかなる時もカウリエン様の味方でございますが、それはそれ、これはこれなのです」
「あなた達ね……」
「む~、そう言われると反論しづらいけど、何か納得できない~」
口を尖らせるカウリエン様に、俺達は穏やかに笑い声をあげた。




