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俺が求めているのは、これなんだ!

誤字報告ありがとうございます。


 うっかりシャロの頭を再びモフナデしてしまったが、やはり何事もなかったかのように話を進める。誰も気にしてないしね。


「兄上に報告するにあたって、一番気にしなければならないのはやはりリグリエッタの扱いだろう。コスタル団長、あいつは今どのような状態なのだ?」


「私が捕縛した時、何故かリグリエッタ姫は自分が戦いの女神アレイナ様の使徒である、と吹聴していたので、使徒ならば祈りを捧げれば右手の甲にアレイナ様の紋章が光輝くはずだから証拠を見せろと問い詰めたところ、リグリエッタ姫は紋章を浮かび上がらす事ができず、使徒ではないと証明されました。つまり、剣聖ナタリーの後継者ではないと証明されたのです。それがショックだったのかそれ以降は起きている時もぼーっとしていて、食事もとらないのでお側付きが栄養剤とポーションを飲ませています」


「そうか……。完全に心を折られた、と見るべきなのだな。だが兄上にお会いしたらまたいつも調子に戻ってしまうこともあり得る。ひとまずは報告を先に済ませてから会わせるべきだな。それに、そもそも己の欲望にまかせて戦争を起こしたあいつが何を言い訳したところで罪を無くすことは出来ない。今回ばかりは兄上にも覚悟してもらわなければな」


 リンクス公爵はどこか思い詰めたような表情をしていた。


 実の兄である国王様に、今回こそは娘だろうと甘い顔をするのは許されない、そうせねば国が滅びると伝えなければならないのだから当たり前なのだが、それだけでは済まないような気にもさせる表情に思えた。


「ひとまずリグリエッタ姫はこのまま第三騎士団の駐屯地にて待機させますが、国王様がこの場に呼ぶよう仰られるのは目に見えております。その際は如何いたしますか?」


「呼ぶ必要はない。例え兄上が直接あいつから話を聞きたいと言ったところで今回はあいつの供述など聞くまでもなく証拠が揃っている。特にカウリエン様を偽物だ、などと侮辱した事はどの罪よりも重い。神々を敵にまわして無事だった国など存在しない。本来なら有無を言わさず死刑だ。それを生かして連行してきただけでも温情的な行動と思ってもらわねば」


 リンクス公爵の発言に法典長官殿は大きく頷き、宰相閣下は眉間に寄ったシワを人差し指でぐりぐりほぐしながら難しい顔をしていた。


 他の出席者達も、概ね同じような反応だ。


「それでは、皆も覚悟は決めたな?ここまで来た以上もう後戻りは出来ない。この国の未来のため、正しい判断を下さねばならない。よし、では半刻後に王城に集合とする。用意のあるものは急ぎ整えよ」


 リンクス公爵の言葉に出席者達は早足で部屋の外へとでて行った。部屋の中には俺とシャロ、リンクス公爵と宰相閣下だけが残った。


「あの、リンクス公爵様、このような時にお願いするのは心苦しいのですが、スコラト日記の閲覧許可をお出しいただけないでしょうか?」


「スコラト日記を?許可は構わないが理由は何だ?今回の事にかかわっているのか?」


「関わっているといえば関わっています。実はユールディンにて邪竜を討伐に協力した冒険者の一人が私の知人でして、現在すでに我が国にやってきています。彼女は協力の報酬としてスコラト日記の原本の閲覧を希望しています」


 リンクス公爵は驚いた顔をして、その後すぐにお腹を抱えて笑いだした。


「いや、冒険者という職業の者達はどこか変わった者が多いとは聞いていたが、邪竜退治など物語として語り継がれるような活躍の報酬が本を読みたいとは。いやはや中々興味深いご仁のようだ」


「さようですね。普通の感覚なら遊んで暮らせる大金や中々手に入らない貴重な物品を所望するものだと思うのですが。安上がりで良かった、と喜ぶべきでしょうかね」


 宰相も笑いながら冗談を口にする。


「まあ、なんと申しますか、読んだことのない本を読みたくて冒険者になった変わり種のエルフでして」


「わかった。許可を出しておこう。そのエルフ殿の名前は?」


「ルルミアです」


「わかった。コスタル団長、君が直接保管してある部屋まで案内してやるがいい。報告会には間に合うようにな」


 リンクス公爵は宰相から許可証を受け取りサインすると、ではまた後で、と部屋を出ていった。


「それでは宰相閣下、私も戻ります」


「ああ、そのエルフの女性とランガー騎士によろしくな」


 俺は何か言いたげな宰相を無視してその場を後にした。


「こちらが『スコラト日記』の原本となっております。閲覧はこのとなりにあります部屋で行っていただきます。読み終えた際にはこちらのベルを鳴らしていただければ私が参りますので、時間は気にせずお読みいただいて結構ですよ」


 俺がリンクス公爵にもらった許可証を手にルルミアとシャロを伴って訪れたのは、王城にある図書室だった。


 王族の教育係も担う王城図書室司書のヤニックさんは、好好爺な普人の方で、普段あまり仕事のない司書の仕事が出来てうれしいらしい。


「それじゃ、二人とも頑張って」


「おう。長くなるかもしれないからルルミアも読み

飽きたら早めに帰ってもらって構わないぞ」


「私が読み飽きるのには年単位かかるから大丈夫」


「そっすか。ヤニックさん、すみませんがよろしくお願いします」


「はっはっは。私はただの暇な爺ですのでお気になさらず」


「ありがとうございます。それじゃシャロ、行こうか」


 俺達は国王様への報告のために王の間の控え室に向かった。


 まだ半刻には早いため、控え室で心を落ち着かせるためにシャロを膝の上に乗せてモフナデする。


 事前報告会では思わず頭をモフナデしてしまったが、王の間では流石に出来ないし、そもそもシャロの立ち位置が離れているためやろうと思っても出来ないしな。


「いよいよだね、兄さん」


「ああ、ここさえ乗り切れば、俺も騎士団長とはおさらばだ。家に帰ってしばらくはゆっくりしよう。シャロをモフモフしながら昼寝したり、羊や山羊の世話をしながらモフモフしたり。好きにするさ」


 やっとこの重荷から解放される、そう考えるだけで心が軽くなってくる。


 シャロをモフナデしていると、心の底から満たされていく。


 俺が求めているのは、これなんだ!


 モフモフナデナデ。


 モフモフナデナデ。


「うにゃ~」


 シャロの極モフを堪能しながら、最後の難関に向けて鋭気を養うのだった。

 


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