そんなおっかない視線向けられても本当なんだからしょうがないじゃん
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王の間と言うと、大半の人は凄い広くて凄い煌びやかな装飾が施されていて、王様用のこれまた一人で座るには大きくない?ってサイズに金とか宝石とか色々施されてた立派な椅子が鎮座していて、両側に文武百官が立ち並ぶスペースがある、そんな部屋を想像すると思う。
それは決して間違いじゃないし、実際に見たことのある北の大陸にある某国の謁見の間はそんな感じだったしユールディンも想像を越える広さの皇帝との謁見の間があるとキーランから聞いた事がある。
だが、我がラグラント王国はそうじゃない。
建国王ラグラントが、謁見の際にあまり広いと意見を言う人の声が聞きづらいし、顔もよく見えないから表情もわからない、それに意見も報告も言わない者をただ立たせるためだけに呼び出すなんて非効率だからある程度以上の役職者と報告がある者以外は出席しなくて良いとして、広さもそれに合わせてあまり大きくない二十名ほどで丁度くらいの広さに、あまり装飾がキラキラしていると目がチカチカするから控えめに、椅子も豪華さより座り心地重視と注文された、普通の部屋よりちょっと大きくてちょっと豪華な王の間となっている。
なので基本的にそれぞれのトップと何か報告がある時にはその担当者が出席するくらいなので、武官は基本的にフォーゲル団長が出席しているし騎士団長とはいえ就任後はずっと前線にいた俺は数えるくらいしか入ったことがない。
今回みたいに報告の担当者が俺ってのも実は初めてだったりする。とは言えメインで報告するのはリンクス公爵で、俺は質問された時に答えるだけで良いと言われている。
「皆、ご苦労だった。面を上げよ」
跪いた姿勢から、前から順に起立していく。
俺は最後列で最後に立ち上がった。
ちなみにシャロは部屋の外で待機中。神紙が必要になった場合のみそれを持って入室できる手筈となっている。
正面の玉座には王家の証たる赤獅子の獣人、ラグラント王国現国王ガーランド・イル・ラグラント様がお座りになっていた。
赤髭を生やした厳格そうな顔に、適度に引き締まった立派な体躯。一国の王というより歴戦の将軍のような外見をしたお方だ。
「まずは、戦争関係か。報告せよ」
「ハッ。ユールディンとの戦争は和睦の締結に成功しました」
「誠か?」
「はい。パムルゲン平原での会戦において、なんと豊穣の女神カウリエン様がご降臨なされました。両国の現状を憂い、和睦を望まれたのです。さらに両国のために特別な麦を戦場を覆いつくすほど実らせると、この麦を増やし、疲弊した国を癒すのだと仰られて、その場を後にされたようです」
リンクス公爵の発言に驚きを隠さないガーランド国王様。どうやら国王様は今に至るまで何も聞かされていなかったらしい。マジか。
「まさか豊穣の女神カウリエン様に和睦の仲裁をしていただけるとは。これはなんと幸運なことか。神殿にてカウリエン様に多額の寄付をせねばな」
「仰る通りです。ですが問題もあります」
「何だ?ユールディンが何か言ってきたのか?」
「違います、カウリエン様を偽物と断じて和睦を反古にし、ユールディンに攻めこもうとした輩がおりました」
「何だと?!誰だそのような罰当たりな事を申したのは」
「リグリエッタ様でございます」
「な?!リグリエッタが?本当なのか?」
「はい。そもそもリグリエッタ様は王都の守護任務を放り出して、当初の取り決めだったユールディンの侵入を許していないにも関わらず独断で前線へとやってきました。しかもユールディンからの刺客などどこにもいなかったのにいたと嘘をついて近衛を混乱させた隙に、です。第三騎士団と王都街道で合流した際に女神カウリエン様を偽物と断じてユールディンが背後から狙っているから追撃にでるべきだと主張して、コスタル団長が何度も説明し、止めたにも関わらず聞く耳をもたなかったそうです」
リンクス公爵の説明に驚きから困惑、そして怒りの表情に変化したガーランド国王様は、こちらにギロリと視線を向けた。
そんなおっかない視線向けられても本当なんだからしょうがないじゃん。
「ユールディンからの刺客については余が近衛に伝えたものだ。リグリエッタの嘘ではない」
「ならばその情報の発信源をお教えいただけますか?そやつは国王様に嘘を吹き込んだ不届き者です」
「いや、それには及ばん。もしそうなら余自らが対処しよう。それで、リグリエッタはどうしたのだ?」
露骨に話を変えた国王様に、やはりリグリエッタの我が儘を聞いて近衛を遠ざけたのだなと確信する。勘弁してくれとフォーゲル団長の背中が物語っている気がした。
「リグリエッタ様はコスタル団長の説得に応じず、第三騎士団に斬りかかってきたため、やむを得ず応戦、捕縛したとの事です」
「何だと!そのような無礼が許されると」
「許されます。リグリエッタ姫及び紅の騎士団は戦時特例にて騎士として採用されたのです。戦時特例はあくまで戦争中に騎士と同様に扱う、というものです。和睦がなった時点で彼女達は騎士ではなくなっていました。にも関わらず王国騎士の説得に応じず斬りかかってきたとなれば、それは国王様に斬りかかると同義。さらに女神様の仲裁と祝福を受けた正式な和睦を反古にしようなどと、完全に反逆罪です」
リンクス公爵の説明に国王様は真っ赤になって怒りの声を上げた。
「どういう事だ!そのような話は初めて聞いたぞ!リグリエッタを騙したのか?!」
「とんでもない。騙してなどいませんぞ。戦時特例については詳細書を任命時に渡してあります。そこにきちんと記載されております。国王様にも同様の物をお渡ししました」
「それは、確かにそうだが」
「それに例え正式な騎士だとしても女神様を偽物呼ばわりしたのは許されるものではないかと。先ほど国王様も罰当たりな、と仰られたはず」
「それでも王家の者に刃を向ければそちらが反逆者となろう。コスタル団長は確かに紅の騎士団を止めるべく動いたようだが、リグリエッタに刃を向けたのも事実。ならば今回は相殺だろう」
「コスタル団長は、リグリエッタ姫に刃を向けてなどおりません。リグリエッタ姫の剣を避けながら説得を試みたそうですが、リグリエッタ姫が応じなかったため、気絶させて捕縛するために殴っただけです」
「何ぃ?」
殴ったと聞いて再びこちらにおっかない視線を向ける国王様。斬ってないだけましだと思って欲しい。
「それに、リグリエッタはコスタル団長の説得中、とんでもない言葉を発しました。『私は私の願望を叶えるために戦争を起こした』と申したのです。これは、例え王族だとて許されるものではありません!」
「そのような事、リグリエッタが言うはずなかろうが!」
「言ったのです。そもそもはリグリエッタが剣聖ナタリーに憧れていた、話はそこから始まります」
リンクス公爵はリグリエッタの悪事を最初から説明を始めた。




