やっと報告の折り返し地点だな
ついに10万PVを達成いたしました!読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!
表現が被っていた部分をちょっとだけ修正しました。
リグリエッタ被害者の会の会員の皆様からの万雷の拍手に調子にのって思わずシャロの頭をモフナデしてしまい、ヒヤリと汗をかいたが、仲の良い兄妹だな、との声が出たくらいであまり気にされなかったので何事もなかったかのように話を進めることにした。
いかんいかん、嬉しさのあまり気を抜きすぎた。
しかし、ここから先は笑ってはいられない内容を話さねばならない。この国の上の方に立つ方々だからこそこの話からは逃げられない。嫌な話だ。
「皆さん。私はリグリエッタ姫を捕縛する最中、その口から信じられない言葉を聞きました。なんとあやつは『私は私の願望を叶えるために戦争を起こした』と言って私に斬りかかってきたのです」
その場にいた誰もが、まさか、と絶句した。
「リグリエッタ姫が剣聖ナタリーに憧れていたのは周知の事実。その憧れが発端でした。リグリエッタ姫はマリー・ランガー騎士を彼女がまだ騎士になる前に木剣でボコボコにした事件がありましたが、あれも剣聖ナタリーの後継者たるマリーに対しての嫉妬からの蛮行です。子供の頃から剣聖に、騎士に憧れ、騎士団に剣の練習相手を強制し、さらには騎士団の任務に勝手につきまといだし、挙げ句の果てには国王様にねだって正式に騎士となった。そんなリグリエッタ姫は自分こそ剣聖ナタリーの後継者であると錯覚するようになりました」
剣の練習相手をさせられた経験のあるフォーゲル団長は、当時を思い出してか渋い顔をしている。気持ちはすごくわかります。
「しかし、そんなリグリエッタ姫の願望を否定する出来事がありました。ユールディンの第一皇子との顔合わせ会談です。剣聖の後継者のはずの自分が政略結婚などしていいはずがないと、そう考えたリグリエッタ姫は会談をわざとめちゃくちゃにしました」
今度はリンクス公爵の顔が渋くなる。当時一番迷惑をかけられたのは間違いなくリンクス公爵だからな。
「さらに暴走したリグリエッタ姫は婚約解消を決定づけるため、ユールディンに直接出向き、第一皇子をボコボコにします。リグリエッタ姫は、相手を叩き潰せば解消できるなどと浅はかな考えで動いたのです」
この時点でも王族として決定的な何かが欠落しているとしか言いようがないが、それだけではすまないのはその後を知っている皆の顔を見れば一目瞭然だ。
「しかし、皆さんご承知の通り、叩き潰すだけでは終わりませんでした。不幸にも第一皇子は亡くなります。リグリエッタ姫は焦りました。ユールディンの使者の要求は国王様がはね除けてくれるのは分かっていたものの、その後の自分の人生は強制的に国内の貴族と結婚させられるか、悪ければ幽閉生活だと。だからあの場で信じられない発言をしました。『あのような華奢な男を伴侶にせずに済んでよかったわ!』と。あの発言こそが、リグリエッタ姫の考えた最良の選択、戦争になれば、すべてが有耶無耶にできる、という選択でした」
その場にいた誰もが、顔を覆ったり、怒りのあまりに体が震えたりと、リグリエッタ姫を許せないといった感情でいっぱいいっぱいだった。
戦争を、まさか自分から仕掛けにいっていたなどと思ってもみなかったのだろう。そこまでリグリエッタ姫が愚かなだったなどと、思いもよらなかったのだろう。俺も正直思わなかった。
「その後は我々第三騎士団にとっては地獄でした。戦争の発端であるリグリエッタ姫は何故か第三騎士団に何のおとがめもなく残留し、前線に出るなという命令を無視して勝手な行動を繰返しては他の団員や兵士を危険にさらし、かすり傷でも負えば国王様から叱責される日々に、ついに団長は病に倒れ、同時にリグリエッタ姫を身を挺して守った副団長は障害が残る大怪我をして退団せざるを得なくなりました。しかし、当のリグリエッタ姫は剣聖ナタリーのような活躍をしているのだと自分に酔っていたのです」
フォーゲル団長からの同情的な視線に、苦笑いをして頷き返す。リンクス公爵は当時の国王様のアル団長に対する叱責を諌め、リグリエッタ姫を前線から戻すべきだと何度も説得を試みたが、リグリエッタ姫のお願いを断らない国王様によって全て拒否されてしまった罪悪感からか、後悔の念が強く顔に出ていた。
「この戦争の発端は全てリグリエッタ姫の剣聖ナタリーへの憧れに起因する暴走が原因でした。そして、和睦を反古にしようとしたのも、同じだったのです。私が若輩の身でありながら団長にならざるを得なかったのと同時に、リグリエッタ姫は紅の騎士団の団長となり、その当初は団長という立場に酔ってか大人しかったのですが、その後マリー・ランガー騎士が第三騎士団に入団し前線で活躍している事を耳にすると、剣聖ナタリーの後継者は自分ではなくやはりマリーだと言われるのを恐れ、紅の騎士団も前線に出るべきだと訴え始めました」
足止めをお願いしていた宰相に目礼すると、面倒だったよとばかりに苦笑いを返された。
「リグリエッタ姫は戦争で活躍し、自分こそが剣聖ナタリーの後継者だと知らしめねば、また自分はいずれ騎士以外の道に行かざるを得なくなる、そう考えて、近衛騎士団にユールディンの刺客が王都内に潜伏していると国王様を通じて虚偽の申告を行って抜け出すと、前線へとやってきました。戦争を継続して、剣聖ナタリーのように活躍し、ラグラント王国を勝利に導くのだと自分勝手な欲望を抱いて」
その場の全員が声も出ないくらいリグリエッタ姫の自分勝手な欲望と行動に呆れ返っていた。
最早、王族であろうと許されるものではない。それがこの場の皆の総意だろう。
「だからこそ、私はリグリエッタ姫をとめるべく、あの場でわざとこちらに手をだすよう誘導し、自白を引き出すために直接相手をしました。結果、リグリエッタ姫は王都を危険にさらした逃亡罪、もしくは虚偽申告罪。そして、騎士ですらなくなった自身と取り巻きの立場を受け入れられずに正式に締結した和睦の反古を企んだ反逆罪を適用して今回の捕縛に至りました」
法典長官殿にそうですよね?と確認すると、間違いありませんとの言葉をいただく。
「私の決意は、リグリエッタ姫を捕縛して、その心を折ることにより、国王様にどのような沙汰を言い渡されても戦争を終わらせるというものです。恐らく私自身何のおとがめもなく済む、とはいかないでしょう。だからこそ、この場で皆さんにお願いしたいのです。この国のこれから先を。何故なら、我が国の危機はリグリエッタ姫を止めただけでは終わらなかったからです」
何人かは驚いた顔をしたが、王都での腐敗貴族の大量捕縛を考えれば、リグリエッタ姫の暴走だけでは説明がつかないのは分かっているのだろう。ほとんどの人は神妙な顔をして俺の話の続きを待っている。
「リグリエッタ姫と紅の騎士団を捕縛した後西方辺境伯軍と中央軍と合流し、我々はヴェルデローザに向かいました。バセット子爵に歓待していただき、街をあげての終戦祝いでお祭り騒ぎでしたが、その夜、暗殺者が騎士団の駐屯地内に潜入、紅の騎士団を毒で暗殺しようとしたのです」
やはりな、という表情の出席者を前に、俺はやっと報告の折り返し地点だなと少し気疲れしながら続きを話し始めるのだった。
評価ポイント、ブックマーク、ありがとうございます。物語も後半に入りました。もう少しお付き合いくださると嬉しいです。




