何であの時ついていくなんて言ったの私のあほー!
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「はいそっちにシャドウウルフが二匹行ったぞー」
「な、この!せい!」
「おおっとクロス鳥だ遠距離攻撃に注意なー」
「危ない!サンクチュアリ!え、キャア!嘘、透過した?」
「ロッテ、クロス鳥は神獣の配下で聖属性だ。そいつは野良だけどな。サンクチュアリは効かないから別の魔法使いなさい」
「兄さん、マーダーゴブリンがこっち見てる」
「お、そりゃちょうどいいな。ミッド、倒してこい」
「旦那、あいつ、どう見てもゴブリンに見えないですぜ」
「大丈夫、見た目はあれだがちゃんとゴブリンだから、ほら行けー。お、グリナ、そいつはコカトリスZ、普通のコカトリスと違って手強いぞ」
「そもそもコカトリスが手強いのよ!アイスランス!」
「デュークさん、私が悪かったです神官として一人前だなんて言って傲ってましただからもう勘弁してください!」
「神官としてじゃなくS級としても半人前だからだめ」
「いやあぁぁぁぁー!クロス鳥が群れで来たー!」
「ちょ、旦那、このゴブリンめちゃくちゃ強いんですけど?!」
「そりゃマーダーゴブリンだからな。A級くらいかな?気配を消すのをタイミング良く使えば今のお前さんなら楽勝だよ」
「嘘だー!」
「あ、このクッキー美味しい」
「ルルミア、それ、ランデルさんの娘さんが勤めてるお店の一番人気。私オススメ」
「今度買いに行こう。シャロ付き合って」
「いいよ」
「シャロ、お茶のおかわりちょうだい」
「はい、兄さん」
「ちょ、た、助けて、助けてデューク!何かドラゴンっポイのが!ポイのが!」
「グリナ、そいつはミヤマドラゴンモドキだ。ドラゴンっポイとかげだよ。弱点は火属性の攻撃。水属性には強いから良い練習相手になるぞ」
「デュークさん!クロス鳥の群れを追いかけて何か大きいのが!大きい口が!」
「あー、ロッテ、そいつはオオクチシンリンツノガエルだ。結界張って、わざと食われたら結界を中で大きくして胃を破裂させれば勝てる」
「あんな大きさだったら結界を大きくしても破裂できるほど広げられません!そもそも食べられたくないんですけど!」
「旦那!何かさらにゴブリンっぽくないのが!ぽくないのが来たんですけど!」
「残念ながらゴブリンです。アーマーマーダーゴブリンだ。珍しい。マーダーゴブリンの上位種だ。攻略法はさっきと一緒」
「こいつ全身鎧みたいな皮膚でナイフが刺さらねぇんですが!」
「弱点はある。頑張って見つけろ」
「「「いやあぁぁぁぁーーー!!!」」」
数時間前。
「ロッテ、本当に良かったのか?」
お茶会の後、ハーレム解散を決めた美少女達はそれぞれ別々のパーティーでやり直すと宣言。
パーティーリーダーのロッテも解散に賛成し、このまま俺達についてきてヅミロス様の祠でお供えをしてお祈りを捧げたいと希望したため承諾したのだが。
「はい。パーティーを組んでいたのもいつかヅミロス様の祠があるカムユラ山脈の山頂にたどり着くためでしたから、問題ありません」
「いや、俺が聞いたのはあのイケメン君を放置して良かったのかって事なんだが」
「あいつはあれでもA級ですし、しぶといからほかっといても大丈夫です」
ロッテ達がイケメンを探しに行ったら鎧も砕けて原っぱに転がっており、私物も散乱していたらしいのだが、その中の一つに手帳があり、そこにはビッシリと女性の名前とプロフィールが記載してあったとのこと。
ぼっこり腫らした顔にその手帳を見て他の子達は熱が冷めたのかハーレム解散を決めたようだ。
ロッテは元々イケメンに異性としての興味が一切無かったし、剣の腕だけはA級だったので割り切ってパーティーを組んでいただけだから解散でも問題ないとのこと。
「本当に良いんですかい、神官のお嬢さん。旦那達についていくのはマジでキツいですぜ?」
「ミッドさん、私はこれでも冒険者歴四年、S級冒険者としても一年以上経つベテランに位置します。新人冒険者ではありませんから大丈夫です」
「ロッテ、貴女はこの先の人生を左右する大きな選択肢の前にいるわ。どちらが正解とは言わないけど、よく考えなさい」
何故かグリナが人生の転機みたいにロッテの両肩に手を置いているが、ついていくって本人の希望だからいいんじゃない?
「グリナさん、私はこれでもS級として認められた一人前の神官です。ここで引き返したらお爺様に一発キツいのをいれてやる資格がありません。ええ、絶対にやってやりますとも」
キレの良い腕の振りで拳を打ち出しているロッテを見て、グリナとミッドはまったく同じタイミングで首を横に振った。
「まーいいじゃん。うち、急造パーティーだから回復役いなかったし。本人も一人前だって言ってるんだから大丈夫でしょ」
「そうそう。これでより安心して魔の森を突っ切れる」
「三人とも良い修行になるよ」
現在。
「あああー!何であの時ついていくなんて言ったの私のあほー!」
「弱音吐く前に早く浄化、浄化して!」
「ちょ、こいつら気配遮断が効かねぇ!」
オークネクロマンサーによって操られているオークゾンビの群れに囲まれながら四苦八苦している三人を見ながら後方で応援に徹していた。
「ミッド、アンデッドは魔力や気配じゃなくて生命の光に寄ってくるから気配遮断しても無駄だぞー」
「グリナ、相手を凍らすんじゃなくて、相手の足場を凍らせた方が効果的だよ」
「ロッテ、範囲浄化は範囲が広げられないなら二つ同時に発動させればいいんだよ」
「「「助けてーーー!!!」」」
三人の修行もかねて魔の森を突っ切ろうとしたはいいが、冒険者じゃなくて今までろくな攻撃手段を持ってなかったミッドはともかくA級で魔槍までもったグリナとS級神官のはずのロッテもかなり苦戦していた。
「ミッドはまあしょうがないとして、他の二人はもう少しなんとかならないのか」
「グリナ、魔槍に頼り過ぎ」
「ロッテはアル中の孫のわりには使用できる神聖魔法が少なすぎ」
「ほら、三人とももう少しだぞー」
「こいつを倒せば後はドラゴンくらいしかいないよー」
「しかもレッサーだから楽勝楽勝」
「「「もう無理ーーー!!!」」」
無事アンダースラントに着いた俺達は、宿に泊まって夕食をとっていた。
ここの街の名物、氷ウサギのシチューはやっぱり美味しいなぁ。
俺と同じようにシチューを堪能しているシャロとルルミアはともかく、残りの三人は机に突っ伏してピクリとも動かない。
「三人とも、シチュー冷めちゃうぞ」
「だ、旦那。俺は、今、生きている喜びを、噛み締めてるんでさぁ」
「ああ、久しぶりねこの感覚……。そうよ、私は知っていたはずなのに、なんで忘れていたの…。生きているってだけで、素晴らしいって……」
「これが、本物の、S級……。私なんかが、S級を名乗ってはいけない。クルンヴァルトに戻ったら、降格させてもらわなければ……」
まだぶつぶつ言ってる三人に、冷めない内に食べないとカムユラ山脈を越える体力が戻らないぞと言ったら慌てて食べ始めた。
明日は、久しぶりの北方エルフの村だ。
「ホワイトハニーサックルジャム、楽しみだなぁ」
猛吹雪の外を見ながら、待ちきれない気持ちを抑えつつ、明日に備えて早めに就寝する事にした。




